「バベル」は必見作品、現代社会の急所をついている
いくら情報通信手段が発達しても、言葉が通じないと、通じても心が通じないと、問題は解決できない。国際政治の舞台でも、個人の日常の生活でも。
この映画はそれを伝えようとする。どうやって。一つの事件を、推理小説的展開に分解し、見るものを引き込んでゆく。モロッコ、ベルベル人の住む山中、アメリカメキシコ国境の街、そして東京。いったい何が関係するのだろう。見てのお楽しみ。
それはともあれ、この映画を見ながらピーンと来たことがある・・・この映画の製作者たちは意識してたか、分かっていたかどうか知らないが。
それはこの映画の舞台がモロッコだということ。
昔、モロッコを舞台にした「風とライオン」という映画があった。往年の美人女優キャンディスバーゲンと個性派アンソニー・クイーンが好演したものだが、・・・ストーリーは・・・あるモロッコで起きたアメリカ人誘拐事件に、アメリカ政府が過剰反応し、当時の大統領ルーズベルト大政治的に利用したといわれる史実もの。映画にはルーズベルトのそっくりさんも登場し、結構面白かったが、日本人には分かりにくい映画だった。
以下以前のブログで書いたものの抜粋。
「風とライオン」という映画の見かた。
ショーン・コネリーが演ずるモロッコ・ベルベル人のリフ族の首長ライズリの活躍がテーマ。・・・19世紀末モロッコはオスマントルコの支配を脱したものの、ヨーロッパの列強に侵略され現地人も内紛を繰り返し、独立の気概高いライズリにとっては見るに見かねるだらしのなさ。アメリカ人を誘拐して関心をかい、堕落しきった現地スルタンあるいはそれを繰るフランスに一泡食わせようとする。その彼が誘拐したアメリカ人婦人(キャンディス・バーゲン)に示す男気や義侠心が映画の見どころ。
ちょうどこのころのアメリカは、1901年セオドア・ルーズベルトが大統領になり、それまでの独占資本家中心、堕落しきった「金ピカ時代」(アメリカ史に詳しい猿谷要氏の表現)から引き締めを図らんと「革新主義」を唱え張り切っているところ。
そこへ1904年におきたモロッコでのアメリカ人誘拐事件。アメリカ人保護を名目に(まさかモロッコに利権獲得を狙ったとは思えないが、フランスを牽制する意味はあったであろう)軍隊を派遣し、国民の愛国心を煽る。
この時期のアメリカ、特にセオドア・ルーズベルトが主にカリブ海で展開した強引な外交政策は「棍棒政策」とのニックネームをもつ。この言葉は彼がよく引用した「棍棒を手に、話は穏やかに」とのセリフに由来するという。
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