佐藤春夫「別離」より
34×35cm
●
全文は以下の通りです。
別離
人と別るる一瞬の
思ひつめたる風景は
松の梢のてつぺんに
海一寸に青みたり。
消なば消ぬべき一抹の
海の雲より洩るやらむ
焦点とほきわが耳は
人の嗚咽を空に聞く。
●
この詩においても、やはり第1連が断然すぐれています。
むしろないほうがいい。
そんな気さえします。
この詩を読んだのは高校時代。
「殉情詩集」の詩は、ほとんど覚えていることでした。
若い頃に読んだものの記憶は
たとえば、つい最近見た刑事ドラマの記憶よりも100倍も鮮明です。