食堂かたつむり | |
小川 糸 | |
ポプラ社 |
ある日、アパートに帰ってみると突然インド人の恋人が、家財道具とともに消えていた。
唯一残っていた、祖母の遺品ともいえるぬか床を抱えて倫子は、故郷に戻ってくる。
プロの料理人を目指していた倫子は、実家の倉庫を借りて、小さなレストラン、「食堂かたつむり」をオープンする
一日一組だけのお客さん。
予約を受けるときに、好みや事情などをじっくり聞き、その人に心から喜んでもらえる料理を決めるというスタイルの店。
最初のお客様は、開店準備を手伝ってくれた近所の熊さん。
自慢のザクロカレーで熊さんを感動させた翌日奇跡が起こる。
出て行ったアルゼンチン人の奥さんが戻ってきたのだ。実は忘れ物と取りに来ただけだったのだけれど、一目でも会いたいと思っていた熊さんは、倫子の料理を食べたために起こった奇跡だと信じる。
そして、隣に住む愛人を亡くして以来、ずっと喪に服しているお妾さんを元気にしてやってほしいと連れてくる。
一人で、ゆっくり料理を味わったお妾さんにも奇跡が起こる。
亡くなった相手の男性が夢に現れて、天国で再開できるまでの人生は楽しく暮らすようにと言ってくれたというのだ。
そんなこともあり、かたつむりで食事をすると願いがかなうといううわさが広がり、店は少しづつ順調に行くようになった。
クライマックスは、倫子の母親ががんになり、手術を受けた病院で若い頃結婚の約束をしながら離れ離れになり待ち続けていた恋人と再開して結婚したあとの、披露宴での食事。
余命いくばくもない母が、本当にかわいがっていたペットの豚を料理するように彼女に頼む。
メルヘンな感じで進んで来た話が突然、”お子様にはお見せできません”シーンに切り替わります。
この本を読みながら思い出したのが、、「蛇とピアス」。
あの小説では、セックスがこれでもかこれでもかと描かれていて、人が生きるのに、セックスがそれほど重要なのか・・・ということがどうしても理解できない私には、小説も全く???でした。
性欲よりは食欲の方が少し読みやすいのですが、ここまでの食や料理へのこだわりにはどうしても違和感を感じてしまうのです。
どちらももっと単純なもののはずなのに、意味とか価値を求めすぎというか、頭でっかちというか。
この本の良さが、出てくる素晴らしい料理の数々にあるのか、その裏にあるのか・・・。
良くわからない1冊でした。