映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

TIAを考えさせる「ブラッド・ダイアモンド」

2010-12-26 15:00:46 | 舞台はアフリカ

アフリカ映画はいつも心を重くさせる

 

1、この映画の舞台、シェラレオネは「ライオンの山」という意味だそうだ。

15世紀中頃ポルトガルがやってきて・・・奴隷や象牙などの交易を始め・・・激しい植民地獲得競争の修羅場にさらされる。

そして18世紀後半いち早く奴隷貿易廃止を実践しようとしたイギリス人が解放奴隷の入植地を作り「フリータウン」となずけたのが今の首都。その後関心は内陸部の資源開発競争に移ってゆく。

第一次世界大戦後フリータウンで民族主義運動が進み、1958年には自治権獲得、イギリス連邦に加わる独立国となるが・・・その後の複雑、激しい内戦は目を覆うばかり。

現在は内戦も収束し、ダイヤモンドについて「キンバリー・プロセス」が一応の抑止力になって、平和が保たれていると言うがどうだろうか。

 

2、映画のストーリーはタイトル通り、「血のダイアモンド」=「紛争ダイヤモンド」を巡って展開するが、内容的には1990年代、10年に亘ったシェラレオネ紛争を描いており、政治的にアッピールするものも大きい。

 

そこで気になるのは、何回かでてくる「TIS」=「This is Africa」という言葉。勿論しゃべる人の立場、その時々の気持ちなどでいろいろなニュアンスがあるのだが・・・多くの場合は、黒人同士の殺しあい、民族紛争、少年兵問題等を含めアフリカの総てを、自嘲的に、無力感、諦めを込めたニュアンスで「これがアフリカだ」といわれること。

 

 そして、最近次々と作られる「アフリカもの」といわれる映画のこと(最近のものでは「ナイロビの」「ダーウィンの遺産」など)。いったいアフリカの人たちこれらをどういう目で見ているのだろう。

北の先進諸国の人たちがこうした映画をどう見ているのかはなんとなく想像がつく。アフリカの人たちだって、テレビを初めとするメディアによる情報はあるはず(勿論我々のように気楽にエンタメ映画を「楽しんで」見ているとは思わないが)。

そこで彼らのナマの声を聞きたいのだが、それが伝わらない。国際機関とか、NPO団体の声は、意識無意識に拘わらず彼らの立場を反映していて、もう一つあてにならない。

アフリカの人々はいったいどういう風にして現状を抜け出し、経済をテイクオフさせるつもりなのか、させたいのか。「先進諸国の援助」というものがどういうものか、それに頼りすぎるとどうなるかは分かっているはずだ。

アフリカ問題はその辺の彼らの気持ち、心構えを聞いてから考えたい。

 

付言すれば、この映画の黒人側の主役ソロモン役を演じるのは、」あのスピルバーグ監督の名作「アミスタッド」で一躍世に出たジャイモン・フンスーなる名優。

彼自身もアムネスティの支援活動に熱心だというが・・・彼の自由な意見を存分に聞いてみたいものだ。

 

 



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