麦畑

太陽と大地と海は調和するミックスナッツの袋のなかで

コンビ仲

2023-05-01 19:44:03 | 短歌

 

コンビ仲よき芸人のトークよし耳に注いでゆくあたたかさ

イヤホンの穴から声は流れくるラジオの赤いボタンを押せば

真夜中の若手芸人枠五分、中堅芸人枠一時間

五分でも放送時間をもらえれば幸いならん芸能界は

話しかけられたら話すスタンスのゴウヒデキさんの声ぞよろしき

午前二時の短編小説朗読は蜜のごとしもふかく聴き入る

昭和歌謡ことに七十年代の歌はわたしの芯をゆさぶる

わが夜の寝入りのときをなぐさめる単三電池二本のパワー

オルゴールのやさしい音が止まったら夜のラジオはひととき休む

今どこでどんな暮らしをしてるのか松本伊代のオプションふたり


_/_/_/ 未来5月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ ニューアトランティス欄 _/_/_/

 

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工房月旦2月号

2023-05-01 19:38:12 | 短歌記事

 

未来4月号から1年間、工房月旦を執筆しています。
担当は、さいとう・池田・大島・田中、各選歌欄です。

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工房月旦2月号    鈴木麦太朗


  右耳のイヤホンはずす内宮の社の前に手
を合わすとき      紺野ちあき 
 全日本大学駅伝のことを詠んだ連作の中の
一首。右耳のイヤホンをはずしたのはラジオ
の駅伝中継を神様にも聞いてもらうためだろ
う。むろん作者は駅伝に参加しているすべて
の選手の好走を祈っているのだ。
  薄日さす富山立山父祖の墓まう仕舞つて
  もよろしいですか    坂井花代子 
 上句の小気味よいリズムがいい。そして下
句の問いかけもいい。軽快な歌だが深い味わ
いがある。
  冬の夜の青さを説けば七月にうまれた猫
  が目をまるくする    氏橋奈津子 
 結句がかわいい。猫はひとの話す言葉がわ
かると言われている。わからなかったとして
も何かが伝わっているはずだ。
  ポシェットにそろいのチャームゆらしつ
  つやたらと濃いい牛乳をのむ
              飯豊まりこ 
 何より「濃いい」がいい。ものすごく濃い
感じが伝わってくる。そして上句の描写は現
実感があって魅力的だ。
  〈全国の感染者数〉にふる里の数をたし
  かむ立冬の朝      藤田 正代 
 ふるさとから離れて暮らしているひとに共
通する感慨である。自身の住んでいる所より
先に目がいってしまう。ふるさとに住む親族
や友人を思う気持ちがそうさせるのだ。
  マスク取り出てくる人の店の中にマスク
  を掛けて吾が入りゆく  村山 寿朗 
 屋外はマスク不要になってきているが店舗
などの屋内は未だにマスク着用を義務付けら
れているところも多い。そんな時節の状況を
うまく捉えている。
  五回目のワクチン打ちていづれにも副反
  応のなきを寂しむ    西堀 英夫 
 副反応がないのは幸いなことではあるが作
者はそれを寂しいと感じている。ワクチンを
打った証として何らかの身体的な反応を求め
ているのだろう。この感じよくわかる。
  和洋中と姿を変へて展開すミートボール
  の素朴な丸さ      北野 幸子 
 たしかにミートボールはどんな料理にも応
用できる万能選手だ。結句でその素朴な形を
端的に描写することで上句の叙述を引き立て
ることに成功している。
  湯豆腐の一句いずこに置かれしか句集た
  ぐりて探す秋の夜    さかき 傘 
 なぜ湯豆腐の句を読みたかったのだろうか。
謎めいていて興味深い。句集をたぐって湯豆
腐の句を探す作業は穴あきお玉で湯豆腐を鍋
から掬い取る行為を少し思わせる。
  生真面目な小説読んでいるときに着信音
  は木魚の音色      細沼三千代 
 こちらも興味深い謎を提示した歌。小説を
読んでいるときでなくてもいきなり木魚の音
がしたらぎょっとする。
  綿100のハンカチを愛す夫なれば熱きアイ
  ロンわが愛と知れ    高田 理久 
 結句の命令形が印象的。旦那様への愛情が
強力に伝わってくる。綿100のハンカチに嫉妬
しているようにも読めて面白い。
  秋晴れの三条大橋西詰の亀の子束子はソ
  フトな張りあり     野田まえり 
 グーグルアースで確認したところ確かに京
都三条大橋西詰にそれらしき荒物屋さんがあ
った。気持ちのいい秋晴れの日であれば店頭
の束子に触れたくなる気持ちはわかる。
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