原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

鳩山由紀夫と言う不可思議人間

2012年11月23日 08時22分12秒 | 政治

 

とにかく理解不能。あるいは異常思考と言うべきなのか。元総理大臣鳩山由紀夫と言う人には驚かされた。自分で宇宙人と呼ぶくらいなのだから、彼にとってはこれで当たり前だったのかも。突然の引退騒動で最後の注目を集めた。選挙用の事務所開設を行い、これから選挙に頑張るぞ!と宣言しながら、三日後には「辞めます」は、これまで同様の破天荒ぶり。人類学の研究にはこれほどのモデルはいないだろう。とにかく我々の常識とは全く違うところに存在するからだ。ただ、日本にとって不幸だったのは、この人が総理大臣になってしまったこと。失われた三年はここから始まった。

 

民主党の生みの親でありながら、野田政権が誕生して以来、とにかく足を引っ張り続けた。それが正しいという信念のもとの行動だからたまらない。有名となった彼のブレまくり発言は、政権交代を実現した後にクローズアップされたが、実はそれ以前からあった。宇宙人と呼ばれたのはそんなところからだ。

(詳しくは http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%A9%E5%B1%B1%E7%94%B1%E7%B4%80%E5%A4%ABを参照

 

言論を標榜すべき政治家としてはまったく理解できない。言論が右から左へと平気で飛ぶ。失礼ながら幼稚性や発達障害さえ感じさせる。あげくのはては、国民が私の言うことに聞く耳を持たなくなったなどと言う。悪いのは国民だったのかよ、と突っ込みたくなる。頭がおかしくなったのでは、と思う人がいても不思議はなかった。

だが、決して頭が悪いわけではない。東京大学工学部計数工学科を卒業。スタンフォード大学博士課程オペレーションリサーチを専攻。Rh.D(博士課程)を取得している。

問題は彼流の思考回路が普通の日本人と少し違うところにある。たしかに博士号をとっているが、政治学や心理学、経済学を学んだわけではない。基本的に政治思考とは全く別次元の人であった。それならなぜ政治家などになったのだろうかと、思わざるを得ない。自分の得意分野でもない政治に身を投じようという、その決心からして不可思議なのである。このあたりの思考回路は常人には理解不能となる。たぶん自分ならできると思ったのだろう。

幸か不幸か、彼には政治家としての家系があり、ブリジストン遺産があった。才能とは関係なくこのバックグランドは大きかった。民主党を立ち上げた時、7億円と言う金をポンと出している。弟と合わせて14億円とか。こんなことをできる政治家は確かにそうはいない。自民党を打破するという最終目的、政権交代と言うスローガンも実に分かりやすかった。だからこそ、古い殻を破れない自民党が衰退すると急浮上。一気に政権与党まで駆け上がることができた。

このように経過を言うと極めて簡単に政権をとったように聞こえるが、実は2000年頃からチャンスがたくさんあった。にもかかわらず、民主党は墓穴を掘り続け何度も失敗していた。当時から指導力に疑問符があったことも事実である。当時の首脳は鳩山由紀夫、管直人、そして小沢一郎のトロイカであった。鳩山だけの責任ではなかったので、それほど目立たなかっただけであった。総理大臣となって一気にスポットライトが当たってしまった。彼の異常さが新聞紙上をにぎわすのはここからなのである。

 

この不可思議人間は研究分析の価値はあると思う。文化人類学者および精神心理学者たちよ、ぜひ彼を研究してもらいたい。日本の精神史の未来に大きな貢献をするかもしれないからだ。

 

あくまで噂の域を出ないのだが、鳩山由紀夫が不出馬・引退を決定した時、民主党事務所では歓声と拍手が起きた。同時に「あと一人だな」と言う声も聞こえた、と言う。残りの一人はあえて名前をあげることもないだろう。その一人もまた脱原発を振りかざし国会へのデモにまで参加している。原発ゼロの旗印を降ろしたい民主党(政権与党にならなければこれで自民党を攻撃する)にとってはできれば排除したいに違いない。実現すれば、かつてトロイカと呼ばれた民主党首脳はこれですべて消えることとなる。

だからと言って、これで民主党の人気が再上昇するとは思えないが、党内はすっきりする。それは間違いない。再出発の下地はできるかも。もう一度与党になるには自公民体制を作るしかないが、果たしてうまくいくかどうか、その見通しは限りなく不透明だ。

 

彼が最後の決断をしたのは立候補のための公認申請書という踏み絵を突き付けられたことが直接的な原因だが、もともと選挙に出ても落選の可能性の方が高かった。恥の上塗りをするところだった。このことに本人は気づいていたかどうか。アドバイスする人もいなかったのだろうか。いかにも裸の王様を思わせる。引退報道に安堵の胸を下ろした道民が実に多かった。むしろ大歓迎だった。飛び交ったツイッターが雄弁に語っていた。なによりも象徴的なのは、引退に対して引き留め工作は一切なし、同調者もない。これがすべてを証明している。

 

それにしても、鳩山由紀夫が目指したものは何であったのか。彼はどこに行こうとしていたのか。いつかきっと自叙伝みたいなものを出すに違いない。もちろん読む気など全くない。むしろ失われた3年の時を返してほしいと思うばかりだ。が、彼の本は世間では興味を呼ぶだろう。これほど不可思議な人間はめったにお目にかかれないくらい貴重な存在だから。

 

それにしても、人の引き際というものが、いかに大切であるか。あらためて知る思いであった。


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2 コメント

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夢宙人・・・ (numapy)
2012-11-23 10:24:27
元首相、宇宙人と言うより「霧中人」とか「夢宙人」と言うのはどうでしょう。
ともかく、何をしたかったんだろう。
「ピース」と言いつつ「鳩」は夢宙遊泳を始めた。でも「官」を御せない。「汚沢」にもまみれた。結局、残したのは何だったんでしょう。
彼は最初から「霧中人」だったのに、おだてられて「夢宙人」をめざしちゃった。それが誤りの第一歩だったんでしょう。
ただそれはそれとして、今度は何を「選択」したらいいのか?日本沈没が十歩進んだようです。雪、困りました。
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夢宙人に、ザブトン1枚 (genyajin)
2012-11-23 13:32:25
霧中人もいい得て妙です。
我々凡人にはついていけない人でした。住んでる世界が違い過ぎたことも要因にあるようです。いずれにしても北海道人としてはホッとしてます。あの人が何か言うたびに北海道人のイメージが下がるようで、気が気でありませんでした。これからはぜひ静かに余生を過ごしていただきたいものです。いっそ、友愛の海とかいうあたりでひねもす泳いでいられるように願っています。
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