ミュンヘンなんて、どこ吹く風

ミュンヘン工科大留学、ロンドンの設計事務所HCLA勤務を経て
群馬で建築設計に携わりつつ、京都で研究に励む日々の記録

イギリスにおける耐震基準について

2017-03-27 11:03:13 | 群馬/東京・設計と博論
最近、イギリスにおける耐震基準について質問を受けたことがあった。自分がロンドンで実務についていたとき(2007-2014年)に耐震は意識したことがなかったので、少し調べてから答えた。より詳しくは、構造設計の実務についている方へのヒアリングが必要だとは思うが、概要としては以下のようである。
・イギリス国内では特殊な建築物を除いて耐震設計は必要ないと考えられている。
・ただし、基準としてはヨーロッパ共通の「ユーロコード8(耐震設計)」を採用している。

①HSE(Health and Safety Executive、イギリスで安全衛生関係法令に基づく行政を行う組織)の「Design codes - buildings / structures」というページによれば「イギリスでは地震が頻繁に起こることは想定しなくて良い」としたうえで、耐震設計する際の基準として、国際基準が2通参照されている。

In general, the UK is a low risk area for earthquakes and it is almost always possible to dismiss the risk from such events on frequency grounds. (中略) Design methods are given in ‘Uniform Building Code, International Conference of Building Officials, USA 1991’ of detailed dynamic analysis based upon the design basis earthquake or ‘DD ENV 1998 Eurocode: Design provisions for Earthquake Resistant Structures (Draft)’ may be used.
http://www.hse.gov.uk/comah/sragtech/techmeasbuilding.htm より

移行期間を経て、現在イギリスも設計基準にユーロコードを採用している。ユーロコード8が耐震設計。


『国際標準・規格等に関する過年度の調査成果の概要』国立研究開発法人土木研究所技術推進本部 より


②実際、大学のシラバス等を見ると、ユーロコード8に準拠した設計を教えていることがわかる。


http://www.city.ac.uk/courses/cpd/seismic-design-of-structures-to-eurocode8#course-detail=0 より


③ユーロコードは、全体で10編58パートから成るが、各国ではそれぞれアネックスが策定・添付され、各国の国家規格(例えば英国のBS 等)として発行される。ユーロコード本文のいかなる部分も変更を加えてはならないことになっているが、各国の主権といえる安全性レベルに係わる係数やパラメータに関しては、各国が独自に設定することとなっているそうだ。
ユーロコード8のイギリス国内版は「BS EN 1998 Eurocode 8」の名で発行されている。発行するBSI(英国規格協会)のウェブサイトには次のような記述がある。「原子力発電所、長スパンの橋、高層建築物を除いては、BS EN 1998がイギリス国内で必要とされることはないだろう」

BS EN 1998 applies to the design and construction of buildings and civil engineering works in seimic regions. The aim of BS EN 1998 is to protect people and limit damage during earthquakes. (中略)It is unlikely that BS EN 1998 needs to be used in the UK, except for special structures (e.g. nuclear structures, long span bridges and tall buildings).
http://shop.bsigroup.com/Browse-By-Subject/Eurocodes/Descriptions-of-Eurocodes/Eurocode-8/ より
Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 金曜日 | TOP | お宮参りの段取りなど »
最新の画像もっと見る

post a comment

Recent Entries | 群馬/東京・設計と博論