プルサーマル計画を憂慮する有志の会

原発問題に関して投稿します。

「福山調書」

2014-06-17 11:05:51 | 日記
 F1原発事故時に官房副長官として住民避難など事故に対応した福島元官房副長官の「聴取書」から、官邸内の初動の事故対応について見てみてみたいと思います。(以下、参照・引用は『朝日新聞』)

3月11日
 14:46 東日本大震災発生。約1時間後1~3号機の全交流電源喪失
 19:00過ぎ (取材に対して)菅首相らと協議して、「広め」に避難区域を設定する原則を取り決める(しかし)
(「福山調書」によると)「(F1)から遠い人が逃げるとそこで渋滞する・・・近い距離の人たちが渋滞で(逃げ)遅れる可能性がある」との慎重論が出る
 20:26 福山氏、ノートに3キロ圏内の住民「5,870人 1,967世帯」と記入
(「福山調書」によると)何故3キロなのかについては、「3キロぐらいまでは準備ができていますみたいなのが(原子力安全・)保安院からあ」り、「そんなに広くなくていいという話は斑目(原子力安全委員長)からもあった」、「とにかく3キロ」だと。
*ベントやメルトダウン、或いは水素爆発によって大量の放射性物質放射性物質放出が予想される中、たった3キロの範囲で影響が収まるはずもないのですが・・・
21:23 政府はF1から半径3キロ圏内が避難区域に、10キロ圏内は屋内退避とする
 *当初決めた「広め」の避難範囲を曲げて、わずか3キロ圏内の住民への避難指示を出しています。3~10キロ圏内の住民の「屋内退避」は、実質的に3キロ圏内の人を避難させる為だったともいえるかと思います。 

3月12日
 01:30 官邸、東電のベント実施を了承
 04:30前 官邸、ベントが実施されていないことに気付く
(「福山調書」によると)「(ベント)を3時にやると言ったのは貴方たちですよ」、「(原子炉は)爆発しないのですか」と福山氏は声を張り上げる
 05:44 政府、避難区域を10キロ圏内へ拡大
 (「福山調書」によると)「爆発するかもしれないので、とにかく早く逃がしたい」、10キロ圏内の理由については、「斑目さんあたりから10もあれば十分だみたいな話が多分出ている」と。
*爆発が起これば、50キロ、100キロ、それ以遠の地域へ影響ができることは、SPEEDIで既に推測済みだったはずですが・・・
 08:03 吉田元所長が1号機のベントを指示
 15:36 1号機水素爆発
 18:25 20キロ圏内が避難区域に
 (取材に福山氏は)20キロ圏内の理由について、「原子炉に近くて本当は早く逃げないといけない人たちが留まらざるを得なくなる。(近い人の)大量被曝を避けるため、近い人から逃げてもらおうと、まずは20キロというのがこの時点の判断だった」と回答
*大量被曝が20キロ圏内で留まらなかったのは、飯舘村や浪江町の住民の被曝で明らかになっていること。何より放射性物質の拡散情報を意図的に出さなかったことが、多くの住民の大量被曝に繋がったと思います・・・

3月14日
11:01 3号機水素爆発
18:22 2号機核燃料全露出
 (「福山調書」によると)「炉の不安定な状況の中で、いつ爆発するか分からないのだったら屋内退避にしようとという判断をした」と語っていますが、(取材に対して同氏は)「放射線被曝専門家に聞き、屋内にいるほうが、避難のため外に出ているより大量被曝の可能性が低い」ことを確認しています。
*それならば、3月11日に3キロ圏内に避難指示を出した時点で、少なくとも30キロ圏内(本来ならば100キロ圏内)の住民には、大量被曝を避けるために「屋内退避」を指示すべきだったと思うのですが・・・

3月15日
 06:00過ぎ 2号機の圧力抑制室の圧力がゼロとbの報告
 06:42 吉田元所長がF1での「待機」命令、しかし9割の所員がF2へ「退避」
 09:00 F1正門での放射線量が最高値
*1~3号機のメルトダウンした核燃料から、膨大な量の放射性物質が放出されている状況
 11:00 政府、20キロから30キロ圏(6万2,000人)に「屋内退避」を指示
 *3基の原子炉がメルトダウンし、放射性物質の拡散情報を持ちながら、小出しかつ後手の対応で、事故に対しても避難に関しても、まともに対応したとは到底言い難いものがあります。避難住民の方々への聞き取り調査では、政府の避難指示は「全く適切ではなかった」、「あまり適切ではなかった」との回答が8割を超えているそうです。

3月25日 政府、「屋内退避」を指示した20~30キロ圏の区域の住民に対して、「自主避難」を要請
 *(当時も書きましたが)これだけの放射能汚染の広がりの中で、「自主避難」とは住民の「救出」の責任を政府が投げ出したのに等しい行為だと思います。もし仮に「自主」的な判断を求めるならば、せめて「情報」を出さなければ、その「判断」すら行えないと思うのですが・・・

4月22日 政府は、「自主避難」を要請した20~30キロ圏の区域を「計画的避難区域」を設定
 *「計画的」とは欺瞞の限り。「避難区域」に設定するのに(飯舘村や浪江町もそうですが)原子炉が爆発して(汚染状況を知りながら)1ヶ月以上も掛かるなんて考えられないと思うのですが・・・

P.S.  (F1へ行く途中)菅元首相から水素爆発の可能性を聞かれた斑目元原子力安全委員会委員長は、その可能性を否定しています。1号機の爆発の映像を官邸で観ていた同委員長は、「アー、水素爆発だ」と声を上げたそうです。私はあの映像を観て、声が出ませんでした。彼は一体何の専門家なんでしょう?彼の意見が「避難範囲」を極端に狭くさせるのに大きく寄与しているのは「福山調書」でも明らかです。(中間貯蔵施設に関して同じような発言をした大臣が今朝の報道でもありましたが)原発建設も「最後は金だろ」と嘯(うそぶ)いた同氏は、原発が膨大な放射能汚染を引きこし、住民の大量被曝をもたらし、現在も尚被曝と向き合いながらの生活を余儀なくさせられていることを、一体どのように考えているのでしょうか?・・・

P.S.2 (繰り返しますが)当時の政府の避難指示は遅く、狭過ぎます。屋内退避にいたっては、情報を開示した上で、関東圏を含めた広い範囲に出すべきでした。情報を与えられず、被曝した国民は膨大な数に上るものと思います。事実を正確に伝えて、最も適切な対応を指示すべきでした。「直ちに影響はない」と繰り返すだけでは、帰って国民の不安を煽り、政府への不信を招いただけだったと思うのです・・・

P.S.3 (NHKニュースによると)トレンチに溜っている高濃度の放射能汚染水1万1,000トンを止水する為東電は、2号機のトレンチの入り口部分に地上から配管を打ち込み冷却用の液体を流し込んで汚染水の一部を凍らせる作業を進めていますが、4月末から1ヵ月半経っても、一部の汚染水が凍っていないとのことです。トレンチ内の構造物が障害になって均等に冷却できないことや、トレンチ内で汚染水が常に流れていることが原因のようです。東電は、汚染水の流れを抑えたり、凍結用の配管の数を増やして対応するとのことです。止水できれば溜った高濃度の汚染水を取り除く計画で、3号機での作業も進められているそうです。トレンチ内で汚染水が流れているということは、海へ常に流出しているということだと思います。凍結による止水が上手く行けば良いのですが・・・

by「プルサーマル計画を憂慮する有志の会」 (平成26年6月17日)