映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

音楽が最高「耳に残る君の歌声」

2010-12-26 10:24:12 | 舞台はロシア

1、耳に残ったのは「真珠採りのタンゴ」


この映画はとにかく音楽が素晴らしい。導入部分から流れる、何とも言えぬ哀愁をおびたあるいは澄み切った、と同時に重厚なメロディー。何処かで聴いた曲。やっと思い出した曲名が「真珠採りのタンゴ」 。これが何故この映画で・・・?


そもそもこの曲は、あのカルメンの作曲家ビゼーのオペラ「真珠採り」に出てくる「ナディールのロマンス」として知られているという。この「真珠採り」というオペラ、日本ではめったに上演されることなさそう。


しかしこの映画の中で、主人公たちがパリ・コミック座で「真珠採り」を上演しているシーンがあり、真珠採りのストリーに当たると、「ナディールのロマンス」が何故この映画「耳に残るは君の歌声」のテーマ曲に選ばれたのかよくわかる。


そのオペラのストーリーたるや・・・恋を禁じられた「巫女レイラ」とセイロン島の「真珠漁夫ナディール」は禁断の愛により処刑されそうになるが、かってはレイラを愛した「部族長のズルガ」が二人を逃がしてやるという話。この美しいアリアは、小舟に乗ってやってきた巫女が昔の恋人レイラであることに気がついたナディールが、昔聴いた彼女の声を聴きたいと切々と歌うもの。


この映画は、そのほかにもヴェルディの「トロヴァトーレ」より「見よ、恐ろしい炎を」や、プッチーニの「トスカ」より「星は光りぬ」など、映画のシーンにマッチするような名曲がふんだんに遣われ、この点では大いに楽しめる名作といえよう。 


2、ストーリーは「ボエーム」に類似


映画の筋書きは、スターリン強権政治下のロシアから海外移住を図るユダヤ人娘が、英国経由フランスへわたり、パリの場末で苦労する話。劇団員とはいえ、端役しか当たらない貧乏娘が、ジプシーと恋に堕ち・・・一方要領のいい相部屋の娘はイタリア出身のテノール歌手と宜しくやっているのだが・・・。そして最後はアメリカに亘り、探し求めた父と再会するという話。


この映画、途中からはパリ場末のボヘミアンたちを描いたプッチーニ・オペラ「ラボエーム」を想起させる。主役たちの性格や職業など細部は違うが、故郷を捨てた貧乏・苦学生たちのイメージは共通している。そしてヨーロッパで「ジプシー」と蔑称される人達の状況がよく描かれている。


しかし大きな相違点は・・・最後に主人公が渡米し父親と再会という部分。この映画が物足りないのは、映画の大事なテーマが主人公の父親探しであるとすれば、主人公が家族と別離する事情などを(やたらロシア官憲の横暴シーンだけでなく)、もう少し丁寧に描いておけば良かったと思うのだが如何だろうか。


 


 


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