プルサーマル計画を憂慮する有志の会

原発問題に関して投稿します。

ヨウ素剤配布の課題

2014-06-18 11:06:47 | 日記
 安倍政権は昨日、原発を「重要なベースロード電源」とする「エネルギー白書」を閣議決定しました。しかし、過酷事故時の避難計画や安定ヨウ素剤配布については自治体に丸投げ状態で、事故の対応も事業者に殆ど任せ切りです。(人事をいじって)再稼動を急ぐ前に、すべき事柄が山積していると思うのですが。今日はヨウ素剤配布を任された現場の困難な状況、その課題をまとめてみます。(参照・引用は『朝日新聞』)

 F1過酷事故前は、副作用の恐れなどから事故時に配ることになっていた安定ヨウ素剤ですが、昨年6月の指針改定で半径5キロ圏内の住民には自治体が事前に配布、5~30キロ圏では旅行者など一時的に滞在している人も含めて、事故時に膨大な数のヨウ素剤を住民に配らなければいけません。地震などで道路が寸断されていた場合の配布ルートや、(ヨウ素剤を処方する)医師・薬剤師の確保も課題です。

 原発から5キロ圏内の住民は、住民説明会に参加し、病歴や常時服用する薬などを用紙に記入、服用方法や副作用、保管の仕方などの注意点を聞いた上で、医師や薬剤師からヨウ素剤(と受領書)を受け取ります。しかし、住民説明会に先立って行なわれた原子力規制委員会による「模擬住民説明会」では、鹿児島県の担当職員からは「地元には高齢者が多く、問診にはもっと時間が掛かる」、(説明会を行なう予定の6月以降は)「農繁期でもあり、長く待たせられない」として、(原則の)「同時配布」ではなく、説明会以降に開く「配布会」で住民に渡す予定とのことです。

 しかも、ヨウ素剤は3年で更新しなければならず、更新方法や(病歴も変化しているでしょうし)再度の説明会を実施するのかどうか、転入出に伴うヨウ素剤の配布や回収方法も決まっていない状況です。配布された住民も、ヨウ素剤を自分で保管・管理しなければいけません。自治体や住民への負担はとても大きくなると思います。実際、原発周辺の155の自治体の内、79の首長が避難計画作成においてヨウ素剤の扱いが課題になったと(アンケートに)回答しており、「計画と現実には隔たりがある」と声も挙がっています。

 昨日全国で始めて開かれた、鹿児島県川内市での住民説明会には約150人が参加し、問診を受けました。副作用の恐れがないと判断された住民は、7月以降の(上記の)「配布会」でヨウ素剤を受け取るとのことですが、参加した男性(51歳)からは、「小中学生の子どもに飲ませて重い副作用が出ないか、説明を聞いてもわからない」との声が出ています。説明会の対象住民は4,800人、今後、地区別に9回開かれるということです・・・。

P.S. 14基の原発を抱える福井県は、30キロ圏内12市町の住民分のヨウ素剤を備蓄しましたが、5キロ圏内5市町の住民約1万人に対する、住民説明会開催の予定すら立っていないとのことです。同県地域医療課では国に対し、問診の際の配布基準の明示や配布の為の相談窓口の常設を求めています。また石川県の医療対策課は「副作用があった場合の責任の所在や誤飲した場合の対処方法など、もっと細部を詰める(問答集の作成の)必要があるとしており、国の回答後に医師会とマニュアルを作るとのことで、(同県志賀原発5キロ圏内の対象住民は約4,000人)現在、説明会開催の目途は立っていません・・・

P.S.2 伊方原発の5キロ圏内の住民は約5,700人、愛媛県医療対策課は、「国は指針を示すだけで自治体任せ」、「規制庁の担当者が説明に出向くなど、もっと関与して欲しい」と批判していますが、危険だけでなく、これだけの負担を自治体に強いているという自覚がないのではないかと感じます・・・

P.S.3 「事前配布」だけでもこれだけ困難なのに、事故時に配布予定の5~30キロ圏の何万、何十万人の住民に、どうやって説明し問診して配布しようというのでしょうか?それ以遠は配布しないでよいのでしょうか?兵庫県のシミュレーションでは、大飯原発や高浜原発から150キロ離れた淡路島でも安全ヨウ素剤の服用が必要な被曝(7日間で50mSv)を超えるとの試算が出ています。風向きや風の強さ次第では、もっと遠くの地域でも、服用基準を超えてしまいます。服用しても完全に被曝を防げるわけではありませんし、服用のタイミングも重要で、ヨウ素剤1つとってみても、問題があり過ぎるように思います・・・

by「プルサーマル計画を憂慮する有志の会」 (平成26年6月18日)