草の花―俳風三麗花 | |
三田 完 | |
文藝春秋 |
俳句と句会をモチーフにした小説。
こういうのは初めて読みました。
昭和十年、東京女子医学専門学校の学生だった壽子は、卒業と同時に大連の病院へ赴任することになった。
それまで彼女が通っていた東京日暮里で行われる句会では、彼女を送るための引鶴を題に皆が句を作って送り出す。
下関から大連に向かう船で、川島芳子と出会い、その縁で、大連では甘粕正彦と知り合いになる。
大連の病院でも、句会を催し、それがきっかけとなり皇帝溥儀の御前で、句会を催すことになる。
この句会には東京での仲間である、芸者の松太郎や夫の不義に悩むちゑも参加することになり、3人が大連で再開し、
それぞれのその時の人生を句に著す。
小説の背景にはもちろん、戦争があるのですが、その悲痛さを前面に出すことなく、物語が進んでいきます。
歴史上の人物といってもいい、川島芳子や、甘粕正彦、作家の永井荷風などが登場することで、逆に物語にリアリティはなくなるのですが、その名前だけで時代を象徴するという効果はありました。
自然を詠む俳句は、戦争と対局にあるように思っていたのですが、そういう時代でも、俳句を作り続けて生きた、一般の人たちの姿が新鮮でした。
また、何度も出てくる句会の様子から、一つの言葉とじっくり向き合う俳句は本当にいいなぁと感じました。
私もきっかけがあったら始めたいなぁ・・・・。
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