核がなくならない7つの理由 (新潮新書) | |
春原 剛 著 | |
新潮社 |
核がなくならない7つの理由として挙げられていたのは以下。
理由1 「恐怖の均衡」は核でしか作れない
理由2 核があれば「大物扱い」される
理由3 「核の傘」は安くて便利な安全保障
理由4 オバマに面従腹背する核大国
理由5 絶対信用できない国が「隣」にあるから
理由6 「ゆるい核」×「汚い爆弾」の危機が迫る
理由7 クリーンエネルギーを隠れ蓑にした核拡散
タイトルも章立ても、1つの結論に向かって整理されているように見えるのですが、、軍事にも国際関係にも全く疎い私にはすべては理解できず、ちょっと自分の頭の整理のために、軽く読み直してみました。
理由1は、戦後の核をめぐる米ソの戦略、政略の経緯を丁寧に説明してあるが、だから、将来はなくならない理由というの論理自体はわからないことはないが、ちょっと弱い。
理由2の、北朝鮮とミャンマーに対する、米国の対応の違いを見ればあきらかという理屈は、わからなくもない。
理由3は、これも、日本や韓国といった国は、核保有国ではないが、アメリカの核の傘の下にいて、ヨーロッパの各国も同じということを説明されているが、「便利」はともかく、「安い」というところへの説明があまりなかったような気がする。
理由4 もう、何が書いてあったかも思い出せない・・・。読み直す気にもなれない。(汗)
理由5 ここはとてもわかりやすい。米ソは関係ない、紛争の種のある地域で、隣の国が持っているなら自分の国も持っておこうというわけ。隣の国が放棄しないのに、自分たちから放棄することはないということで、インドとパキスタンや、イスラエルとイランなどの事情をあげている、理由1の歴史は、米ソが東西国家の代表として核の軍拡を繰り広げたが、これの地域限定版。
理由6 米ソの核兵器削減や、核不拡散条約などにより、戦略的な核の生産や保有数拡大は難しくなったが、旧ソ連の核兵器や技術者などが世界に拡散しているということで、ここもわかるような気がしました。
理由7 よく言われている、原発が世界に広まるということは、核兵器を作るために必要な、プルトニウムの濃縮技術が世界に広がるということ。
でも、結局、「何故なくならないのか」という理由として、ああその7つだったね!とスッキリできない。
これは、たぶん、自分の読解力と予備知識の無さは置いておいて、やはりタイトルと、本の内容のミスマッチがあるのではないかなぁと思います。
とてもまじめに取材されて、経緯などを丁寧に書かれているところは好感が持てるのですが、私のような素人でも飽きずに最後まで興味を持って読ませるための努力が少し足りないような気がしたのです。
もちろんお前のような素人を相手にしていない! というのであれば、それはそれで仕方がないのですが、それにしては、「新書」というメディアを選んだことや、キャッチーなタイトル、目次のまとめ方などが、ビジネス書のようで、素人に訴えかけるような作りで、やっぱり想定読者と、本の作りがミスマッチ。
とはいえ、得るものがなかったということは全然ありません。
まず、最初に驚いたのが、オバマ大統領の核廃絶演説に到る背景に、キッシンジャーがいたということ。
また、北朝鮮の核に対するアメリカの対応と、ミャンマーを比較してみるという視点。
もちろん、理由7に挙げられている、原発という核の平和利用と核兵器の関係についても、よく原発反対派の人たちが取り上げておられるのを、「そ~んなこともないでしょう」と思っていたけれど、これが完全な「平和ボケ」だったということも改めて認識しました。
はっとした言葉は、核テロ問題の第一人者グレアム・アリソン米ハーバード大教授の言葉です。
「核テロ対策は、『おこりそうもない事態を想定する(Think Unthinkable』ことだ」
思い出すのは、やはり東電や原発推進派の人々が、口にする「想定外」という言い訳。
原子力発電所を持つということは、たとえ核爆弾を持たなくても、核テロに対しては、同じリスクをもつということ。
アメリカという国のあり方には納得できないことがたくさんあるけれど、原発という存在が、少なくとも彼らにとっては、核テロのターゲットではあったはず。全電源喪失という事態は、自然災害としては考えられなかったとしても、想定外でもなかったはず。
政府の責任がなかったとは言いませんが、やはり福島の現状は、平和ボケした日本を象徴するものだと、どうしても思考はそちらに向かってしまうのでした。
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