映画で楽しむ世界史

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フランス革命のエッセンス「愛、革命に生きて」

2011-07-27 17:46:29 | 舞台はフランス・ベネルックス
フランス革命を扱った、あるいはそれを背景にした映画はたくさんあるように思うかもしれないが、よーく考えるとあまりない。
いや、少し厳密に言うと、一般には「フランス革命」というと、漠然と幅広く考えていて、以下の四つの分野の総てを含んでしまっている。

①革命前の「アンシャンレジーム」・・・・典型例:マリー・アントワネット物
②狭義の革命勃発とその成り行き・・・・下記
③皇帝ナポレオンの出現と活躍・・・典型例:ナポレオン、キングオブキングス
④ヨーロッパ諸国にとっての革命・・・・エジプトやロシア遠征物、スペイン・ゴヤ物

しかし、フランス革命の最もコアの部分「いわゆる第三身分が立ち上り、王様と第一・第二身分よりなる支配体制をひっくり返す部分」、上記区分に照らして言えば②の部分を旨く映画にしたものがない。
辛うじて、デッケンズの小説による「二都物語」。
これは1789年革命勃発時の状況を旨く使っているが、ストーリーがあまりにも凝りすぎていて(小細工しすぎで)感動は薄い。

そういう意味で、小生一押しの映画があるのだが、これを見るのがなかなか難しい。
そもそも日本では劇場未公開作品で、辛うじてビデオでのみ発売されたのだが、
その名は、「ソフィ・マルソーの『愛、革命に生きて』」という。
この映画、原題はなんと「Chouans!」(ふくろう)。
フランス革命時の「梟党蜂起」を扱った作品で、一般にはなんとも分からない題名。
日本の映画輸入業者は全く食指が働かなかったであろうが、何とか、ソフィー・マルソーが主演ということで、ビデオ発売にこぎ着けたのに違いない。

しかしこの映画は本当に良くできている。フランス西部のブルターニュを舞台に、革命という「狂気」が、地方都市・農村に浸透してゆく様、

国王処刑後に激しくなる王党派や聖職者の反革命勢力とそれを掃討する革命軍の戦い、
そこで翻弄される人々の苦悩と哀れみ・・・。

映画として面白いのは、登場人物が実によく工夫されている点だ。

・・・革命の趣旨は理解する百科事典派の貴族と、既得権維持の為反革命を扇動する貴族、
・・・聖職者を公務員化する基本法に宣誓する僧とこれを拒否する僧
・・・革命派官僚に取り入る新興ブルジョワとこれに反発する庶民たち


簡単にストーリーを。

フィリップ・ノワレ演じるブルターニュのケルファデック伯爵は、百科全書派の小貴族。
彼は、貧しい女が教会に産み捨てていった女の子(ソフィー・マルソー)をセリーヌと名付け養女にし、同じときに生まれた自分の息子オーレルと一緒に育てる。
さらに数年後、神学校に馴染めず不登校だが聡明な平民の息子、タルカンも養子にし、三人を兄弟のように育てる。
しかし年頃になった三人の間には男女の感情が目覚め、三角関係になってゆく感じ濃厚に。
そこへ届いたフランス革命の第一報。
伯爵は一計を案じ、オーレルをアメリカのベンジャミン・フランクリンのもとへ、
タルカンを巴里のミラボーのもとへ修行に出す。
そして数年後、タルカンは共和派のエリート官僚で戻ってくる。
またオーレルも・・・彼はゆきがかり上王党派ふくろう団の首領に担ぎ上げられてしまい・・・タルカンと戦う運命に・・・、その間で揺れ動くセリーヌ――、というお話。

(了)

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