映画で楽しむ世界史

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復讐国家イスラエルを描く「ミュンヘン」

2006-05-22 16:17:56 | 舞台はトルコ・中近東

話題の映画、スピルバーグ監督の「ミュンヘン」の一つの見方

事実に基づいて丁寧に作った秀作ではあるが、シナリオに難があるのか、ドラマ的盛上がりや感動という面では物足りない、期待はずれ。

しかしスピルバーグの意図を以下のように解すると大変重要な後世に残る映画なのかも知れない(ややオーバー)。

イスラエル・パレスチナの紛争は3000年来のもの・・・我々日本人は双方の執拗さ、寛容精神のなさに辟易しませんか?特にイスラエル人は、一神教を生み出して、いわば天地を創造した神に触れた、その成果としての旧約聖書を楯にとって、自己の土地や国家を主張する。その主張は、他者との関係を相対的に捉えることなく、絶対的に自己の言い分を通そうというもので・・・他者との議論が尽きると「神の意思」という、誰も二の句を次げないところへ逃げ込んでしまう。これを突き詰めると、法の支配や民主主義、議会主義などと相容れない、やや乱暴に言えば、ヤクザの世界に似ていると言えなくもない。

 しかし、最近こういう風潮が少しずつではあるが変わりつつある?先月だったか、NHKスペシャルが「同時3点ドキュメント」で、イスラエルのある若者が自国の戦う一方の姿勢に懐疑的になって、家族とも別れてドイツへ脱出する姿を取上げていた。そのイスラエルも原理的にはありえない「ガザ地区撤退」をやり遂げた。

イスラエルの独善的姿勢も変わるのか?スピルバーグはこの映画の主人公がだんだん自己の任務に懐疑的になってゆく姿を描いている。「シンドラーのリスト」で憎しみを描ききった彼は、「もう建前は建前として少し現実的に他者と融和していこうではないか」というメッセージを込めたのではないでしょうか。以上素人考えです。甘いかな。

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1 コメント

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アメリカにいるユダヤ人 (いちご)
2012-10-02 02:27:54
ユダヤ人というのは、驚くほどいろいろなバックグランドがあります。今のイスラエルの中心になっているのはザイオニストの右翼系かもしれませんが、穏健派のイスラエル人も多いはず。
メリカにいるユダヤ人は、イスラエルはサポートするけど、イスラエルのやっていることにいつも賛成しているわけではない。これがスピルバーグの立場でしょう。
私の友達の在米ユダヤ人は、親がホロコーストから解放された後、イスラエルでもアメリカでも行きたい方を選んで移民していいといわれ、アメリカを選んだそうです。どんなに底辺から始めてもアメリカの方が安全だと思ったそうです。でも移住先として指定された先が暴力の巣窟の貧民街で、親は子供に高い教育を与え、子供はそこからその教育の力によって貧困を抜け出したそうです。
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