ミュンヘンなんて、どこ吹く風

ミュンヘン工科大留学、ロンドンの設計事務所HCLA勤務を経て
群馬で建築設計に携わりつつ、京都で研究に励む日々の記録

小さな箱 の家

2008-05-04 11:23:04 | ロンドン・hcla
今夏にMOMAで展示される我らがmicro compact homeですが、設計者リチャード・ホールデンのインタビュー記事が先週のBDに掲載されていました。

http://www.bdonline.co.uk/story.asp?sectioncode=453&storycode=3111850

MOMAからは今回の展示にあわせてyoutube上で動画も配信されています。こちらはホールデンのインタビューに加えて居住者からのコメントもあり興味深い。

http://www.youtube.com/watch?v=AMdV8kj924U

これは二年前に僕がm-chを実際に訪れたときの記事。

http://d.hatena.ne.jp/deco2005/20060629/1151592752




渡英直前に読んだ正高信男の『ケータイを持ったサル』では、電車の中で人目を気にせず化粧をするひとも、部屋の外に出ようとしない引きこもりのひとも、ひとくくりに説明されているのが面白かった。みな「安全な家」の中から出て行きたくない意識の現われであって、「安全な家」の範囲が広い(公共空間までが家の延長)か狭い(自分の部屋だけが家)かの違いに過ぎないのだと。サルの群れには家族のまとまりしかなく、「安全な家」の外、すなわち「社会(他人同士が共有のルールによって生活する場所)」がないのだそうだ。社会がなければ、想定外の出会いは生まれない。よってサルはいつまでたっても進化することはないのである、と。



切り詰められた極小空間であることに目が行きがちなm-ch(micro compact home)の真髄は、実は「安全な家」と「社会」が急接近している関係性にこそあるのだと思う。デザイナーと居住者のインタヴューで共通しているのは、「m-chの生活」を問われたとき「m-chの外での生活」をむしろ答えていることだ。m-chは住む人から多くのことを差し引いてしまう。結果、極限空間のなかで人はむしろ社会への積極的な参加を求められる。この極小の立方体は、人間が機能的に収納された孤独な箱ではなく、可能性の社会に飛び出すため舞台袖に置かれた控え室なのである。



まだ日本には一棟もないはず。最初にm-chを日本に建てるのはあなたです!
http://www.microcompacthome.com/
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