プルサーマル計画を憂慮する有志の会

原発問題に関して投稿します。

絵に描いた「避難計画」

2014-06-23 10:45:00 | 日記
 伊方原発過酷事故時の避難についてのNHKの特集番組(『四国羅針盤』)がありました。要約してご紹介します。

 政府や自治体の主張する「段階的避難」(「陰の避難」と呼んでいるそうです)は、自主避難者が多いと渋滞が発生するという問題があります。住民の約40%が避難すると渋滞になってしまうということですが、福島の原発事故を見てしまった我々国民が、自主的に避難する数は40%どころではないと推測されています。また地震などで複数の道路が通れなく可能性があり、そうそう上手く「段階的」に避難できるか疑念がもたれています。東京女子大学の広瀬教授は、「一斉避難」を提唱しています。私も、少なくとも50キロ、60キロの範囲で、同時に避難し始めるべきだと思います。

 また現在の避難の区分けとして、同心円状に30キロとしていますが、愛媛県の内子町では、一部が30キロ圏内ですが、町の中心部など多くは30キロ圏外で、避難に差別ができないように、自主的に「避難計画」を策定し、ヨウ素剤も住民分確保しています。町としてやれることをやるとの姿勢ですが、やはりやれないことが多いと町長は指摘していました。

 伊方原発は(三崎)半島にありますが、半島に住む住民は船による避難を強いられますが、津波で(三崎)港に大型船は着岸できない可能性があり、沖合いで待つ大型船まで(避難住民を)ピストン搬送しなければいけない可能性があります。そもそも津波がきている中、船が使えるのかというという疑念があります。IAEAですら、避難計画をきちんと作成するように提言していますが、国は県や市町村など自治体に丸投げで、もっと避難計画及び実際の避難に際してもっと責任をもってやるべきだと、同教授は指摘されていました。

 また、最も大きな課題として、「要配慮(支援)者」の問題があります。伊方原発の30キロ圏内だけでも約4,000人の方が「要配慮(支援)者」で、その内の約1、000人は「担送」といって「寝たまま」で搬送しなければなりません。(拠点病院になっている)八幡浜病院では、搬送先の確保や医療の継続など課題は多く、そもそも患者さんなど全員を運べるだけの車両が確保できていない状況で、消防など他からの支援なしにはそもそも避難は不可能だとしています。県の計画には具体性がないと。

 福島第1原発事故では、避難中や避難先で治療を受けられず、沢山の方が亡くなっています。災害よりも「関連死」の方が多く、こうした「要配慮(支援)者」の方々の避難をどうするかが大きな課題ですが、一病院だけでは到底対応できるわけがなく、同病院は県の支援が必要だとしています。勿論、県の支援は必要だと思いますが、何より避難計画作成の段階から、国がもっと積極的に関与していくべきだと思います。同教授は、原発の事故の想定そのものが甘く、もっと最悪を想定すべきだとのことでした・・・

P.S. 米国では、(名前は忘れましたが)新規に建設された原発が、避難路が確保できないということで廃炉になっています。原発稼働には、有効な避難計画が前提条件となっているからです。米国ではこの審査をNRCが担っていますが、日本には避難計画が検証されることもなく、審査する体制すら整っていません。正しく「絵に描いた餅」状態で、その有効性に何らの信用性もありません・・・

P.S.2 (先日の『朝日新聞』には)再稼動の審査が先行している6つの原発の半径30キロ圏内にある52市町村の避難計画うち、病院で個別の避難計画を作っていたのは217施設中18施設で約8%だったそうです。老人ホームなどの福祉施設では、823施設中204施設で約25%です。各都道府県の「地域防災計画」では、病院や福祉施設などに対して、個別の避難対策を取るように求めていますが、実態はなかなか難航しているようです。北海道では計画作成が殆どできていますが、それも避難先だけの確保だったり、滋賀県では策定状況すら「把握していない」とのことです。(繰り返しますが)原発を稼働させる前に、すべきことがあると思うのですが・・・

P.S.3 避難計画については自治体からは、「本当に計画通りに避難できるか不安」(滋賀県)、「国の言うとおりに計画を作れない」などの声が挙がっています。また自治体から計画作りを指示された養護老人ホームの施設長は、「計画は矛盾だらけ」だと吐露しています。病院からも、「誰が患者に付き添い、誰が病院に残るのか、医師や看護婦の役割分担もまだ決まっていないとのことです。元経産官僚だった古賀氏は、「ちゃんとした避難計画を位置付けた途端に、日本で原発は建たなくなる(稼働できなくなる)」と指摘しています。まともな避難計画を作りようがないからこそ、(米国のように)稼働要件に「有効な避難計画の作成」を入れられない、ということのようです・・・

by「プルサーマル計画を憂慮する有志の会」 (平成26年6月23日)