ミュンヘンなんて、どこ吹く風

ミュンヘン工科大留学、ロンドンの設計事務所HCLA勤務を経て
群馬で建築設計に携わりつつ、京都で研究に励む日々の記録

景気後退

2008-11-25 12:01:26 | ロンドン・hcla
つい数ヶ月前まで見たことも聞いたこともなかったのに、最近耳にこびりついてきた単語、recession(景気後退)。今朝、地下鉄の駅で配られる無料新聞METROの見出しが、「高所得者に最大45%の所得税課税」というものでした。その一方で、VAT(付加価値税、消費税)が来月から来年末まで2.5%下がって15%になるみたいです。VATはもともと生活必需品には課税されないので、僕の生活にはあまり影響はないかもしれませんが…。バスの運賃が10p安くなったかと思えば、おにぎりが10p高くなったりとか、街ではものの価格に変なバランスが働いてるような気がします。



地下鉄の駅にて、ジェイミー•オリバーによる料理本の広告。「絶品のカレーを食べるよりもイカしたことがひとつだけある…それをつくることだ!誰でも24時間以内に料理できるようになります」 「大臣」が奨励しているのは倹約なのか贅沢なのか。
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W.

2008-11-24 10:04:11 | ロンドン・hcla


「W.」(テキサス風にダブヤと読ませる)という映画を観ました。ジョージ•W•ブッシュ大統領の大学時代からイラク戦争開戦までを追ったオリバー•ストーンによる伝記映画。シリアスな場面ではあえて陽気な音楽を流したり、物語の起伏をなだらかにして、できるだけドラマチックにしない演出がなされていたように思います。プレッツェルを喉に詰まらす場面など、閣僚含め出演者のなりきりぶりはそれだけでおかしいのですが。父との関係が物語の軸でした。放蕩していた青年時代、政治家だった父ブッシュに呼び出されて交わした会話。「何をやっても続かない。いったい何ならできるんだ」「野球は好きかな…」「野球だって満足にプレーもできないじゃないか?監督にでもなると言い出すつもりか?」父ブッシュが大統領に再選を果たせず落選した瞬間に、父の制止を振り切り大統領を目指して政治家を志し始めるW。父(パピー)に認められたい一心で、しかし、重大な決断を下すたびに父ブッシュの幻影に悩まされ続けることになる。淡々と進む物語のつなぎにWの心象風景が挿入される。誰も観客のいない野球場にユニフォームを着て立つW。無人の観客席から聞こえる歓声に腕を上げて応えるW。見えないボールを追って外野を走りナイスキャッチするW。イラク戦争開戦の理由だった大量破壊兵器の情報が誤りだったことがわかり、何を信じていいのかわからなくなるW。夢の中の父親にも、おまえはわたしをがっかりさせたとはっきり言われてしまう。再び、心象風景の無人の野球場。快音とともに外野に伸びる球を追って走るW。落下点に入りグラブを構える。しかし球はいつまでたっても落ちてこない。無人の観客席の前で、自分にだけは見えていた球さえ見失ってしまったWが宙に目を泳がせているところで画面は暗転し「 The End.」の文字。

スタッフロールが始まったとたんに掃除の人が入ってくる映画館ばかりなので嫌になります。それでも気にせず最後まで観ていたら、スタッフロールの後に再びタイトルコールがあって、そこにもうひとネタ入ってました。本編でも言及されていることですけど、だめ押し的な感じで。ご覧になられる方は最後まで観ることをおすすめします。
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マンホールが吹っ飛ぶ

2008-11-23 11:11:05 | ロンドン・hcla
古い話題。それは今から一月半くらい前のことでした。

オフィスの目の前で電気の管がどうやら明け方に破裂(?)して停電してしまったらしいのです。真っ暗なオフィス。



マンホールのふたが数メートル吹っ飛んでいたんです。駆けつけた作業員がまずは囲いをつくって事態を把握しています。



四角いマンホールの周りに立ち尽くす人たち。パソコンも電話も使えない僕らは仕事にならないので作業の様子を見守る。



引きはがされた道路からのぞくレンガ。ロンドン中心部のインフラはヴィクトリア時代のものがまだ使われているらしい。



ところでお気づきかと思いますが、どう考えても、ただ見ているだけの人が多すぎ。6人も必要ないだろ。



結局この日は手書きでできる範囲で仕事をしたり、引っ越しに備えて書類の束を整理したりして、日没とともに業務終了。

翌日の朝には電気は復旧したものの、この日以降、数週間にわたり僕らは掘削機の爆音の中で仕事をすることになったのですが、いまとなってはよい思い出。


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Westfield

2008-11-22 13:56:25 | ロンドン・hcla
今日マドンナとガイ•リッチーの離婚が確定しましたね。僕らが引っ越しした新しいオフィス(まだ一部工事中)の三軒となりにガイ•リッチーが所有するパブがあって、ミーハ-な僕らは金曜日の会社終わりに行くパブを最近はそこに浮気中です。

会社終わりに、ヨーロッパ最大級というふれこみで最近オープンしたアメリカ資本のWestfieldというショッピングモールに行ってみました。ちなみにどこか既視感のあるこの設計は「in house」(Westfield社の店舗設計部門)とのことです。









とにかく大きいので、街にあるお店はだいたいあります。オクスフォードストリートとリージェントストリートとボンドストリートが全部ある感じ。でも逆に言うと、それ以上のものではないので、普段からその3つの通りに行くことのできる人は行かなくてもいい場所かなとも思いました。あと、どこまで行っても100%「売らんかな」ってのはなんだか怖いですね。ささやかな散財をしようと思って出かけたのですが、もうモノなんて何にもいらないって最終的に思ってしまいました。
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UAE

2008-11-21 12:21:46 | ロンドン・hcla
ご無沙汰してます。会社ではコンペ提出したと思ったらまた違うコンペが始まったり、自分でも友人たちとコンペを始めたり、何を書いていいのかわからない感じだったので放置気味でした。ためてもあれなんでまた毎日少しずつ書くようにします。

今日Mさんと仕事じゃない方のコンペの相談がてら、OMAのレクチャー「City in the Desert」を聞いてきました。UAEが戦略的に原油産業から脱却した結果、120年分もの埋蔵量を残したまま現在では儲けの95%は原油以外の産業が担っているということ。でもこの無計画な成長モデル(投機を促す為なら実現不可能な絵さえ描く。公式なマスタープランさえ無視され、現実にできてしまった都市に合わせて書き換えられる)が人口爆発を抱える類似の新興都市にも輸出されると、エネルギーと資源の消費、二酸化炭素排出量的にいって地球はもちませんといった話。OMAの例の正方形の都市計画はそれに対し「サステイナブルな密度」を提示していたとのこと。「私たちの提案は採用されませんでしたが、我らが同胞ノーマン•フォスターが別の場所で実現してくれそうなのでよかったです」と、ちょっと前に話題になった盗用問題とからめてブラックジョークで締めてくれましたが…。数字が並んでいるだけでも絵が浮かぶような「雄弁」なデータをいくつも見ました。レクチャーの中でいみじくも「(UAEによる「公式」発表を指して)これはしかし、a part of the storyで、other part of the storyはかくかくしかじかである 」と何度も言っていましたが、もちろんこのレクチャーも意図的に選択されたa part of storyを見せているわけです。質疑では、この正方形の都市は中心部は魅力的だけど端っこ(壁というか城壁みたいになってる)に住みたい人なんているのかという意地悪な質問が出て、これはあくまで密度のスタディなのでそこまで詳細に設計していませんと困っていましたが、通常都市の先端は成長し揺れ動くものだからそれが正方形の辺ですぱっと規定されてしまっていることからくる違和感なのかなと。

一時間に二桁で人口が増えている「新興の都市」の中で、「唯一東京だけは先進国の都市ですが」と例外扱いしていてあまり触れなかったのが日本人としては印象深かったです。東京は普通じゃないんですね。

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弱い影

2008-11-10 08:51:28 | ロンドン・hcla


引っ越しして空になった旧事務所を引き払うまでの間、hclaともゆかりの深いオランダのアーティストの個展が開かれている。

これはそのひとつ。白いキャンパスに差し込まれた細いワイヤーの立方体。間接照明に照らされて、自分と同じ華奢な線の影を落とす。いくつかある間接照明との位置関係によって影には強弱があって、薄い影はほとんど見えない。でもこうやって手のひらをかざすと、それまで支配的だった影が力を失って、今まで見えていなかった無数の弱い影があぶり出しのように息を吹き返す。目に見えないけれど、そこには確かにあって、ちょっとした人間のしぐさに、かすかに応答して存在を感じさせる、弱い影。
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引っ越し

2008-11-04 09:39:57 | ロンドン・hcla
先週からhclaは新しいオフィスに引っ越し中です(徒歩数分、公園挟んで向かい側の建物に移るだけなんですけど…)。大きな模型を狭い階段室の中で縦にしたり斜めにしたり空間見つけて運びながら今まで気にもとめなかった部分の長さを知ったり(ミーティングルームから引っ越し用のバンに運び込まれるまで模型のボリュームがアクロバティックにたどった軌跡を三次元的に描画できたら、今まで見ていた廊下と違う空間がそこにありそう)、オフィスの中で鎮座していたいろいろなものの重さを身をもって体感したり(本、アルミ製のユニット家具、倉庫の奥から発掘された前時代のガジェット…)。今日ようやく新しい自分の机でほっと一息つけました。
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