ミュンヘンなんて、どこ吹く風

ミュンヘン工科大留学、ロンドンの設計事務所HCLA勤務を経て
群馬で建築設計に携わりつつ、京都で研究に励む日々の記録

雪が降った

2008-10-29 08:56:04 | ロンドン・hcla
今日ロンドンでは雪が降りました。七時くらいに雹が降り出して、そのあと雪に変わりました。今週に入ってからすごく寒いです。僕が身を縮めている横で、ドイツ人たちはなぜか上機嫌ですが。街ではクリスマスの電飾が準備され始めました。
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『芸術家とデザイナー』

2008-10-27 03:28:40 | ロンドン・hcla
ブルーノ•ムナーリの『芸術家とデザイナー』という本を読みました。もし手にできる機会があったらぜひ読んでください。原著は30年以上前に書かれた本ですので、新しい考え方に出会うというよりは、僕らはこういう思想に共感を覚えるような教育をされてきた世代なんだなと再認識するといった感じですが、僕がことあるごとに考えて言葉にしようと思っていたようなことは、だいたいすでにこの本の中でクリアーに言葉にされていると感じました。

この本で取り上げられ比較される「芸術家」と「デザイナー」はいずれも理想的な両極端のモデルとして書かれていますから、実際には、誰もがその中間のどこかに位置していると思うのですけれど、自分の目指したいものはこの定義で言うところの「デザイナー」側にあると再確認しました。ものづくりのきっかけ/よりどころが自分の内側(人生経験etcの不変なもの)にあるか外側(リサーチetcの普遍なもの)にあるかという違いのような気がします。「芸術家」タイプの建築家は、そのひとだけが提供できるオリジナルな世界を目指してものづくりをしているのではないでしょうか。そのプロセスは他人が追体験や口出しできるものではありません。共感することは可能ですが。ジブリミュージアムもポケモン建築もその延長線上にあるものだと思います。本書で言うところのディズニーです。芸術家は自分のつくりたいものをつくり、それを商売にする人がいて、大衆はその「らしさ」を確認し安心感を得るのです。エンターテイメントです。もちろんそういった建築家もいていいのです。ただ、自分の目指すものとは違うなと思うだけです。

大学にいたとき、早熟な友人たちが言っていました。「記念碑的な建築はつくりたくない。いま、に答えを出している建築をつくりたい」「当たり前なことをしたい。普通なことは意外となされていない」。ものづくりにおいて「新しさ」の種はまだまだいっぱい世の中に転がっていて、それを(できれば誰よりも先に)見つけて素直に答えるだけでいいんだと僕も思いたいです。それを手にとるひとは、なぜそれがそうデザインされたのかを容易に理解しプロセスを追体験することができるというような。たとえば「環境」はそれだけでは最終的なデザインを決定できないかもしれませんが、発見されていない新しさの種はまだいっぱい埋まっているのではないかと期待できます。その最前線にいらっしゃるArupのエンジニアの方々がうらやましいです。「デザインはサイエンスだ」という大学時代の先生の言葉は、学部三年生だった僕にとっては衝撃的で、その出会いがあってこんなことを考える人になりました。

ちなみにものをつくるひとであれば誰もが、「芸術家」としての自分と「デザイナー」としての自分を持っているものだと思います。そのどちらがより表に出るかは、置かれた環境やその人の年齢などによっても変わってくることでしょう。だから、「住宅は住むための機械」だと言った人が午前中は自分の好きな絵を描くことに没頭していても、その二面性はなんら不思議ではありません。
Comments (2)
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普通のひとにとって建築って

2008-10-22 07:03:32 | ロンドン・hcla
ARUPのMさんから日経アーキテクチュアの切り抜き(記事をスキャンしたもの)をいただきました。各界の著名人が建築界に提言するという趣旨のようでMさんが送ってくださったのは岡田斗司夫氏のものでした。どう思いますか、と。

60年代の建築(大阪万博)と比較して「キャラクター性が現代建築には足りない」という指摘には、イコノグラフィーだけで語れないのが現代の建築ですよとしか言えませんが、そういったことも含めて建築における言説が「社会全体の話にはなっていない」という指摘はそのとおりだと思います。岡田氏が挑発するように「大衆が受け入れれば勝ち」と建築を流行にのせて消費する必要はありませんが、建築をつくる側が孤高をよしとしていては社会から目を背けることになります。

ロンドンにはOPEN HOUSEという団体があって、一年を通じて一般の方も参加できる建築イベントを開催しています。特に毎年九月の週末に行われるその名もずばりOPEN HOUSEでは、市内の有名無名の設計事務所からボランティアで建築家が参加し、自らの設計した建築を案内します。2日間で実に数百もの建築が開放されます。担当以外の建築家もたまたま通りかかって飛び入りで説明に加わってしまうこともあるようです。参加者には建築家の卵ばかりでなく家族連れやお年よりの姿もあります。人気のある建物は事前に抽選があるほどです。去年僕が参加したときには(知るひとぞ知るマニアックな建築だったのですが)入り口でおばあさんとすれ違って「何もないわ。からっぽよ」と言われました。そりゃたしかに空っぽでしょう。中身じゃなくて入れ物を見せているわけだから。それでも、杖をついたおばあさんまで興味を持って見にくるのです。

岡田氏は「子どもたちが『カッコイイ』と言って、『うちの家をああしたい!』とお父さんに泣いて頼むようになったら面白い」と言います。岡田氏の言うように食玩になって「面白」さを伝えられる建築もあるでしょうが、実際にその場に立たないとわからない感覚や建築を成り立たせている技術をすべてアイコン化して玩具にするのは難しいでしょう。でも伝える努力は必要ですね。

ロンドンを訪ねてくれた友人を僕の好きなロンドンのとある駅に案内していろいろ説明していたら、「そんなこと言われたらなんだかかっこよく見えてきた」と言われてうれしかったことがあります。たとえばこういうことなんじゃないでしょうか。
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忘れられない旅

2008-10-21 07:26:53 | ロンドン・hcla
二泊三日でフランス縦断。ARUPの日本人エンジニアの方たちと連れ立ってコルビュジェ建築を巡る旅に行ってきました。サンドウィッチをくわえながら電車に乗り、ツアーに間に合うために駅から走り、早朝から深夜まで。大の大人(26歳~36歳)がやるような旅ではありませんでしたが、忘れられない思い出になりました。最終日に訪れたラ・トゥーレットは、今後三年間にわたる大改修の始まる直前で、生の空間を肌で体験することができ、無理してでも見に行った甲斐がありました。



モジュロールを象ったものさしを携えたドイツ人学生たちが、館内のいたるところで寸法を測っていました。バカロレアを控えた哲学専攻のフランスの高校生たちが、泊まり込みで勉強するために到着したところでした。かつてここで集団生活し勉学にいそしんでいた僧侶たちは新しい修道院へ各地に散らばっていってしまいましたが、ラ•トゥーレットは今も「学校」として使われつづけていました。
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不便

2008-10-17 03:21:20 | ロンドン・hcla
家のノートパソコンが起動しなくなってしまいました。数ヶ月前から様子はおかしかったのですが。プリンタを買ったとたんにこれです。

追記

起動しようとすると「ピーピッピッ」というエラー音が鳴るので、調べてみたらディスプレイとの接続に何か問題がありそうです。といっても一体型のノートパソコンなので自分では直せないのですが。振動を与えずにそーっと触りながら起動すると、うまくいくことがあります。なんだかばからしいですが、年末に一時帰国するまではこれでしのぐつもりです。
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個と全体

2008-10-14 08:41:31 | ロンドン・hcla
Sackler Crossing, Kew Gardens





ミニマリスト建築家ジョン・ポーソンによる橋。群として見たときの水平方向にゆるやかに湾曲したdirectionは、垂直方向に屹立する要素の集合によって構成されている。小さなベクトルの集合が、全体としては別のベクトルを浮かび上がらせる。個々の要素がどんな方向を向いているかということは、それらをどう並べるかという一階層上の操作によって、巨視的に見たらキャンセルされてしまう。逆に、全体のdirectionを保ちつつ、個々の要素に異なる挙動を与えることも可能か。
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ぶらぶら

2008-10-13 08:29:24 | ロンドン・hcla
大学の同期が出張でロンドンに来ているので、週末一緒に少し回りました。

Davies Alpine House, Kew Gardens









扇状に展開するはずのスクリーンが機能不全に陥っていたのが残念でならない。



Rhizotron and Xstrata Treetop Walkway, Kew Gardens









地上18mの環状遊歩道。溶接されたコールテン鋼。ローテクに見せたハイテク。


Work No.850, TATE BRITAIN



モデルが廊下をひたすら全力疾走する。座・歩・走。速度の違う世界が隣り合う。


TURNER PRIZE 2008, TATE BRITAIN





鑑賞後の「投票所」。今年の審査員には建築家のデイビッド・アジャイもいる。
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定式化できないもの

2008-10-12 07:35:13 | ロンドン・hcla
Lab-CafeのSさんが調査でロンドンにいらっしゃったので、borough、portbello、bricklaneのマーケットを案内して回った。


いろんな種類の「きのこ」まとめて量り売り。borough


portbello通りの床屋の犬。

そのときに聞いた話。電車のダイヤが乱れたとき、運行調整して通常ダイヤに戻すのは人間の職人技なのだという。時々刻々と変わる状況や想定外の出来事をすべてコンピュータで解析することは複雑すぎて、解くための関数が見つからないか解くために無限に時間がかかるため不可能。一方、職人はものごとの重要度を判断して場合の数を減らすことで問題を簡単にし短時間で答えを導く。その取捨選択はセンスである。ブラックボックスである。コンピュータは手順に従って最適解に向かうが、人間のいい加減さや気まぐれはアルゴリズムの手順を超える。答えが必ずしも唯一絶対の最適解である必要がない場合には。「デザイン」もそうなのだろうか。
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へたり

2008-10-10 09:06:57 | ロンドン・hcla


廊下に寝ているのを抱きかかえて部屋に連れて行くと僕のベッドの上でごろごろしたりしてるのですが、大家さんが呼ぶと慌てて部屋を出て行ってしまいます。

会社では先週から新しいコンペのチームが動き出しました。プロジェクトに最初から参加できると全体が見えて発言もしやすいのでやっぱりやりがいがありますね。
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態度の悪さを楽しむ

2008-10-09 10:42:21 | ロンドン・hcla
ミュンヘンの現役AUSMIP生が旅行のついでにロンドンに立ち寄ってくれたので、中華街のWong Keiで一緒にご飯を食べながら、僕がミュンヘンを経てロンドンで働いているいきさつなどを話した。ところでこのWong Kei、態度が悪い(けど人気がある)ことで有名だと同僚から聞いていたので、怖いもの見たさに入ってみた。確かに店員の横柄さは不快を通り越してエンターティンメントの域に達していた。

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