映画で楽しむ世界史

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「アンデルセン夢と冒険の物語」でデンマーク

2013-03-21 16:56:30 | 舞台は東欧・北欧
童話作家アンデルセンのファンタジー的伝記映画

昨年12月の海外ニュースで、
「アンデルセンの最初の童話『獣脂のろうそく』が発見された」との記事に目がついて、
2001年物の「アンデルセン夢と冒険の物語」という映画があったことを思い出した。


題名通りアンデルセンの伝記映画ではあるのだが、彼は相当奇人だったというのが定説のようで、
映画に登場するアンデルセンも相当な「子供」「礼儀知らず」で、思わず笑ってしまうのだが、
本人はわざとピエロ的に振舞ったのかもしれない。
ともあれ、「アマデウス」のモーツアルトを思い出してしまった。

映画は彼の貧困・苦難の生涯、その中でも健気に夢を追い続ける無垢な青年ぶりを、
有名な童話作品をファンタジーにして織り交ぜながら、描いてゆく。

そのお陰で、当たり前と言えばそれまでだが、
彼の作品の発想の根源は彼の実生活からきているということが良くわかる。
(冬の北欧、寂しい家族関係、貧困の極み⇒「マッチ売り少女」「人魚姫」)

問題は、彼が生きた頃のデンマークのこと。

デンマークは古くは、北欧諸国の雄だったこともあるのだが(中世の「カルマル同盟」時代)、
その後スェーデンに押され、更には19世紀前半のフランス革命、その後のナポレオン時代、
海軍力に優れるイギリスを惧れ、親フランス政策をとってしまう。

これが一大誤算、デンマークは中世以来属国としてきたノルウェーを手離し、
海軍力を失い、海外貿易もままならなくなる・・・国力は一挙に地に落ちる。

そこでデンマークの愛国・復興運動が起きる。
軍人ダルガスが「外で失ったところを内で取り戻そう」と、未開拓荒地の開発運動を起こす。
そしてグルントヴィが人材育成を目指し「国民高等学校の運動(フリースクール)」を起す。

こうした国を挙げての国土回復運動が、農業経営を一転させ
「酪農と畜産を主体とする多角農業経営のモデルとなるのである。

映画の中で、あの奇人アンデルセンを養育しようという貴族だいたり、
皇太子が彼に奨学金の支援を申し出たりするシーンがあるが、
・・・正にそれによってアンデルセンは世に出ることが出来るのだが
・・・以上のような時代、国家背景を知れば、なるほどと思えてくる。
(了)

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