じゃが芋の薄むらさきの花ひとつ夢の終わりにうふっと笑う
パプリカの密なる種をとり去りて水のゆうべの小舟となせり
とうがらし実る畑をゆく猫のそのなめらかなうごきがいいね
夕暮れはわたしの庭の芝を刈るがらりがらりと音を立てつつ
いにしえの森の記憶はあるならん小雨にしとる秋の古書肆に
コスモスをひざの高さに写すとき犬の世界にまぎれていたり
ぎっしりとねぎ生えているねぎ畑全部が全部ねぎのすごさよ
私たち猫の言葉をしゃべりだすとりとめもなき夜の終わりに
さらさらと塩しずみゆく網膜に朝のやさしいひかりはおよぶ
森林太郎をしんりんたろうと読み下し春の窓辺に一人笑いす
_/_/_/ 未来5月号掲載歌 _/_/_/
_/_/_/ 笹公人 選歌欄 (未来広場)_/_/_/