信じられないことだがここで働くのも残り数日。来週の月曜日から自分はここにいない。その日は淡々と近づく。昨年末から断続的に続く豪雨と暴風の影響で竣工までを見届けることはかなわなくなったが、出すべき情報はすべて出したのでここからは僕にしかできることはあまりないとも言える。引き継ぎのためにファイルを整理しながら、一緒に仕事をしたひとのことを思い出したりする。今日は担当中のプロジェクト関係のひとに退職の挨拶メールをした。最初は定型文を参考にドライに要件だけ書くつもりだったが、退職経験のある同僚に絶対書いたほうがいいと言われ、個人的な事情も少しだけ書き添えた。退職は一年前から決めていたこと、プロジェクトの完了のために帰国時期を伸ばしたこと、3月末に両親が渡英するのでプロジェクトを案内したいこと、これから日本で何をするか。
残されたロンドンでの僅かな日々は日常の些細なことにさえ否が応でも特別な意味を与えてくれるので心はいつもざわついているが、噛み締めつつ、矢のように過ぎる日々を過ごしている。そんな日々の中で、先週はとりわけ大きな出来事があった。

土曜日はロンドン市内のパブで僕の送別会が開かれた。自分がロンドンを本当に去るんだという寂しい実感が湧いてくるとともに、ロンドンで素敵な方たちとたくさん出会えたことに感謝の気持ちでいっぱいになる。集まってくれた方々と初めてお会いしたときのことはよく覚えていて、そこからこんなに長いあいだ一緒にいろいろ経験させてもらえることになるとは僕は幸せであった。ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。このような会を企画してくださった新谷さん夫妻、集まってくださったみなさんに改めて感謝。記念の本を頂いたり、マグカップをいただいたり、チョコレートをいただいたり。僕の名前が印字された特注であろうメッセージカードの寄せ書きは家に帰ってからゆっくり読み返して、「おい!帰るな!」なんてメッセージもあったりして、改めていろいろな思いがこみ上げた。SHARISHARISHARIのメンバーからは記念品にモンブランのペンをいただいた。YOSUKE KOMIYAMAの銘入り。ずっしりと重みがあって、導かれるようにすらすらと線が引ける。大切に、大切に、使います。
木曜日昼前、鈴木研究室卒業生に鈴木博之先生の逝去を伝えるメールが送られてきた。奥さんからもほぼ同時に同様のメールが届いていた。突然に思える信じがたい報せにまずは力が抜けて、会社の席を立ちとりあえず外へ。大学院時代のこと、卒業してからのこと、先生と交わした言葉やいろいろなことを思い出して、僕なんかが泣いてもしょうがないんだけど涙が止まらない。偉大な方であるのはもちろんのこと、卒業生のためには時間を割いて話を聞いてくださる限りなく身近な恩師だった。会社に戻り、ホールデンにも逝去のことを伝える。鈴木先生は2009年10月に渡英された際にHCLAに立ち寄ってくださっていた。ホールデンと鈴木先生はドイツと日本での僕の恩師であり、二人は半年違いのほぼ同年齢ということもあって話も盛り上がり、僕は緊張しながらもとてもうれしい瞬間だったのを覚えている。ホールデンは言葉に詰まったあと鈴木先生との思い出を話してくれて、僕がそのような恩師に巡り会え導かれていたことが自分もうれしいと言ってくれて、最後に「I will be thinking about him.(彼のことを考えながら冥福を祈るよ)」と僕の肩を抱いてくれた。

土曜日はロンドン市内のパブで僕の送別会が開かれた。自分がロンドンを本当に去るんだという寂しい実感が湧いてくるとともに、ロンドンで素敵な方たちとたくさん出会えたことに感謝の気持ちでいっぱいになる。集まってくれた方々と初めてお会いしたときのことはよく覚えていて、そこからこんなに長いあいだ一緒にいろいろ経験させてもらえることになるとは僕は幸せであった。ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。このような会を企画してくださった新谷さん夫妻、集まってくださったみなさんに改めて感謝。記念の本を頂いたり、マグカップをいただいたり、チョコレートをいただいたり。僕の名前が印字された特注であろうメッセージカードの寄せ書きは家に帰ってからゆっくり読み返して、「おい!帰るな!」なんてメッセージもあったりして、改めていろいろな思いがこみ上げた。SHARISHARISHARIのメンバーからは記念品にモンブランのペンをいただいた。YOSUKE KOMIYAMAの銘入り。ずっしりと重みがあって、導かれるようにすらすらと線が引ける。大切に、大切に、使います。
木曜日昼前、鈴木研究室卒業生に鈴木博之先生の逝去を伝えるメールが送られてきた。奥さんからもほぼ同時に同様のメールが届いていた。突然に思える信じがたい報せにまずは力が抜けて、会社の席を立ちとりあえず外へ。大学院時代のこと、卒業してからのこと、先生と交わした言葉やいろいろなことを思い出して、僕なんかが泣いてもしょうがないんだけど涙が止まらない。偉大な方であるのはもちろんのこと、卒業生のためには時間を割いて話を聞いてくださる限りなく身近な恩師だった。会社に戻り、ホールデンにも逝去のことを伝える。鈴木先生は2009年10月に渡英された際にHCLAに立ち寄ってくださっていた。ホールデンと鈴木先生はドイツと日本での僕の恩師であり、二人は半年違いのほぼ同年齢ということもあって話も盛り上がり、僕は緊張しながらもとてもうれしい瞬間だったのを覚えている。ホールデンは言葉に詰まったあと鈴木先生との思い出を話してくれて、僕がそのような恩師に巡り会え導かれていたことが自分もうれしいと言ってくれて、最後に「I will be thinking about him.(彼のことを考えながら冥福を祈るよ)」と僕の肩を抱いてくれた。
昼前起床。会社へ。同僚がひとり出社してPartIIIのケーススタディレポートを書いている。
2時からSHARISHARISHARIの大アップデート会。今回はwikihouse (http://www.wikihouse.cc/) からエンジニアのトムをゲストに招いた。
まずはトムからwikihouseの紹介。もともとアイ・ウェイウェイのアートプロジェクトとして始まったが、現在はそこから独立し、プライウッドによる家型ストラクチャーをデザインし部品化できるソフトウェアと加工のためのハードウェアをオープンソースとして開発している(ソフトウェアはSketchupのプラグインとして提供されている)。単発のアートプロジェクトのつもりが、世間にその可能性を「発見」されて、長い潜伏期間を経て再始動したという経緯が面白い。ゆくゆくは実際に家として機能するフルパッケージをwiki化(wikipediaのように、ユーザーが専門的な知識なしに自由に改変できるように)することが目標であるとか。直感的な操作で家をデザインし(現在のところは欲しい空間のサイズ等であるが、パラメータは今後増やされていく)、それを自動で部品化し、CNCあるい3Dプリントを使って現地生産する。今はロンドン市内のシェアオフィス Impact Hub Westinster をベースに、アーキテクトとエンジニアのチームによって開発が進められているそうだ。来月中に一度SHARIメンバーでHubを訪問させてもらえることになった。
つづいてNZホテルチームの最終報告。クライアントに昨秋提出した各ホテル案を、改めてSHARIメンバー全体にも共有する。プロジェクトメンバー4人でNZを訪問できる日も近いか。
つづいて山本くんからハイチでのアートプロジェクトの報告。世界最貧の国と言われるハイチでアートに何ができるのか/できないのか、彼が見たもの感じたものを報告してもらう。事態を直接変えることはできないが、アートを通してひとに伝えることはできる。ハイチでの体験をロンドンでアートとして発表する機会をうかがっているという。
次に、僕からコンペTの紹介。敷地や応募要項をひととおり説明したあと、現在の僕の案を紹介し意見をもらう。興味をもってくれたメンバーには継続的な参加を誘う。セミナーDについてもメンバーと共有したいところだったが、今日のところは簡単な紹介に留める。
最後に堀田くんからHouseO/HouseHプロジェクトの紹介。カランバを使った構造解析を使い達成しようとしているデザインについて。
終了後、参加者14人全員で中華街へ。いつもの店で夕食。僕が1月末で離英するかもしれなかったので、今日のアップデート会は「最後の」という触れ込みになっていた。結局2月末まで留まることになったので、もう一度くらい僕の主催で集まれそうである。今日集まってくれたみなもそれに賛同してくれたのでよかった。
2時からSHARISHARISHARIの大アップデート会。今回はwikihouse (http://www.wikihouse.cc/) からエンジニアのトムをゲストに招いた。
まずはトムからwikihouseの紹介。もともとアイ・ウェイウェイのアートプロジェクトとして始まったが、現在はそこから独立し、プライウッドによる家型ストラクチャーをデザインし部品化できるソフトウェアと加工のためのハードウェアをオープンソースとして開発している(ソフトウェアはSketchupのプラグインとして提供されている)。単発のアートプロジェクトのつもりが、世間にその可能性を「発見」されて、長い潜伏期間を経て再始動したという経緯が面白い。ゆくゆくは実際に家として機能するフルパッケージをwiki化(wikipediaのように、ユーザーが専門的な知識なしに自由に改変できるように)することが目標であるとか。直感的な操作で家をデザインし(現在のところは欲しい空間のサイズ等であるが、パラメータは今後増やされていく)、それを自動で部品化し、CNCあるい3Dプリントを使って現地生産する。今はロンドン市内のシェアオフィス Impact Hub Westinster をベースに、アーキテクトとエンジニアのチームによって開発が進められているそうだ。来月中に一度SHARIメンバーでHubを訪問させてもらえることになった。
つづいてNZホテルチームの最終報告。クライアントに昨秋提出した各ホテル案を、改めてSHARIメンバー全体にも共有する。プロジェクトメンバー4人でNZを訪問できる日も近いか。
つづいて山本くんからハイチでのアートプロジェクトの報告。世界最貧の国と言われるハイチでアートに何ができるのか/できないのか、彼が見たもの感じたものを報告してもらう。事態を直接変えることはできないが、アートを通してひとに伝えることはできる。ハイチでの体験をロンドンでアートとして発表する機会をうかがっているという。
次に、僕からコンペTの紹介。敷地や応募要項をひととおり説明したあと、現在の僕の案を紹介し意見をもらう。興味をもってくれたメンバーには継続的な参加を誘う。セミナーDについてもメンバーと共有したいところだったが、今日のところは簡単な紹介に留める。
最後に堀田くんからHouseO/HouseHプロジェクトの紹介。カランバを使った構造解析を使い達成しようとしているデザインについて。
終了後、参加者14人全員で中華街へ。いつもの店で夕食。僕が1月末で離英するかもしれなかったので、今日のアップデート会は「最後の」という触れ込みになっていた。結局2月末まで留まることになったので、もう一度くらい僕の主催で集まれそうである。今日集まってくれたみなもそれに賛同してくれたのでよかった。
10時起床。RIBA図書館へ。ワックスマンの『The Turning Point of Building』を今週読むべきところまでコピーを取る。2月末までにひととおり読み終わるようにペースを下方修正。残りの時間は関連する本のコーナーでコンペTのスケッチ。去り際にRIBAの本屋に寄ると在庫整理で古い本をセール中。『AD』のヤン・カプリッキーが編集した号と原研哉の『Haptic』を見つけて購入。
1時に図書館を出てROHへ。昨春の初演を見逃したバレエ『Hansel and Gretel』を観る。一昨年の冬にダンサーを引退し新設のポストArtist in Residenceに就任した振付家Liam Scarlettによる初の長編バレエ。舞台は1950年代のアメリカに置き換えられ、主人公の姉弟は、アル中でソファに力無く腰掛けている父と、水商売で日銭を稼ぐ継母、を持つ設定。貧困から一軒家を売りに出すところから物語が始まり、妖怪に誘われて家出をした姉弟は、魔女(少年愛を持つ白髪の男性)に捧げられてしまう。魔女の母親に関するトラウマを利用して脱出するものの、家はすでに売り払われ父母は去ったあと。姉弟は売約済みの看板を裏返し、二人での生活を決意するが、弟が力なくソファに倒れこみ姉が継母のネグリジェを羽織るところで物語は終わる。R-14指定の暗い作品である。小さな劇場なので6人のダンサーの表情の演技まではっきりと見えて人物造形は印象的だったがダンスはあまり印象に残らず。
終演後、食料を調達してから帰宅。セミナーDの全体のストーリーについて考えたあと、コンペTの作業。少し昼寝をしたあと、再びコンペTの作業。
1時に図書館を出てROHへ。昨春の初演を見逃したバレエ『Hansel and Gretel』を観る。一昨年の冬にダンサーを引退し新設のポストArtist in Residenceに就任した振付家Liam Scarlettによる初の長編バレエ。舞台は1950年代のアメリカに置き換えられ、主人公の姉弟は、アル中でソファに力無く腰掛けている父と、水商売で日銭を稼ぐ継母、を持つ設定。貧困から一軒家を売りに出すところから物語が始まり、妖怪に誘われて家出をした姉弟は、魔女(少年愛を持つ白髪の男性)に捧げられてしまう。魔女の母親に関するトラウマを利用して脱出するものの、家はすでに売り払われ父母は去ったあと。姉弟は売約済みの看板を裏返し、二人での生活を決意するが、弟が力なくソファに倒れこみ姉が継母のネグリジェを羽織るところで物語は終わる。R-14指定の暗い作品である。小さな劇場なので6人のダンサーの表情の演技まではっきりと見えて人物造形は印象的だったがダンスはあまり印象に残らず。
終演後、食料を調達してから帰宅。セミナーDの全体のストーリーについて考えたあと、コンペTの作業。少し昼寝をしたあと、再びコンペTの作業。
プロポRの作業が一段楽したので、午前中はホールデンのレクチャーの準備を手伝う。大学での授業、招かれてのレクチャー、ホールデンがこれまでしてきたすべてのレクチャーがデジタル化されたものをホールデンはいつも持ち歩いている。その貴重なハードディスクドライブの中からデータをより分ける。ホールデンが暇さえあればアップデートしているマスタースライドは400ページ近くあるKeynoteで、今回はそこからホールデンと55枚に絞り込んだ。スライドのフッターには、直近の10回分ほどのレクチャーがタイトル・開催地・日付入りで列挙されている。ホールデンが少し申し訳なさそうに、でもニコニコしながら僕の机に来て新しいレクチャー依頼が入ったことを告げると、僕のレクチャー準備は、そのフッターの編集から始まる。タイトルと開催地名は現地語で書くので、フッターには様々なつづりが並ぶ。ホールデンは新しいひとたちに向けて話すことをいつも楽しみにしているので、レクチャー準備はいつも楽しい。
昼飯は新谷さん田中さんに誘われて近所のイタリアンDelfinoへ。僕の離英が近いということで、壮行会的なものに。離英(渡独)が延びたのでまだこれからも会う機会はあるのだろうけど、当初の予定通りやろうということで、餞別として店でいちばんおいしい海鮮パスタをご馳走していただく。群馬の話などひととおりしたあと、ロンドンでやり残したことを3つ挙げてくださいと問われる。考えたこともなかったのだが、意外とすんなり3つは思い浮かんだ。
1つ目は、プロジェクトの始まりから竣工まで見届ける、という経験がひとつしか得られなかったこと。プロジェクトが始まってから4年経っているので、最初から最後まで見れたこと自体が稀有な体験だったし、このプロジェクトを通じて経験できたことはどれも自分にとって新しいことばかりだったが、その経験を踏まえての「次」を経験することができなかった。現場までを担当した人間が経験を還元せずにそのまま去ってしまうのはHCLAの同僚にとってもいいことではないと思うので、プロジェクトの終わりに予定されている会社内レビューを、自分の経験をまとめるためにも有意義に使いたい。
2つ目は、ホールデンを日本に招くことができなかったこと。TUMのホールデンが東工大と共同ワークショップを開いてmicro compact homeを開発していたのは10年以上前。僕がロンドンにいる7年弱の間にもmicro compact homeを建てたいという話が日本からあったりもしたし、機会があれば日本でお世話になった先生とホールデンとで共同ワークショップやセミナーを企画できないかと画策はしていたのだが。
3つ目は、ロンドンで会社を設立すること。ビザが労働ビザから永住権ビザに切り替わったとき、僕はロンドンで起業もできる自由を持つことになった。以来、将来ロンドンでも仕事ができるように、基礎を打ってから帰ろうと考えてきたのだが。
SHARISHARISHARIで出会った仲間たちとの経験は、1つ目のやり残したことをある面では補ってくれた。キネティカアートフェアに連続して参加できたことや、メンバーを変えながら継続して活動してこれたことで。2つ目のやり残したことは、3月半ばに企画中のセミナーDが実現すれば半分くらい達成されるかもしれない。3つ目のやり残したことは、達成に向けて準備中。やり残さずに帰りたい。
午後は現場のプロジェクトに戻り、Metalworkerからあがってきた情報をもとに最後の外装エレメントの詳細を詰める。晩飯休憩を挟んで、夜半前まで作業。
終業後はコンペTの作業。今日敷地調査へ行ってきた父たちからさっそく調査レポートが共有されてきた。
昼飯は新谷さん田中さんに誘われて近所のイタリアンDelfinoへ。僕の離英が近いということで、壮行会的なものに。離英(渡独)が延びたのでまだこれからも会う機会はあるのだろうけど、当初の予定通りやろうということで、餞別として店でいちばんおいしい海鮮パスタをご馳走していただく。群馬の話などひととおりしたあと、ロンドンでやり残したことを3つ挙げてくださいと問われる。考えたこともなかったのだが、意外とすんなり3つは思い浮かんだ。
1つ目は、プロジェクトの始まりから竣工まで見届ける、という経験がひとつしか得られなかったこと。プロジェクトが始まってから4年経っているので、最初から最後まで見れたこと自体が稀有な体験だったし、このプロジェクトを通じて経験できたことはどれも自分にとって新しいことばかりだったが、その経験を踏まえての「次」を経験することができなかった。現場までを担当した人間が経験を還元せずにそのまま去ってしまうのはHCLAの同僚にとってもいいことではないと思うので、プロジェクトの終わりに予定されている会社内レビューを、自分の経験をまとめるためにも有意義に使いたい。
2つ目は、ホールデンを日本に招くことができなかったこと。TUMのホールデンが東工大と共同ワークショップを開いてmicro compact homeを開発していたのは10年以上前。僕がロンドンにいる7年弱の間にもmicro compact homeを建てたいという話が日本からあったりもしたし、機会があれば日本でお世話になった先生とホールデンとで共同ワークショップやセミナーを企画できないかと画策はしていたのだが。
3つ目は、ロンドンで会社を設立すること。ビザが労働ビザから永住権ビザに切り替わったとき、僕はロンドンで起業もできる自由を持つことになった。以来、将来ロンドンでも仕事ができるように、基礎を打ってから帰ろうと考えてきたのだが。
SHARISHARISHARIで出会った仲間たちとの経験は、1つ目のやり残したことをある面では補ってくれた。キネティカアートフェアに連続して参加できたことや、メンバーを変えながら継続して活動してこれたことで。2つ目のやり残したことは、3月半ばに企画中のセミナーDが実現すれば半分くらい達成されるかもしれない。3つ目のやり残したことは、達成に向けて準備中。やり残さずに帰りたい。
午後は現場のプロジェクトに戻り、Metalworkerからあがってきた情報をもとに最後の外装エレメントの詳細を詰める。晩飯休憩を挟んで、夜半前まで作業。
終業後はコンペTの作業。今日敷地調査へ行ってきた父たちからさっそく調査レポートが共有されてきた。
今日も喉が痛い。終日プロポRの作業。昨日引いたマスタープランの図面に続いて、ホールデンと相談しつつ基準階平面図を描く。終業後、RIBAの図書館へ。父とのコンペTのリサーチ。イギリスにも同種の建物は存在するが、関連する書籍はそれほど多くなかったので、ひととおり目を通して気になる情報をスキャンしつつアイデアをスケッチ。帰宅後、コンペTの作業。父が送ってくれた敷地の写真を航空写真と照らしあわせて見つつ、周辺環境を理解する。
現場のプロジェクトの竣工日の都合上、2月末まではロンドンに留まることになった。大家さんに退去日の変更を伝える。ドイツ滞在の期間は短くなってしまうが、コンペTに落ち着いて取り組めるのでよしとするか…。
現場のプロジェクトの竣工日の都合上、2月末まではロンドンに留まることになった。大家さんに退去日の変更を伝える。ドイツ滞在の期間は短くなってしまうが、コンペTに落ち着いて取り組めるのでよしとするか…。
終日プロポTの作業。模型製作を外注しているモデルメーカーに図面を供給する。プレゼンのA0ボードを制作する。昼休み、和食で体力回復。帰宅後、奥さんから絵葉書が届いているのを見つける。先日送った誕生日プレゼントのことが書いてあった。


今日から朝の目覚ましのかけ方を少し変えてみた。いつもよりすっきり起きられた気がした。終日プロポRの作業。同僚がホールデンとすでにスタディしてあるボリュームを平面図に清書し、ランドスケープを描き加えていく。風邪薬が効いている間は喉の痛みが収まるので用法どおり4時間毎に飲む。帰宅後、コンペTの作業。配布された資料を読みつつ、敷地をGoogleMapで確認。同種物件の事例群に目を通してイメージをつくる。
今住んでいる部屋がWifiの電波が入りづらく難儀していたのだが、今日ようやくにして、電波が入りやすいパソコン位置を発見。
今住んでいる部屋がWifiの電波が入りづらく難儀していたのだが、今日ようやくにして、電波が入りやすいパソコン位置を発見。
9時起床。予定通りRIBA図書館へ。コンラッド・ワックスマン(Konrad Wachsmann)の『The Turning Point of Building: Structure and Design』を読み進める。今日はPart2の始めから。閉館後、SOHOのCay Treで昼ごはんを食べたあと、Camperで靴を買う。今はいている靴よりもずっと足にフィットしたものを見つけることができてよかった。一旦家に帰ってからもう一度出かけて、近くのCostaで『The Turning Point...』のモデュラーコーディネーションに関する一章を全訳してみる。帰宅して夕食のあと、敷地写真を見つつ、父とのコンペTの資料を読み始める。
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Part 2は本書の核心に向かう章。工業化・機械・大量生産に関するワックスマンの総括に続いて、モジュラーコーディネーションとモジュールの精査が始まる。ワックスマンは、技術者でありながら原理主義的/神秘主義的な一面を持った人物であり、オーバースペックなまでに汎用性を高めたユニバーサルジョイントとスペースフレームの開発に一生を捧げた。以下、『10+1』から引用。
ところで、組み合せの自由度をどのような範囲で考えたとしてもひとつの技術的課題が浮上することに変わりはない。それは部品の互換性という問題である。もちろん、これは部品ジョイントのディテールの問題にほかならない。そして、ジョイントの互換性を突き詰めていけばある理念型に行き着くことになる。「ユニヴァーサル・ジョイント」というアイデアである。例えば、建物の構造部材を考えてみよう。最も複雑な加工作業はジョイント部分に集中するが、それが一種類で済むならば生産性は飛躍的に向上しよう。その一方で、部材同士を自由な角度で接合できるとすれば、建築物の形を思いのままに操作することもできる。部分の量産と全体の個別性の両立。ユニヴァバーサル・ジョイントという考え方はこの問題の解答としては模範的とさえ思えてくる。おそらく、こうしたアイデアを最も追求した人物がコンラッド・ワックスマンである。彼はスペース・フレームを最初に開発した建築家として知られるが、じつにさまざまなユニヴァーサル・ジョイントを考案している。一見するとそれらは建築物の一部とは思えないほどの精妙な装置であり、そこにはさまざまな建物に適用可能な高い汎用性が盛り込まれていた。しかし、それらが普及することはない。建築物のほとんどの部初が直角に接合される以上、彼のジョイントは明らかにオーバースペックなのである。ワックスマンのディテールは普遍性を目指したがゆえに極めて特殊性を帯び、かえって技術的には閉じてしまったのであった。
建築部品に宿るもの | 佐藤考一 『10+1』 No.16 (ディテールの思考──テクトニクス/ミニマリズム/装飾主義)
コンラッド・ワックスマンというユダヤ系の技術者がスペースフレームの開発に一生を捧げるのですが、永遠に延びていく、どこまでも地球的スケールで延びていく数学の原理を追求します。ユダヤ人特有の原理主義みたいなものがあると思うんですけれど、無限に延びていくストラクチャーはないのか。でも結局使われたのは写真にある飛行機の格納庫です。日本においては丹下健三先生の一九七〇年の大阪万博の大屋根で、完全にワツクスマンの原理が実現されました。コンラッドウックスマンはちょっと変なところがある人で、無限に延びていく単位のための接合部、Aという物質とBという物質をつなぎ合わせる接合部の探求に一点集約型に集約していく人です。そういう原理を求めていき、神秘主義的な錬金術師みたいな手つきがディテールなどに出てくる。コンラッド・ワックスマンの接合部に関するスケッチ、トライアルです。非常に錬金術師的です。
開放系技術について | 石山修武 『10+1』 No.42 (グラウンディング──地図を描く身体)
さて、ここから『The Turning Point of Building』要約。(しばらくは不定期でブログ上に記録していくが、もう少し進んだらブログ外の場所にアーカイブしようと思っている。)
「14. The influence of industrialization」 要約
これまで建築で考慮されてきたform・order・planningに加えて、工業化が建築にもたらす科学的・技術的・経済的・社会的影響も無視できない。新しい社会に生まれた新しい要求と姿勢に対して、本来持つポテンシャルを活かしきれていない。工業化がもたらした技術的な精密さ・品質・正確さと、その可能性とは。
「15. Machines and massproduction」 要約
機械・機械の連なり・自動化された工場が、大量の資本とエネルギーを消費する、大量につくってこそ経済的な大量生産方式。それは手仕事が単に巨大化もしくは機械化されたものではない。道具(tool)は職人(Artisan)を引き継いだ。tool maker・machine builder&mechanics が現代の重要なクラフトマンたちである。そして道具製作者(tool maker)はユニバーサルクラフトマンである。道具をつくることによって、実際には製品をつくることなく、実質的には製品をつくっている。道具がつくられることによって、それまでの様々な分野にわかれていたクラフトマンは道具製作者に置き換えられた。
オリジナルな制作物としての道具。道具がネガとなり、ポジとしての複製品がつくられる。それは写真になぞらえられる。工業化は、生産と製品がネガポジとして一体であることを前提としている。そして、道具は自動化されてマシンの一部分としても働く。道具製作者は、匿名に、そして実際の製品に触れること無く、道具をつくることによって、クラフトマンの象徴だった偉大なる制作行為を達成するのである。
偉大なるクラフトマンによって発展し使用されてきた道具によって人類の歴史は決定されてきた 今もまたそうした道具の進化によって文明化の歴史に貢献できるのである。複雑であるか単純であるかの差異は改めて評価され直す必要がある。機械にとってはそれらに対する対応はニュートラルであるから。「simplicity through complexity」はもはや過去の遺物ではなく、工業化の前進における最も大きな可能性のひとつである。
現場では、マテリアルにかかわらず(それまではマテリアルごとに違うクラフトマンがいたが)、ユニバーサルツールメーカーのように、ユニバーサルエレクターが必要とされる。伝統的な測量道具も必要もない、部品そのものが正確にコントロールされて生産され、そのコントロールされた部材の寸法によって現場もコントロールされるのだから。ユニバーサルエレクターに求められるスキルは、比較的大きく壊れやすいプレファブ部材を運び・動かし・立ち上げることである。
「16. Modular coordination」 全訳
同一の部品の大量生産に由来するその秩序あるシステムは、表面、物体、空間を決定する。それらは有機的にお互いが関係しあっているべきであり、またその建物に直接属さない部品に対しても有機的に関係しているべきである。
これらの前提はモデュラーコーディネーションのアイデアを生じさせる。それは、寸法、測量方法、比率の決定、極小の構成要素から建物全体まですべての寸法を測ること、への厳密な理論的/実質的研究の成果を採用したものである。
モデュラーコーディネーションシステムは長方形や平坦な面にだけ関係しているわけではなく、一般的な空間、体積、点、線、面、物体にも関係している。それらが平面に投影されていようが空間に投影されていようが、複合的な曲線で特徴付けられていようが、構わない。そのモデュラーコーディネーションシステムは、取り付け(インストール)、接合部の配置、機器や可動部分の寸法をも規定する。いくつかの点で、抽象的な意味においては、時間や動きをも決定する。
モデュラーコーディネーションの重要な側面は、許容誤差(tolerance)の決定である。技術の進展がより大きな厳密性を可能にし、許容誤差のコントロールは工業化の重大な課題のひとつとなっている。
問題はモルタルジョイントの大まかな寸法ではもはやないのだから、部品間の容認できる「あそび」は継続的に小さくなっているところだ。完成した同一の部品が大量に組み合わせられた時、そこには、製造誤差によるたいへん小さな寸法上のズレや、温度や湿度の変化または応力による反りや変形の結果としての材料の寸法変化、が集積している。科学技術、たとえば確率係数解析、材料膨張の調査、実験室での試験、は寸法や形状の変化を許容するために必要な許容誤差の決定のために利用されている。とりわけ、これらの研究は、工場で組み立てられる個々の構成要素(コンポーネント)、すべての完成した建物の構成要素(エレメント)、現場における組み立てに関係している。
しかしながら、許容誤差の研究を、竣工後の建物において荷重や風・振動・温度などによって自然に引き起こされる、竣工後の変形・たわみ・ずれまで拡張することはとても重要である。それゆえ、モデュラーコーディネーションシステムは許容誤差のスケールを想定する。それは、モデュールを開発する際に、寸法上の極小/極大値を決定するために利用できる。
「17. Modules」 要約
モデュールは抽象的で原理的な寸法単位である。四則演算によって、与えられたモデュール則における幾何学的システムを数字として決定する。垂直と水平など、ある方向に関するモデュールが、別の方向に対しては成立しない/無関係に存在することはありうる。しかし、あらゆる方向に対して成立する三次元的なユニバーサルモデュールを考案することが理想である。モデュールの決定には、様々な領域の調査を必要とするが、ユニバーサルモデュールは次のようなカテゴリーのモデュールのいくつかあるいはすべてをつなぎ合わせるような相互関係から開発されなければならない。
The material module
The performance module
The geometry module
The handling module
The structural module
The element module
The joint module
The component module
The tolerance module
The installation module
The fixture module
The planning module
ここで、章の最後に3つの例示が置かれる。人体の比例関係、古代の神殿にみられる黄金比、ゴシックのスケールを表した中世の神秘的なダイアグラム。
次章以降、ワックスマンは上で挙げられたそれぞれのモジュールについて1つずつ検討していく。
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Part 2は本書の核心に向かう章。工業化・機械・大量生産に関するワックスマンの総括に続いて、モジュラーコーディネーションとモジュールの精査が始まる。ワックスマンは、技術者でありながら原理主義的/神秘主義的な一面を持った人物であり、オーバースペックなまでに汎用性を高めたユニバーサルジョイントとスペースフレームの開発に一生を捧げた。以下、『10+1』から引用。
ところで、組み合せの自由度をどのような範囲で考えたとしてもひとつの技術的課題が浮上することに変わりはない。それは部品の互換性という問題である。もちろん、これは部品ジョイントのディテールの問題にほかならない。そして、ジョイントの互換性を突き詰めていけばある理念型に行き着くことになる。「ユニヴァーサル・ジョイント」というアイデアである。例えば、建物の構造部材を考えてみよう。最も複雑な加工作業はジョイント部分に集中するが、それが一種類で済むならば生産性は飛躍的に向上しよう。その一方で、部材同士を自由な角度で接合できるとすれば、建築物の形を思いのままに操作することもできる。部分の量産と全体の個別性の両立。ユニヴァバーサル・ジョイントという考え方はこの問題の解答としては模範的とさえ思えてくる。おそらく、こうしたアイデアを最も追求した人物がコンラッド・ワックスマンである。彼はスペース・フレームを最初に開発した建築家として知られるが、じつにさまざまなユニヴァーサル・ジョイントを考案している。一見するとそれらは建築物の一部とは思えないほどの精妙な装置であり、そこにはさまざまな建物に適用可能な高い汎用性が盛り込まれていた。しかし、それらが普及することはない。建築物のほとんどの部初が直角に接合される以上、彼のジョイントは明らかにオーバースペックなのである。ワックスマンのディテールは普遍性を目指したがゆえに極めて特殊性を帯び、かえって技術的には閉じてしまったのであった。
建築部品に宿るもの | 佐藤考一 『10+1』 No.16 (ディテールの思考──テクトニクス/ミニマリズム/装飾主義)
コンラッド・ワックスマンというユダヤ系の技術者がスペースフレームの開発に一生を捧げるのですが、永遠に延びていく、どこまでも地球的スケールで延びていく数学の原理を追求します。ユダヤ人特有の原理主義みたいなものがあると思うんですけれど、無限に延びていくストラクチャーはないのか。でも結局使われたのは写真にある飛行機の格納庫です。日本においては丹下健三先生の一九七〇年の大阪万博の大屋根で、完全にワツクスマンの原理が実現されました。コンラッドウックスマンはちょっと変なところがある人で、無限に延びていく単位のための接合部、Aという物質とBという物質をつなぎ合わせる接合部の探求に一点集約型に集約していく人です。そういう原理を求めていき、神秘主義的な錬金術師みたいな手つきがディテールなどに出てくる。コンラッド・ワックスマンの接合部に関するスケッチ、トライアルです。非常に錬金術師的です。
開放系技術について | 石山修武 『10+1』 No.42 (グラウンディング──地図を描く身体)
さて、ここから『The Turning Point of Building』要約。(しばらくは不定期でブログ上に記録していくが、もう少し進んだらブログ外の場所にアーカイブしようと思っている。)
「14. The influence of industrialization」 要約
これまで建築で考慮されてきたform・order・planningに加えて、工業化が建築にもたらす科学的・技術的・経済的・社会的影響も無視できない。新しい社会に生まれた新しい要求と姿勢に対して、本来持つポテンシャルを活かしきれていない。工業化がもたらした技術的な精密さ・品質・正確さと、その可能性とは。
「15. Machines and massproduction」 要約
機械・機械の連なり・自動化された工場が、大量の資本とエネルギーを消費する、大量につくってこそ経済的な大量生産方式。それは手仕事が単に巨大化もしくは機械化されたものではない。道具(tool)は職人(Artisan)を引き継いだ。tool maker・machine builder&mechanics が現代の重要なクラフトマンたちである。そして道具製作者(tool maker)はユニバーサルクラフトマンである。道具をつくることによって、実際には製品をつくることなく、実質的には製品をつくっている。道具がつくられることによって、それまでの様々な分野にわかれていたクラフトマンは道具製作者に置き換えられた。
オリジナルな制作物としての道具。道具がネガとなり、ポジとしての複製品がつくられる。それは写真になぞらえられる。工業化は、生産と製品がネガポジとして一体であることを前提としている。そして、道具は自動化されてマシンの一部分としても働く。道具製作者は、匿名に、そして実際の製品に触れること無く、道具をつくることによって、クラフトマンの象徴だった偉大なる制作行為を達成するのである。
偉大なるクラフトマンによって発展し使用されてきた道具によって人類の歴史は決定されてきた 今もまたそうした道具の進化によって文明化の歴史に貢献できるのである。複雑であるか単純であるかの差異は改めて評価され直す必要がある。機械にとってはそれらに対する対応はニュートラルであるから。「simplicity through complexity」はもはや過去の遺物ではなく、工業化の前進における最も大きな可能性のひとつである。
現場では、マテリアルにかかわらず(それまではマテリアルごとに違うクラフトマンがいたが)、ユニバーサルツールメーカーのように、ユニバーサルエレクターが必要とされる。伝統的な測量道具も必要もない、部品そのものが正確にコントロールされて生産され、そのコントロールされた部材の寸法によって現場もコントロールされるのだから。ユニバーサルエレクターに求められるスキルは、比較的大きく壊れやすいプレファブ部材を運び・動かし・立ち上げることである。
「16. Modular coordination」 全訳
同一の部品の大量生産に由来するその秩序あるシステムは、表面、物体、空間を決定する。それらは有機的にお互いが関係しあっているべきであり、またその建物に直接属さない部品に対しても有機的に関係しているべきである。
これらの前提はモデュラーコーディネーションのアイデアを生じさせる。それは、寸法、測量方法、比率の決定、極小の構成要素から建物全体まですべての寸法を測ること、への厳密な理論的/実質的研究の成果を採用したものである。
モデュラーコーディネーションシステムは長方形や平坦な面にだけ関係しているわけではなく、一般的な空間、体積、点、線、面、物体にも関係している。それらが平面に投影されていようが空間に投影されていようが、複合的な曲線で特徴付けられていようが、構わない。そのモデュラーコーディネーションシステムは、取り付け(インストール)、接合部の配置、機器や可動部分の寸法をも規定する。いくつかの点で、抽象的な意味においては、時間や動きをも決定する。
モデュラーコーディネーションの重要な側面は、許容誤差(tolerance)の決定である。技術の進展がより大きな厳密性を可能にし、許容誤差のコントロールは工業化の重大な課題のひとつとなっている。
問題はモルタルジョイントの大まかな寸法ではもはやないのだから、部品間の容認できる「あそび」は継続的に小さくなっているところだ。完成した同一の部品が大量に組み合わせられた時、そこには、製造誤差によるたいへん小さな寸法上のズレや、温度や湿度の変化または応力による反りや変形の結果としての材料の寸法変化、が集積している。科学技術、たとえば確率係数解析、材料膨張の調査、実験室での試験、は寸法や形状の変化を許容するために必要な許容誤差の決定のために利用されている。とりわけ、これらの研究は、工場で組み立てられる個々の構成要素(コンポーネント)、すべての完成した建物の構成要素(エレメント)、現場における組み立てに関係している。
しかしながら、許容誤差の研究を、竣工後の建物において荷重や風・振動・温度などによって自然に引き起こされる、竣工後の変形・たわみ・ずれまで拡張することはとても重要である。それゆえ、モデュラーコーディネーションシステムは許容誤差のスケールを想定する。それは、モデュールを開発する際に、寸法上の極小/極大値を決定するために利用できる。
「17. Modules」 要約
モデュールは抽象的で原理的な寸法単位である。四則演算によって、与えられたモデュール則における幾何学的システムを数字として決定する。垂直と水平など、ある方向に関するモデュールが、別の方向に対しては成立しない/無関係に存在することはありうる。しかし、あらゆる方向に対して成立する三次元的なユニバーサルモデュールを考案することが理想である。モデュールの決定には、様々な領域の調査を必要とするが、ユニバーサルモデュールは次のようなカテゴリーのモデュールのいくつかあるいはすべてをつなぎ合わせるような相互関係から開発されなければならない。
The material module
The performance module
The geometry module
The handling module
The structural module
The element module
The joint module
The component module
The tolerance module
The installation module
The fixture module
The planning module
ここで、章の最後に3つの例示が置かれる。人体の比例関係、古代の神殿にみられる黄金比、ゴシックのスケールを表した中世の神秘的なダイアグラム。
次章以降、ワックスマンは上で挙げられたそれぞれのモジュールについて1つずつ検討していく。
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