映画「レ・ミゼラブル」
世界の文学史上、ヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」は、その長編ぶりや時代背景の設定ぶりから
「戦争と平和」と並ぶものと言う人もいるが、「戦争と平和」よりはずっと大衆的で、
波乱万丈のストーリーを売物にする通俗小説に近いように思う。
しかし確かに面白い。だからこそ、エンタテインメント・ビジネスが取上げやすいのだろう。
今回は何とミュージカルが大ヒットし、それを映画化し . . . 本文を読む
「オペラ座の怪人」(2)
③この原作の「怪人=奇形児」から少し私見をこじつけると・・・。
フランスの大衆娯楽分野には「美女と野獣もの」という系譜がある。
そもそも「美女と野獣」は1756年に出版された民話集に端を発するが、
野獣が美女に懸想する話を取り込んだ物語は多く、音楽、バレー、
映画、ミュージカルと盛んに繰り返される。
最も元話に近いのはジャン・コクトーの「美女と野獣」。
最 . . . 本文を読む
「オペラ座の怪人」(1)
①イギリスの貴族音楽家アンドリュー・ロイド・ウェバーのミュージカル(映画もあり)。
確かに音楽は重厚・甘美、文句なく素晴らしいし、舞台は豪華絢爛、
推理・怪奇的要素も加わり大ヒットした理由は分かる気がする。
しかし物語の筋は、猥雑なものをいろいろ混ぜ込んだ感じで何ともすっきりしない。
ストーリーだけで論じるとすれば、明らかにB級、駄作極まりない。
要はオ . . . 本文を読む
ダントンといえば、パリのサン・ジェルマン大通りの、オデオン四辻のあたりに立っているダントンの銅像を思い出す。
アンジェイ・ワイダ監督の「ダントン」。フランス革命上の有名人物を、極めて人間くさく、ロベスピエールと対比しながら描いた秀作だ。
原作はスタニスワヴァ・プシビシェフスカの「ダントン事件」ということであるが、この映画に描かれている内容は、その細部においても史実に一致しているようである。 . . . 本文を読む
フランス革命を扱った、あるいはそれを背景にした映画はたくさんあるように思うかもしれないが、よーく考えるとあまりない。
いや、少し厳密に言うと、一般には「フランス革命」というと、漠然と幅広く考えていて、以下の四つの分野の総てを含んでしまっている。
①革命前の「アンシャンレジーム」・・・・典型例:マリー・アントワネット物
②狭義の革命勃発とその成り行き・・・・下記
③皇帝ナポレオンの出現と活躍・・・ . . . 本文を読む
「ラ・マルセイエーズ」という映画、言わずと知れた同名のフランス国歌の物語。
話の中身はよく知られているので、説明の必要はなかろう。
要は、①フランス革命の最重要段階=共和制政治の導入に伴い、
②エミグレ貴族と組んだオーストリア・プロイセン王国の介入に対し、
③フランス革命政府はオーストリアへの宣戦布告を発し(1792年4月25)、
④前線のストラスブールに駐屯中の工兵大尉 . . . 本文を読む
フランス史上重要かつ悪名高い「聖バーソロミューの虐殺」はデュマの小説になったこともあり何度も映画化されるが、最近の物は1994年の「王妃マルゴ」。セザール賞を幾つかとった大作だが、どうも過剰演出でかえってリアルさ・信頼性を欠く。フランス映画は歴史物はヘタだ。 . . . 本文を読む
数少ない、オランダ史に触れる映画
司馬遼太郎氏が好きだったオランダ。
「街道をゆく」の中でも、特に日本人にとって「オランダ紀行」は必読書だと思うが、その中で彼はオランダの黄金期・レンブラントの絵画を絶賛する。
一言でいえば、近代的な意味での市民社会は17世紀オランダで初めて成立したが、その象徴ともいえるのが「集団肖像画」・・・聖書画ではない、国王諸侯の絵でもない、
まさに生きた市民が初めて主役 . . . 本文を読む
1935年フランス・シネマ大賞の名作の題名は・・・
ギリシャ悲劇を映画にしたものは「アポロンの地獄」「王女メディア」を始め「エレクトラ」「トロイアの女」「イフゲニア」等数多くある。しかし喜劇を映画にしたものが見当たらない。終戦直後フランス映画で「女の平和」があったが、もはやビデオショップでもお目にかかれない。
と思っていると、昔朝日新聞社が出した「世界シネマの . . . 本文を読む
ギターをやる人はみんな挑戦する名旋律のあの映画。禁じられた遊び
フランスのルネ・クレマン監督の代表作でもあるが、原作脚本の名は「木の十字架、鉄の十字架」とのこと。
本当に可愛い少年、少女主役の童話風の、それだけに余計物悲しい、切なさが身にしみる戦争憎悪映画。バックとなっている当時のフランスのことを考えてみる。
①ナチスドイツは、1938年オーストリア併合、チェコスロバキア占領を . . . 本文を読む
1、第一次世界大戦を舞台とした不朽の名作
「西部戦線異状なし」の作家、エリッヒ・マリア・レマルクは1916年友人とともにドイツ軍の一兵卒として第一次世界大戦に参戦し、西部戦線に配属された。その後、戦場での体験を通じて戦場を悲惨さを生々しく書いた小説「西部戦線異状なし」を29年に発表。小説のタイトルは前線から司令部へ送られる電文の報告からとられた。最初は出版社に出版を拒否されたが、発売 . . . 本文を読む
6月15日NHK衛星映画劇場
1889年のパリ・・・爛熟?退廃?混乱?
映画「フレンチ・カンカン」は、フランスの画家ルノアールの次男が親父の絵を売った資金で映画監督となり、1954年ジャン・ギャバン、フランソワーズ・アルヌール主演で撮ったもの。題名どおり赤い風車のフレンチカンカンの物語。
1889年、パリ、モンマルトルにキャバレー赤い風車が新装開店、売り物はフレンチカンカン。あのフリル一 . . . 本文を読む
6月12日NHK衛星放送
モンテ・クリスト伯は「三銃士」と並ぶアレクサンドル・デュマの著名小説。今でも根強い人気があって岩波文庫板はよく売れるという。何度も映画化。
この小説の時期、1815年から30年(7月革命)48年(2月革命)にかけてのフランス。
あの激しい革命、戦争を経験してフランス人は「自由と平等」を獲得した。しかしその結果としてのフランス社会はどうであろうか。王党派、共和派そ . . . 本文を読む
「フィガロの結婚」を書いた男の映画
モーツアルトの「フィガロの結婚」やロッシーニの「セビリアの理髪師」の原作者、フランス人のボーマルシェを描いた「ボーマルシェ フィガロの誕生」という映画がある(1996年フランス)。もともと戯曲用の台本を下敷きにしており、史実の誇張、拡大はあろうが、映画に出てくるようないろんな事件があったことは間違いなさそう。
ボーマルシェは17 . . . 本文を読む