おそろしく長い階段あるとしてオリオン座から降りてくるひと
この朝のわたしの舌を刺激する古いミルクはさみしかったね
男どもみな凍らせて雪女ゆきふる夜はさわがしからず
ふっと息ふきかけて消す聖火かな誰も知らないふかい森にて
つぶれたる本屋かかえている駅の致し方なきそのがらんどう
ぎんいろの皿にきれいにならんでる牛のからだのおいしいところ
やわらかく曲がる日光街道を濡らしはじめた十月の雨
フチ子さん心のふちに座ってるはだしの足をゆらゆらさせて
中空にかっぱえびせんばら撒けばやさぐれカモメがわらわらと来る
わたしから遠く離れたとなりには女王のようにねむる妻あり
※ ルビ 中空(なかぞら) 9首目
_/_/_/ 未来4月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/