映画で楽しむ世界史

映画、演劇、オペラを題材に世界史を学ぶ、語ることが楽しくなりました

パリは騒ぐ「レ・ミゼラブル」

2013-03-18 18:54:18 | 舞台はフランス・ベネルックス
映画「レ・ミゼラブル」

世界の文学史上、ヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」は、その長編ぶりや時代背景の設定ぶりから
「戦争と平和」と並ぶものと言う人もいるが、「戦争と平和」よりはずっと大衆的で、
波乱万丈のストーリーを売物にする通俗小説に近いように思う。

しかし確かに面白い。だからこそ、エンタテインメント・ビジネスが取上げやすいのだろう。
今回は何とミュージカルが大ヒットし、それを映画化したものも大変評判が良い・・・・・
この前の「オペラ座の怪人」に続きパリ物はヒット確実といったところだろうか。

あれだけの、「七転び八起き」のストーリーをどうやってミュージカルに纏めるのか、
興味津津、結果は、主軸となるストーリーをきっちり通して、枝葉を思い切って落とし、
大変分かり易く纏めたことが成功の秘訣だろう・・・勿論成功のカギはこれだけでなく、
何といっても音楽、舞台構成、俳優の力量等が大きいのだが・・・。


それにしても、一点だけ歴史事項を押さえておきたい。

それは、コゼットが恋するマリウスやその仲間(共和派の秘密結社のアンジョルラスなど)
が起こした武装蜂起は、1833年の「6月暴動」と呼ばれるものということ。

そもそもナポレオン没落後のフランスで、
復古王政(=ブルボン王家のルイ18世やシャルル10世の統治)が旨く行く筈がない。

旧態に戻ることしか頭にない貴族・聖職者たちに対し、
「市民」革命で眼を覚ましたブルジョア階級は産業革命に遅れまいと、ありったけの商売心を振り回し、
権利意識に目覚め社会主義思想にも巡り合った労働者階級が、声高に社会改革を叫ぶ
・・・世の中は喧騒、落ち着きがなく何が起きてもおかしくない状況。

1830年7月に起きた民衆蜂起「7月革命=栄光の3日」(ドラクロアの絵「民衆を導く自由の女神像」のとき)が起き、
この時は何とか王家筋の交代(人気のあるオルレアン家のルイ・フィリップ)と憲法修正で乗り切るが、
市民・庶民の不平不満は溜まったまま。

1831年にはリヨンで労働者葬儀、各地の社会改革派=政治結社は勢いずく。
そして1833年5月、政府を批判し人気の高いラマルク将軍が死去(死因は当時流行していたコレラ)。

葬儀が進み、一般市民が多くなるにつれ、ラマルク支持派は「共和国万歳」を唱え、
警戒に当たった軍と衝突、急進派若者たちはバリケードを築いて抵抗する。
とはいえ暴動はすぐに鎮圧されて広がらなかったが、約800人の死傷者が出たという。

この「6月暴動」は、日本の世界史の教科書や用語集には載ってない。
ユーゴーはラマルク将軍に期待するところがあったようで、
ついつい詳しく書きたかったのだろう。

フランスの政治・社会の混乱はまだまだ続く・・・次は1848年の「ニ月革命」

(了)







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