今日の出来事

どこへでも風の吹くままに。 http://www.geocities.jp/syanagio/index.html

廃屋といえば

2006-04-30 | 
 小さいころ、「あの家、中はどんなになってるのかな? 一度、入ってみたいなあ。」なんて思ったことはありませんか? 実は、そういう家が二軒あったのです。
 一つ目は、市民の憩いの場となっている山の中腹にある別荘。皆が通る登り口とは別の道から行くらしく、子どもの私には、そこへ至る道すら分かりませんでした。だから「山の中ほどに木陰に見え隠れする古風なお屋敷」として、神秘的な存在でした。大人になって分かったのですが、そこは、老舗の高級料亭の別邸で、日本庭園が美しい純和風の建物だということでした。一介の勤め人では到底利用不可能な価格設定であるため、「故郷の名園カレンダー」で観ることしか出来ません。
 二つ目は、川沿いの坂道の角に立つ和洋折衷のお館です。2メートルはある灰色のコンクリート製の塀の上には、鉄条網が怪しげに撒かれていて、少し錆付いた鋳鉄製のアールデコの門扉からは、館へと続く曲がりくねった細道が覗けます。誰も住んでいないのか、荒れ放題の庭はさながらジャングルのように、真昼でも深い闇を残していました。その奥に建つ館は、和風の玄関や座敷とともにサンルームのような高い窓を持った部屋をも持っているようでした。裏手に回ると、頑丈な木組みが3メートルほども建ち上がって、坂の上に立っている館の土台を支えています。館の裏は白々と日が当たって、色あせたなまこ壁をわびしく見せていました。あのあたりは下男部屋なんじゃないか、木組みの横の崖を伝う急な階段の上の扉からから、今にも古風な小間使いが出てくるのではないかと想像をたくましくしたものです。
 でも、今日その館の横を通ると、見慣れぬ更地が現れていました。なんと、あの不思議の館は取り壊されて、広い敷地の奥にぽつんと蔵が一棟残るばかり。衝撃でした。昭和天皇の行幸の折、宿泊所として召し上げられたという由緒正しい建物は、もうどこにもないのです。
 宝くじで大きく当てたら、絶対手に入れたいと思っていたのになあ・・・。こうなったら、あの山腹の料亭に絶対連れて行ってもらうぞ。〈←あくまで人頼み。)


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