麦畑

太陽と大地と海は調和するミックスナッツの袋のなかで

ふたりいる

2020-06-17 20:10:33 | 短歌

 

ふたりいる娘ふたりともこの家を出ていってしまう 突然のこと

昨年の八月に春は出ていった 三月末に小麦は出てゆく

あずさゆみ春は豊洲で働いて小麦はみなとみらいで働く

卒業式は中止になってしまったが小麦はむしろよろこんでいる

埼玉の北の果てから豊洲までは通いたくないと春は言いにき

埼玉の北の果てからみなとみらいまでは遠いと小麦言いにき

リストラによりて滋賀から埼玉へ飛ばされしこと十年のむかし

十年のあいだに娘ふたりとも都内の大学に入りて出でたり

これからは妻とふたりで暮らすとかそこはかとなくおそろしきかな

これからはおまけのような人生と思えばこころ軽くもなるか


_/_/_/ 未来6月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/


※ 春と小麦は仮名です。

 

コメント
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