リンカーン
確かに真面目に(コマーシャル第一でない)取り組んだ映画とは思うが、
アメリカ人ならともかく、一般の日本人としては、チョット事前準備してゆかないと充分味わえない。
リンカーン大統領にとっては、戦争のテーマであった「奴隷解放」を確実なものするためには、
戦争そのものを終わらせる前に(即ち南軍と停戦交渉する、そして南部の連邦復帰を認めるその前に)、
奴隷解放をうたう憲法13条を定めてお . . . 本文を読む
童話作家アンデルセンのファンタジー的伝記映画
昨年12月の海外ニュースで、
「アンデルセンの最初の童話『獣脂のろうそく』が発見された」との記事に目がついて、
2001年物の「アンデルセン夢と冒険の物語」という映画があったことを思い出した。
題名通りアンデルセンの伝記映画ではあるのだが、彼は相当奇人だったというのが定説のようで、
映画に登場するアンデルセンも相当な「子供」「礼儀知らず」で、思わ . . . 本文を読む
日本版ダイ・ハード「ホワイトアウト」
真保祐一の原作は吉川英治文学新人賞を受賞し、
このミステリーがすごい!で国内部門1位に選ばれるなど、評判の高いベストセラー。
若松監督は、映画デヴュー作として相当張り切って作られた、その意気は良く伝わってくる。
しかし意識してか無意識にか、あの「ダイ・ハード」と全く同じ作り方。
主演の織田祐二もそれは充分感じていただろう。ブルース・リーに劣らぬ「不死身」 . . . 本文を読む
映画「レ・ミゼラブル」
世界の文学史上、ヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」は、その長編ぶりや時代背景の設定ぶりから
「戦争と平和」と並ぶものと言う人もいるが、「戦争と平和」よりはずっと大衆的で、
波乱万丈のストーリーを売物にする通俗小説に近いように思う。
しかし確かに面白い。だからこそ、エンタテインメント・ビジネスが取上げやすいのだろう。
今回は何とミュージカルが大ヒットし、それを映画化し . . . 本文を読む
この映画の原題は「マックス・マヌス」、
彼はノルウェー人で、同国では第二次世界大戦一番の英雄とされている人物。
それで邦題は「ナチスが最も恐れた男」としたのだろうが、DVDのストーリー紹介の中で、
「マックス・マヌスは、反ナチスの思いから、志願してフィンランドでロシアとの戦いに参加した後、
ナチ占領下のノルウェーに帰郷した」と記載されている点、少し注意を要する。
第二次世界大戦の始まりを、時 . . . 本文を読む
古くから「シェクスピア別人説」は多々あり、喧々諤々の議論が尽きない。
シェクスピアの作品があまりにも見事であり、圧倒されること甚だしいから、彼のキャリアを調べると、
これが何ともプアーで、ストラットフォードの田舎の貧しいなめし皮職人の息子が、
あれだけのものを書いたとは思えない。
そこから英文学者たちは、当時の知識・教養・地位の人の中から、
あれらの作品を書けるであろう人物を探し始める。
河 . . . 本文を読む
本年度第85回のアカデミー賞「作品賞」受賞作品だけあって文句なく素晴らしい。
何故だろう・・・アカデミー賞の中でも最も権威ある作品賞、いろんな観点から
「素晴らしい」とされたのは当然なのだが、最大の理由は作品を貫くテンポ感ではないだろうか。
基本的には歴史的事実に基くシナリオで、それも相当「重い」、現在も影を引きずる、
1979年の「イランのアメリカ大使館人質事件」を描くのだから、ついいろいろ . . . 本文を読む
「テルマエ・ロマエ」
「テルマエ・ロマエ」とはラテン語で「ローマの浴場」の意味。
古代ローマ時代と現代日本の入浴文化を比べてみるという着想がいい。
現代日本にタイムスリップした古代ローマ人の浴場設計技師が、
日本の風呂文化にカルチャーショックを覚え、大真面目なリアクションを返す。
やがては時の皇帝ハドリアヌスに仕え、温泉文化をもって政治軍事にも関わることに
・・・タイムスリップの楽しみの極み . . . 本文を読む
ファウスト(2)
最近のドイツ旅行はかっての「ロマンテック街道」一辺倒から脱し、メルヘン街道、
古城街道、ファンタステック街道、アルペン街道等々いろんな観光ルートが楽しめるようだ。
中でも「ゲーテ街道」は、ライプチッヒから中央ドイツを南西に横切ってゆくのだが、
途中イエナ、ワイマール、アイゼナハなど正に、ゲーテ・シラーを彷彿させる街町を通ってゆく。
そこで問題のゲーテ。彼は当時のドイツでいえば . . . 本文を読む
ファウスト(1)
第68回ヴェネチア国際映画祭で「金獅子賞」を獲った「ファウスト」。
言わずと知れたドイツの文豪ゲーテの代表作を映画化したもの。
原作の「ファウスト」は、中世ドイツに実在したと言われるドクトル・ファウストゥスの伝説を下敷きに、
ゲーテが一生かけて完成した大作。
主人公ファウスト博士は、医学を始め、錬金術や占星術など考えられるあらゆる知識を会得したが、
その限界に至ったのかどう . . . 本文を読む
「マンデラの名もなき看守」
アカデミー賞の外国映画賞を受賞したというだけあって、確かに秀作。
歴史&ヒューマンドラマとして爽やかな感動を覚える、歴史に残るものだろう。
少しコメント
観客、特に日本人などは主人公のグレゴリー・は何国人だと思っているだろう。
失礼ながら、あまり歴史に意識のない人は、映像から受ける印象からいって、
てっきりイギリス人と思ってしまうのではなかろうか。
未確認なのだが . . . 本文を読む
メキシコ革命:ラテンアメリカで最初の社会革命?カウディーヨの政権闘争?
1、ディアス再選に対する反対運動・・・1910マデロ「サン・ルイス・ポトシ計画」
2、マデーロによる「革命」・・・1911南部のサパタ、北部ビリャ、カランサなど
3、ウエルタ将軍のクーデター・・・守旧派による反革命⇒19113マデロなど暗殺
4、ウエルタ政権の打倒・・・北部のビリャ・カランサによる「護憲革命軍」活躍
. . . 本文を読む
「風とライオン」を鑑賞するために、モロッコ史概観
<ベルベル人対アラブ人> ベルベル人といっても・・・いろんな種族。
歴史・・・ムラビート朝、ムワヒッド朝は一時スペイン(イベリア半島)を制覇したことも。
17世紀以来、アラブ系「アラウィー朝」、紆余曲折はあるも、現在も王制「ムハンマド6世」。
19世紀末混迷、モロッコ事件、1912フランスの保護領に、第一次世界大戦の火種として有名。
現在の . . . 本文を読む
「オペラ座の怪人」(2)
③この原作の「怪人=奇形児」から少し私見をこじつけると・・・。
フランスの大衆娯楽分野には「美女と野獣もの」という系譜がある。
そもそも「美女と野獣」は1756年に出版された民話集に端を発するが、
野獣が美女に懸想する話を取り込んだ物語は多く、音楽、バレー、
映画、ミュージカルと盛んに繰り返される。
最も元話に近いのはジャン・コクトーの「美女と野獣」。
最 . . . 本文を読む
「オペラ座の怪人」(1)
①イギリスの貴族音楽家アンドリュー・ロイド・ウェバーのミュージカル(映画もあり)。
確かに音楽は重厚・甘美、文句なく素晴らしいし、舞台は豪華絢爛、
推理・怪奇的要素も加わり大ヒットした理由は分かる気がする。
しかし物語の筋は、猥雑なものをいろいろ混ぜ込んだ感じで何ともすっきりしない。
ストーリーだけで論じるとすれば、明らかにB級、駄作極まりない。
要はオ . . . 本文を読む