麦畑

太陽と大地と海は調和するミックスナッツの袋のなかで

おそろしく

2021-03-31 19:39:21 | 短歌

 

おそろしく長い階段あるとしてオリオン座から降りてくるひと

この朝のわたしの舌を刺激する古いミルクはさみしかったね

男どもみな凍らせて雪女ゆきふる夜はさわがしからず

ふっと息ふきかけて消す聖火かな誰も知らないふかい森にて

つぶれたる本屋かかえている駅の致し方なきそのがらんどう

ぎんいろの皿にきれいにならんでる牛のからだのおいしいところ

やわらかく曲がる日光街道を濡らしはじめた十月の雨

フチ子さん心のふちに座ってるはだしの足をゆらゆらさせて

中空にかっぱえびせんばら撒けばやさぐれカモメがわらわらと来る

わたしから遠く離れたとなりには女王のようにねむる妻あり


  ※ ルビ  中空(なかぞら)     9首目


_/_/_/ 未来4月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/

 

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すっぴんの

2021-03-04 00:38:13 | 短歌

 

  江口芽羽名義での習作

すっぴんのわたしの夜のうらがわを激しく流れてゆく川がある

半分がベッドの部屋に帰り着きわたしはわたしをパタンと倒す

ひらいたら百合の花咲く傘がある使うことなき傘のひとつに

ゆうやみの丘にのぼれば少しだけ空に近づく臨月のひと

秒針はたしかな今を指しているわずかながらの風起こしつつ

ふるさとは石川県の爪先と言ってあなたはちょっと笑った

魂は長いしっぽを持っていてあなたにからみつく夜がある

カタバミは話し言葉のように咲くわたしの庭のなぐさめとして

咲きそうな桜もいいなと思ってるあなたの袖をつかまえながら

こんなにもにわか詩人を生みだしてどうするつもりですか夕焼け


_/_/_/ 未来3月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/

 

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月詠では初めて題を付けました。
今月号は江口芽羽という筆名で「うたの日」に投稿していた歌の抜粋なので、
必要にせまられて題を付けた感じです。

江口芽羽という筆名の由来は、
麦太朗→むぎたろう→めぐちわえ→えぐちめわ→江口芽羽
です。

 

 

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