ポケットの中で映画を温めて

今までに観た昔の映画を振り返ったり、最近の映画の感想も。欲張って本や音楽、その他も。

『ロスト・バケーション』を観て

2020年07月26日 | 2010年代映画(外国)
ちょっと気分転換に、サメ映画『ロスト・バケーション』(ジャウマ・コレット=セラ監督、2016年)を観てみた。

医学生のナンシーは休暇を利用して、メキシコの“秘密のビーチ”へサーフィンするために一人訪れる。
そこは、地元の人間しか知らないビーチで、亡くなった母親の思い出の地だった。

地元の青年サーファー2人以外は誰もいない入江。
ナンシーはサーフィンを思う存分楽しむ。

日が暮れかかり、地元サーファーが一緒に帰ろうと誘うが、ナンシーはあと一回と断る。
青年たちが海岸を車で帰る最中、一人で波乗りするナンシー。
しかしその時、突然ナンシーは何者かに一気に水中に引きずり込まれ・・・

海底でもがくナンシー。水中は見る見るうちに紅く染まる。
獰猛な巨大なサメがナンシーを襲う。
近くにたまたま、それこそ巨大過ぎる腐敗したクジラの死骸が漂っている。
大腿部を深く傷つけられたナンシーは、危機一髪でクジラの背に乗り移る。

と、まあ海の中でたった一人、若い女性と狡猾なサメのサバイバル・ゲームが始まる。
そこにあるのは、久し振りに感じる緊張感の連続。

ナンシーは、クジラの死骸から海の中に突き出ている小さな岩礁に泳ぐ。
その岩礁で、医者の卵のナンシーはピアスとネックレスを使って大腿部の傷口を自ら縫う。
観ていて、それはもう、正視できない極限の痛さをこちらも感じてしまう。
それも、ここは海だから塩分による激痛も並大抵ではないはずと、こちらが失神しそうになる。

ただ救われるのは、この岩には羽を脱臼し怪我を負った一羽のカモメがいたこと。
カモメはそこにいるだけなのに、ナンシーとともに運命を共有する。
そのカモメが、なぜか超一流の役者と誉めても言い過ぎでないほどのたたずまいである。

小さな岩礁であるここは、いずれ満潮になれば海に沈み、そうなれば当然サメは襲いに来る。
すぐ近くに浮かぶブイまでが3、40メートル。
岸だってわずか200メートルほどである。
しかし、そんな距離でもいつサメに襲われるのか、と話はハラハラドキドキさせながらドンドン進む。

サメに襲われる作品と言えば、当然『ジョーズ』(スティーヴン・スピルバーグ監督、1975年)となる。
あの作品以来、随分とサメ映画が作られ、それに釣られて2、3作品は観た経験があるが、
『ジョーズ』を越えられるはずはなく、そう思うと見る気もしなくなった。
それを今回、ひょっとしたら面白いかもと観てみた。
答えは正解であった。
まず海の風景等、撮影がバツグンであること。
話の展開、そのテンポも申し分なく、ストーリーへ一気に引き込む力がある。

家族のこと、特に亡くなった母のことも絡ませてあって、内容にふくらみを持たせてある。
もっとも、母親との関係をもっと掘り下げてくれると作品に深みが増すのに、と余分なことも考える。
でも、まぁいいかと満足し、観て儲けたなと感じる作品だった。

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