映画で楽しむ世界史

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イスラム教が分かる?「ザ・メッセージ」

2010-12-26 18:41:24 | 舞台はトルコ・中近東

ザ・メッセージ

1、 ザ・メッセージという映画の特色

キリスト教は三位一体という理屈を持ち、「神の子」イエスの処刑の場面やイエスの苦悩に満ちた顔を共通のイメージとして持っているのに対し、イスラム教は神を姿、形で認識しない、してはいけないのである。イスラム教はアッラーの神に対する絶対帰依を要求し、下手に姿、形を見せると下衆の議論を招くからだろうか、偶像禁止が徹底していてマホメッド(最近はムハンマドと表記される)を映画、映像にすることは考えられない。

従ってこの「ザ・メッセージ」という映画=イスラム教の成立物語を映画にするということが・・・「ムハンマドの顔は出さない」という条件付であれ・・・どういう経緯で許されたのか興味深いところであるがよく分からない。ともあれ映画の冒頭メッセージでこの映画は「ほぼ史実に即している」というイスラム教サイドのお墨付きを得ているということで、イスラム教あるいはアラブ社会を学習するためには極めて貴重な映画であることは間違いない。

しかし正直言って映画としてはつまらない、映画のガイドブックなどを見てもこの映画をきちんと解説したものは見当たらない。それは何故だろうかということからこの映画を考えて見たい。だけどその前に、アラブ世界の「部族」というものを理解しておいた方がいい。

2、 メッカという土地柄

 アラブ社会は徹底した父系縦系列の男社会で・・・通常人々の名前には「姓」がなく「名」のみ、家名を表そうとすると何代にも亘り先祖の名を遡って名乗る。そこで先祖が同じであれば「部族」ということなのだが、遡るといっても、決まったルールあるわけでなく、歴史に名の残る人々の記憶にある先祖まで自由に遡れるる。

極め付きは聖書にある「アブラハム」にまで戻れるわけだが、そこまでいかなくても十代ぐらいまでは繰り返し使われれば、社会的に有為な区分たり得るのであろう。要は一言で部族といっても、古くに遡る大部族と三代ぐらい前までの小部族と色々あるということを踏まえておかねばならない。

そしてムハンマドの時代、メッカは紅海を通ずる東西交易路として栄え始めるが、そこはマホメッドから十一代遡った「クライッシュ」を共通の先祖とするクライッシュ族が支配する地。 ムハンマドはその一つの「ハーシム家」の人間。(この項、岩波新書 後藤明著「メッカ」による)

メッカではこうした大小の部族が、守り神とか戦の神とか健康の神とかいろんな神を持ち出し、通行税とか場所代とか祈祷代とかありとあらゆる名分で税を取り立てている。ムハンマドはここから疑問を持ち始める。

 3、 映画の登場人物

この映画がつまらないのは、登場人物に馴染みがない・・・いわば歴史に名の出る人たちが映像上の主人公にならず、いわば脇役を映像の主人公に仕立て上げるという無理をしているからなのだが、それでも以下のことは分かっておきたい。

 ① 映画でムハンマドが顔を出さないのは分かるが、彼の妻女や子供も顔を出さない。重要脇役でムハンマドの言葉を取り次ぐ「ザイド」は奴隷出身で彼の養子になっていたという。

② そればかりか、ムハンマドの最大の友人で、彼の後継者=初代カリフとなるアル・バクルや二代目カリフとなるウマル1世も登場しているのかどうか、登場していても全くの端役に過ぎない。

 ③ しかしそれでは、映画、ドラマにならない。ムハンマドは早くに父を亡くしており叔父連中が後見役を果たすのであるが・・・その中で養父とも言われる「アブ・タリブ」は然るべく描かれるが、映画全体では歴史上あまり名の出ない「ハムザ」が主役扱いされて(アンソニー・クイン)、初期のメディナ・メッカの戦い「バドルの戦い」で大活躍する

④ さらにムハンマドに対立するアブド・シャムス家の「スフヤーン(邦訳ブソフィアン)」とその妻「ヒンド」が準主役的に描かれる(アンソニー・クインとの競演作品が多いイレーネ・パパス)。この家系がやがて「ウマイヤ家」としてダマスクスに「ウマイヤ朝」を開き、イスラムの拡大侵略の尖兵となる・・・エジプトからアフリカ北岸を制圧しやがてイベリア半島(スペイン)にまで達することは知っておきたい。

 ⑤ またメッカの商人を仕切るマフズーム家の「アブ・ジャフル」と、その父に背いてムハンマドに付き従い、信者の集う場所を提供する「アルカム(アマル)」も顔を出す。

⑥ さらにムハンマドに付き従う初期の信者連中の中で、黒人の「ビラル」が重要脇役として描かれる。

 以上を踏まえた上で、この映画の主要シーン、ムハンマドの啓示、メッカの守旧派との角逐、メッカからメディナへの遷都(ヒジュラ)、メディナでのウンマ(共同体)建設、そしてメッカの征服まで・・・その間ムハンマドの考えが普及してゆく過程を楽しんで見よう。

 

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5 コメント

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