映画で楽しむ世界史

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カチューシャが「復活」したが

2010-12-26 11:17:24 | 舞台はロシア

文豪トルストイの最後の長編「復活」を、イタリア人で「グッド・モーニング バビロン」を撮ったタヴィアーニ兄弟監督が映画化した。2002年モスクワ国際映画祭グランプリ受賞作とのこと。


この兄弟は他にもトルストイの短編をいくつか映画化しており(「サン・ミケーレのおんどり」「太陽は夜も輝く」)、ちょっとしたこだわりがありそう。人間に対する心やさしい目線が合うのかも知れない。


しかしこの映画は何かもう一つピンとこない。ロシアの大地の奥深さに挑戦しようとする点は見てとれるが、どうしてもストーリー展開がイタリア的で、ペーソスでもって人物を描こうとする点がめだつ。


しかしそれだけではない。どうも「復活」は日本人には以下のような事情もあって、なかなか理解しにくい。


① トルストイの原作に込めたテーマは、キリスト教的に「魂の救済」「復活」ということな のだろうが、この辺は日本人がもっとも取っつき難いところ。男性のネフリュードフの贖罪心理はよくわかるが、何か一人よがり。カチューシャの心理がいま一つよくわからない。


② 日本では小説の紹介とは別に、大正3年(1928年)に島村抱月、松井須磨子が翻訳劇「復活」として上演したが、表面的なストーリーと、「カチューシャの歌」が大ブレイクした。日本人には感傷的にのみ捉えられている。


③ 即ち、大正3年の当時はいわゆる「大正デモクラシー」の火がついた頃。ロシア革命が進歩的と伝えられ、トルストイなどロシア物が流行の如く入ってきた。トルストイの糾弾したロシア社会の後進性など正しく伝えられていない。


 


それはそれとして、現在NHKの教育テレビで放映中の「知る樂」シリーズの一つ、作詞家「なかにしれい」の「不滅の歌謡曲」によれば、「カチューシャの唄」は日本始めての歌謡曲で、日本音楽史上、芸能史上革命をもたらした意義あるものとされている。(彼が選ぶ「歌謡曲ベストテン」のトップにランキングされている)


彼の説を紹介しよう。なるほどと頷かされるような気がするが・・・。


「明治以来、日本では西洋音楽に日本語をのせることに異常なほどの情熱を傾けてきた。おそらく世界でも例を見ない現象。そして大正という時代は、こうした日本語と西洋音楽との関係が最も幸福であったときと考えていい。」


「大正3年、島村抱月・松井須磨子らの芸術座が「復活」を上演し、主題歌「カチューシャの唄」がヒットする。今までに唱歌や大衆に歌われた歌はあったが、スターが歌ったものはなかった。この歌こそ西洋音楽のスタイルをまといながら、歌舞伎の持つ舞台の活力を引き継いだ初めての歌謡曲である。」


 


 


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