スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

ノーベル賞の晩餐会

2006-12-12 09:04:52 | スウェーデン・その他の社会
<晩餐会>


コンサートホールでの授与式は17:45ごろに終了し、参加者はストックホルム市庁舎へと移動する。距離にして1km弱。タクシーで移動するのか、地下鉄で移動するのか、貸し切りバスで移動するのか、はたまた徒歩でぞろぞろと歩道を歩くのか、詳しいことは知らない。

19時には1250人に上る参加者が、貴賓を除いて、市庁舎の大広間Blåhallenに着席している。(“青の広間”と呼ばれるが、設計者は結局、裸のレンガのままのほうが美しいと考え、青く塗られなかった。)

貴賓というのは、広間中央の長机に着席する人々で、7人の受賞者とその配偶者に加え、国王一家や政治家などが席を連ねる。今年は、新首相Fredrik Reinfeldtその妻Filippa(ストックホルム郊外・Täby市市長)、外相Carl Bildt、国会議長Per Westerbergがここに含まれる。その他の人々はよく分からないが、おそらくノーベル財団や科学アカデミー、または王室に関係する人々だろうか? こうして、この貴賓席に着くのは総勢40人になる。男女が交互に座る。

さて、その他の参加者はこの貴賓席の左右の長机に所狭しと座っていく。一人一人の受賞者は自分のほかに16人を招待することができる。両親であったり、子供であったり、友人であったり、同僚であったりする。その他、以前の受賞者の一部はノーベル財団によって招かれている。さらに、大学関係者や大企業の社長(たとえばVolvo)も招かれているし、貴賓席には座らないものの、若干38歳の財務大臣Anders Borgや、新文化大臣(この前任者はスキャンダルのためわずか10日で辞任)もいるほか、スウェーデンの国政政党7党の党首も招かれている(Göran Perssonは手術の直後で欠席)。

さらに毎年限られた数の席が大学生にも割り当てられる。もちろん席の獲得は競争になる。だから、主要大学の学生自治会では「くじ」を販売して、これを買った人の中から抽選で選んでいるようだ。(あるウプサラ法学部の学生はくじを30票近く買って、見事席を得たとか。ちなみに1票は50クローナ) そもそも、このノーベル賞は学問の成果を祝賀するイベントなので、スウェーデン各地の大学から大学自治会関係者が多数、参加している。かれらの正装は、燕尾服に白い学生帽、そして青と黄色(スウェーデン色)のタスキである。

さて、ストックホルム市庁舎を訪れたことがある人なら分かるように、Blåhallenもそんなに大きくない。ここに1250人をギュウギュウ詰めにするのはある種の芸術とでも言えそうだ。

19時過ぎに貴賓が入場する。二階から広間のド真ん中に連なる階段を伝って下りてくる。そして、着席。そして、国王がシャンパンを片手に、ノーベルを讃えた乾杯を行う。

19時も20分ごろを回ると、続々と食事が運び込まれる。白い正装をしたウェーターやウェートレスが食事を片手に、2階から階段を伝って行進してくる。彼らは貴賓席に給仕する。他の席に給仕するウェーターは広間の横のほうから登場して、次々と手際よく1000人を超えるゲストに食事を配膳する。

その隣のちょうだい。そっちのほうが大きそうだから・・・


さて、普段は市庁舎であるこの建物のどこに、これだけの食事を調理したり、盛り付けしたりするスペースがあるのか? 実は、2階にあるGyllene Salen(黄金の広間)が、即席のキッチンとして使われているのだ。調理自体はどこか別のところでやるのかと思うが、配膳する際にはこの黄金の広間で盛り付けなどの準備をして、青の広間に運ぶようだ。(ちなみに、この黄金の間は、食事が終わるとダンス・ホールとして使われるので、デザートの配膳が終わると、この即席キッチンはすぐに片付けられなければならないのだ)

前菜が終わると、主菜が運び込まれるが、合間合間には声楽や演劇などのエンターテイメントが行われる。今年は創作ダンスのようなものが多かった。

テレビ中継は、この間もずっと行われる。ホールでの晩餐会を斜め上から撮影して、今年は誰と誰が隣同士で座ってるか、とか、今年の王室一家のファッションはどうか、とか、今年のメニューのポイントは何か、など、ありとあらゆるネタを紹介する。もちろん、ホールの光景だけでは時間が持たないので、ノーベル賞受賞者に関するさまざまなルポタージュを合間に交える。

22時を回ると、デザートが運び込まれる。受賞者は各部門ごとに代表して謝辞を述べる。そして、22時半を回るころには食事の部が終了するのだ。貴賓は一同に退席し、それに連なる形で他のゲストも少しずつ、席を立って行き、2階の「黄金の間」へと移動する。ここで、ダンスが始まるのだ。(この時、国王は「王子のギャラリー」で、受賞者に対して改めてレセプションを行う)演奏は、ウプサラ大学の学生オーケストラ。


宴もたけなわ、テレビ中継は23時50分をもって終了する。ゲストの多くもこのころには市庁舎を後にしている。しかし、受賞者をはじめ、まだまだエネルギーがある人向けに、二次会も用意されているのだ。今年は、二次会の担当はストックホルム商科大学(Stockholm School of Economics)だったとか。