「テルマエ・ロマエ」
「テルマエ・ロマエ」とはラテン語で「ローマの浴場」の意味。
古代ローマ時代と現代日本の入浴文化を比べてみるという着想がいい。
現代日本にタイムスリップした古代ローマ人の浴場設計技師が、
日本の風呂文化にカルチャーショックを覚え、大真面目なリアクションを返す。
やがては時の皇帝ハドリアヌスに仕え、温泉文化をもって政治軍事にも関わることに
・・・タイムスリップの楽しみの極み . . . 本文を読む
「副王家の一族」は、2007年のイタリア映画。原作はフェデリコ・デ・ロベルトの小説「副王たち」(1894年、邦訳がない)。
この小説は、1958年のラペンドゥーサの小説「山猫」に影響を与え、それを映画化したのがヴィスコンティ監督のあの名作「山猫」(1963年)。
という謳い文句につられて、この映画に触手を伸ばした人も多かろう。しかし映画とすれば、圧倒的に「山猫」が良い、比べるべくもない。
い . . . 本文を読む
「ROME ローマ」を見て考えること
WOWOWで放映されていた海外ドラマ『ROME[ローマ]』は、アメリカのHBOとイギリスのBBCが共同制作した大河ドラマ。
宣伝文句をそのまま使えば、総制作費は200億円以上、制作期間は企画から撮影終了まで約8年という破格のもの。
世界史上最も重要かつ有名なローマ帝国の「内乱期から最盛期」の英雄二人、ジュリアス・シーザとオクタヴィアヌスの功績をたどるに、二 . . . 本文を読む
塩野七生さんのお好きなカエサルが「舞台演劇」になって日生劇場に登場・・・そのNHK hiで放映された。
今回の関係者は、特に脚本の斎藤雅文氏など、意識されていたかどうか分からないが、素人はついついシェクスピアの「ジュリアス・シーザー」を思い出して比較してしまう。
しかし、先ずは塩野さんの精根込めた大作の流れを要約しなければならないし、西洋史上数あるエピソードを繋いでいって、見せ場・山場を作らね . . . 本文を読む
「ベニスに死す」は、1912年ドイツの作家トーマス・マンが発表した同名の短編小説を映画化したもの。原作の主人公は小説家であるが、映画では音楽家に変えられていて、マーラーの交響曲など音楽がふんだんに使われ音楽好きの人にはこたえられない作品。
トーマス・マンの特徴は、ドイツ人らしい理屈っぽさ、芸術や精神がもたらす仕事の意味を常に問いただし、それと現実的な生き方との相関関係を確かめ、い . . . 本文を読む
11/27日放送の「若者のすべて」(原題「ロッコとその兄弟たち」)
この映画の背景は1955年頃のミラノとされている。ストーリーを単純化して言えば、イタリア南部の農村から大都会ミラノに移住してきた一家、男兄弟5人の青春物語なのだが、ヴィスコンティの描きたかったのはそれだけではあるまい。
彼は、戦後イタリアの苦悩する姿を見るにつけ、ヴィスコンティ家とイタリア史に思いを致さざるをえない、彼はこの . . . 本文を読む
11月22日NHKBS放映のヴィスコンティ監督の「白夜」は、ドストエフスキーの1848年の同名の小説を、1957年に映画化したもの。
ドストエフスキーの原作は、彼が社会主義に没入していた時代の作品。(彼は社会主義団体に首を突っこんだため当時のロシアの思想取締りに引っかかり、シベリア送りの憂き目にあう)
小説としての評価は高くはないが、男女のこころの揺れを劇的に凝縮し . . . 本文を読む
イタリアの貴族監督ヴィスコンティ生誕100周年
今週から、NHKのBSでヴィスコンティ100周年記念のシリーズ放映。
初回の「夏の嵐」、イタリアの作家の「官能」という小説を題材にしたもの。
しかし巨匠ヴィスコンティが描きたかったのは「官能」自体というよりも、長い苦難の末にやっと統一に向かうイタリアの歴史、それを特にヴェネツィアの最期に凝縮したかったのではなかろうか。要するに古い . . . 本文を読む
第二次大戦でイタリアの戦いぶり 「ライフ・イズ・ビューティフル
第二次世界大戦中、イタリアの小庶民、ユダヤ人の問題を描くコメディー傑作。監督・主演は「ボイス・オブ・ムーン」や「ジョニーの事情」のイタリアを代表する喜劇俳優ロベルト・ベニーニ。1998年のアカデミー賞外国作品賞をとったと記憶する。日本の映画では渥美清の「拝啓天皇陛下様」があったが、大分趣は違う。
イタリアはドイツ、日本 . . . 本文を読む
3月24日NHK衛星第二放送
イタリア耽美派の巨匠ヴィスコンティの「山猫」は文句なしに名作・・・
ヨーロッパの人にとっては、フランス革命が各国に波及し、各国が国家統一、近代国家に生まれ変わる=かっての貴族は没落する、そのプロセスを想起させる。
特にイタリアの、それもシチリアの人にとっては、それまでの歴史が苦難・屈辱に満ちた変遷・複雑なものであっただけに、感慨深い映画に違いない。(「ゴッド・ . . . 本文を読む
シェクスピア原作の「じゃじゃ馬ならし」の最大のミソはルネッサンス最盛期のパドヴァが舞台ということ。
パドヴァには、ボローニャに次いで2番目に古いパドヴァ大学(1222年創立)があり、学生街特有の若さ奔放な雰囲気が漂う。ガリレオ・ガリレイが教授として招聘されたとか、ダンテやペトラルカが居を移して活躍したとかの自慢話もあろう。
また「サンタントニオ教会」はカトリック信者の聖地となっているし「スクロ . . . 本文を読む
第一次世界大戦アメリカ参戦
1、中立を保つアメリカ
ヨーロッパで始まった世界大戦に、国家としてのアメリカは何の関係もない。従って中立を保つのは当たり前のように思えるが、そう単純な話ではない。
アメリカは何せ人種の坩堝、個々のアメリカ人はヨーロッパのどこかの国に先祖や親戚を持ち、故郷母国の情勢がどうなっているか無関心でいられない。故郷意識を顕わに出していきり立つ人もいる。政府が中立を守るのは、 . . . 本文を読む
パニック映画の最高傑作のリメイク番
この映画のオリジナルは1972年の「ポセイドンアドベンチャー」。
当時はテレビの普及に伴い映画の衰退が心配された時期。前年の「大空港」とこの「ポセイドン」は、映画産業復興のきっかけとなったといわれている。ちなみに空のパニック大空港、海のパニックポセイドンに続き、大地のパニック大地震や「タワーリング・インフェルノ」・・・と続々登場する。
パニック映画の多 . . . 本文を読む
ゴッドファーザーは文句なしに素晴らしい。
しかしこれを1部2部だけ見て、単純なマフィア映画や親子の骨肉映画ぐらいにしか見ないなら30-40%、移民流入によるアメリカ社会の成立ちを見たとしても60-70%しか楽しんだことにならない。要は、ゴッドファーザーの故郷シチリアの歴史を少しわかって、3部まで見て始めて100%楽しんだと言えるのではなかろうか。シチリアなしではまさに画龍点睛を欠くのである。(映 . . . 本文を読む
今話題の「300=スリーハンドレッド」を見るには・・・
1、「この映画は「西洋史の根幹をなす歴史映画」、西洋史上の重要歴史事件を描いている」などと言ったって、皆きょとんとするだけ、殆んど何のことか分からないだろう。エンタメ映画にいちいち歴史講釈は要らない、まして西洋史の根幹などと粋がるのもいい加減にしろということだろう。
確かこの映画はアメリカで . . . 本文を読む