映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

ドイツらしさ一杯「ファウスト」(1)

2012-07-22 19:01:12 | 舞台はドイツ・オーストリア
ファウスト(1)

第68回ヴェネチア国際映画祭で「金獅子賞」を獲った「ファウスト」。
言わずと知れたドイツの文豪ゲーテの代表作を映画化したもの。

原作の「ファウスト」は、中世ドイツに実在したと言われるドクトル・ファウストゥスの伝説を下敷きに、
ゲーテが一生かけて完成した大作。

主人公ファウスト博士は、医学を始め、錬金術や占星術など考えられるあらゆる知識を会得したが、
その限界に至ったのかどうか、
悪魔メフィストーフェレスの
「人間どもは、神から与えられたとかいう理性をろくな事に使っていやしないじゃないですか」との嘲りに
我に返り、彼の誘う魂の悪の道へと引きずり込まれてゆく・・・・・最後には魂を奪われ体を四散される。

この「ドイツ観念論が横溢せんばかりのファウスト」の映画化は相当な難事だと思うのだが、
ロシアの巨匠ソクーロフ監督は原作の意図を充分読み込み、自ら脚本化し、重厚な作品に仕立て上げた。

冒頭、医師でもあるファウストが人間の死体、体の部分を隅々までを解剖し、
何とか「魂」を見つけようと奮闘するするシーンは衝撃的だ。

映画では、悪魔メフィストファレスに替えて、高利貸しマウリツィウスなる人物を登場させる。
そのことは成功だと思うが、願わくは、
折角のこの変更を生かすべくもう少し「お金の怖さ・・・金にまみれその貸借に浸るようになると、
人間性が蝕まれてゆく」=「いわゆる金融資本主義とか貨幣悪魔論」の顛末を丁寧に描いて欲しかった。

ともあれ、まじめに見続けると少し疲れる(さもなければ直ぐにでも睡魔に引きずりこまれるだろう)。

日経新聞の映画評蘭の以下のコメント、同感です。
「どこか一カ所でいい、映画的活力で無条件の悦楽に浸らせてくれる場面が欲しかった」

以上

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