古くから「シェクスピア別人説」は多々あり、喧々諤々の議論が尽きない。
シェクスピアの作品があまりにも見事であり、圧倒されること甚だしいから、彼のキャリアを調べると、
これが何ともプアーで、ストラットフォードの田舎の貧しいなめし皮職人の息子が、
あれだけのものを書いたとは思えない。
そこから英文学者たちは、当時の知識・教養・地位の人の中から、
あれらの作品を書けるであろう人物を探し始める。
河 . . . 本文を読む
3月17日、アカデミー賞授賞式直後の公開ながら、映画館はさほど混み合っていない。
主演女優賞作品という勲章があるのに、内容はいま一つ物足りないこと、既に見抜かれているのだろうか。
確かにメリル・ストリープは上手い。完璧にサッチャーになりきっている。
一言で言えば、彼女のワンマンショー、彼女のために造ったような映画だ。
映画一作の標準時間を2時間とすれば、この映画は1時間45分で15分余して . . . 本文を読む
「英国王のスピーチ」という映画、
アカデミー作品賞を獲るにふさわしい物語(脚本)に仕上げるには許される範囲内なのだろうか、内容面でジョージ6世をやや美談化し過ぎた感じがする。
しかしそれよりも一番に思うこと。
イギリス人は大英帝国時代に築いた伝統なのか、シェクスピアを生んだ誇りなのか、言語問題に関心が強い。というか、英語を喋ることに優越感を持っている。
今回の映画でジョージ6世の吃音を治す . . . 本文を読む
イギリス人は王室好き。王様を主人公にする映画が多く、名作も多い。
先ずはこのヴィクトリア女王、どういう経緯で女王になったのだろうか。
①彼女のお爺さんは、あの「英国万歳=The Madness of the King George」の王様、ジ ョージ三世。彼はアメリカ独立とかフランス革命・ナポレオン戦争とか、イギリスの大変 な時60年間の王様。「農夫王」と称されまじめが取柄の王様だったが、晩年 . . . 本文を読む
今週の「映画で楽しむ世界史」は「クロムウェル」を紹介して、イギリスの清教徒革命を振りかえろうと思う。それにしても「クロムウェル」という映画、教科書的すぎて面白くないのだが・・・。 . . . 本文を読む
ロブ・ロイという映画がある。
18世紀スコットランドに実在した人物、本名ロバート・マクレガー(1761-1834)、通称「ロブ・ロイ=赤毛のロイ」を、「アイバンホー」で有名なスコットが小説化したものが下敷きという。
映画は難しくない。政治的にイングランドに押されっ放し、宗教改革も絡み貴族たちの対立が激しく、気象条件が悪く、飢饉が続く貧しいスコットランド、特にハイランド地域・・・・・ちょうど新大陸 . . . 本文を読む
スコットランドを背景とする映画・演劇を見るに・・・
「ブレイブ・ハート」から後の時代のものがなかなか見つからないが、考えてみるとシェクスピアの「マクベス」、あの中に出てくる王様たちはどうだろう。
スコットランドの王家は、839年「アルピン家の『ケニス1世』」を第1代と数えはじめ、
1034年第16代目の「アサル家『ダンカン1世』」の代になって、初めてイングランドに対抗しうる統一王国の形となったと . . . 本文を読む
1、近時イギリス映画の最高作品
この映画の原作「The remains of the Day」は、日本人名のイギリス人作家カズオ・イシグロ(石黒一雄 1954年生まれ 5歳で渡英)が、イギリスの芥川賞ともいうべきブッカー賞を受けた名作。
舞台は1930年代、イギリス貴族の郊外邸宅(いわゆるカントリー・ハウス)。そこでの様々な人の生き様、特にbutlerと呼ばれる執事の公私生活、その信条を完璧なまで . . . 本文を読む
真面目なアーサー王物語
西欧社会の中でアーサー王は「国際アーサー王学会」まであるという人気者だが、このヒーローが歴史上実在の人物なのかどうか、まだ定説がない。世にアーサー王物語は今まで40本以上の映画があるといわれるが、今回のキングアーサーはやや「真面目に」歴史物として取り組んだ物といえるのだろう。
アーサー王とはこの映画の冒頭に述べられるように、仮に実在の人物とすれば、5、6世紀の人物で . . . 本文を読む
最近著作権の切れた映画がどんどんDVD化され一本500円で買えるところまで来た。そんな中で、「映画で楽しむ世界史」を書くとき苦労した「無敵艦隊」を見つけた。
この映画は1937年のイギリスもの。ローレンス・オリヴィェとヴィヴィアン・リーが競演し、後に結婚に至るあるいはアメリカに渡る、ヴィヴィアンは「風とともに去りぬ」の主役の座を得るといった飛躍のきっかけになった曰くつきの映画。
私 . . . 本文を読む
5月30日NHK衛星放送の炎のランナーは、イギリスの美しさ、栄光をたっぷり味わわせてくれる秀作。
背景となる社会全体に、あるいはストーリの内容に今ほどコマーシャリズムが浸透しておらず、何か落ち着いて鑑賞できるのが嬉しい。1981年アカデミー作品賞。
この映画は見所がいっぱい。色々に楽しめるが、私は、二人の主役オリンピックランナーのうち、ユダヤ系大学生よりスコットランドの宣教師ランナーのほうに関 . . . 本文を読む
ラッセル・クロウの海軍艦長物語
1、映画の原作
映画を見る前に少し予備知識を仕入れた。さもないと、よくあることなのだが各分野でアカデミー賞候補にもなった、折角の大作秀作が充分味わえないことがある。いい映画なのに日本の映画関係者が適切な解説、アッピールをしないため忘れられてしまうものが結構多いから気をつけないといけない。
19世紀大英帝国の名残りであろう、イギリスでは世界の海に展開する海軍の活躍ぶ . . . 本文を読む
アカデミー賞はエリザベス女王かヘレン・ミレンか
1、映画「クイーン」がヒットしているようだ。確かによく出来ている、必見映画だ。
しかし先ず誰もが驚くのは、よくこんな映画、一国の現役の王室や政治のありのままの姿に迫る映画が出来たものだということではなかろうか。
「表現の自由」があるから何の不思議もない、と言ってしまえばそれまでであるが、そう建前ばかりではゆくまい。
当局とし . . . 本文を読む
現在封切上映中の「エリザベス ゴールデン・エイジ」は9年前の「エリザベス」の続編。前編が女王即位まで、後編が女王としての活躍を描いたもの。主演のケイト・ブランシェットが続けて演じているので、親しみを持って見れる。
それにしてもエリザベス1世の時代、1600年前後の50年ぐらいの間は世界史の大変動期。西洋史的には「絶対王政確立期」ということだろうが、イスラム世界や東洋まで視野を広げて見てみるとどうだろう。同時的に地球の各地でいろんな大事、政治変革が起きている。
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1、題名の由来
この映画のタイトル。アイルランドの緑と結びついてなにか抒情映画を予想させるが、とんでもない。この映画はイギリス史上の大問題・・・最近まで世界を心配させたIRA問題に繋がる「アイルランド問題」を背景にした硬派歴史ものだ。
「麦の穂をゆらす風」はアイルランドで古くから歌いつがれてきたメロディー。1798年、フランス革命の影響を受け「アイルランド統一協会」が作られ、初めて政治的対英蜂起が . . . 本文を読む