今日の出来事

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「記憶の旅人」を観た

2005-05-17 | 映画・舞台・テレビ
 「指輪物語」野フロド役のイライジャ・ウッドが主演のヒューマン・ストーリー。1998製作なので、イライジャ君が若いぞ。
 物語は、記憶をなくした青年(少年?)が目覚めるシーンから始まります。そこは、10代の末期患者が暮らすホスピスです。横柄な態度で人を小ばかにしたような骨肉腫のマッゾがいい。健康な双子の妹に対する嫉妬と愛情のない交ぜになったあの表情。強がりも死への恐怖の裏返しです。登場人物の中で一番印象に残りました。
 バーニーは、死ぬ前に車を運転したいというマッゾのために、屋根裏で手作りのマルハナバチ号を作ります。瀕死のマッゾを病室から連れ出して、朝焼けの広がる天窓へと導きます。美しい世界を眼にして、初めて生を実感した喜びの中、マッゾは死に、バーニーは記憶をなくしてもい切る道を選びます。それは、とても切ない選択です。リリカルな雰囲気の中、象徴的な自然の映像とともに展開する世界は、美しいけれど、散漫で物足りない印象でした。
 なぜなら、主役・バーニーの描き方が弱いから。失くした記憶を取り戻したいと苦悩する彼は、どちらかというと無表情で控えめな青年です。だから、彼が記憶を失くしたわけが解明されたときの心情も、分かりにくい。「辛い記憶を栄養として癌細胞は増殖する。したがって、辛い記憶そのものを無くせば、癌は治る。」という『マルハナバチ理論』(←なんとトンデモナイ理論だろう!)にしたがって、悪性腫瘍を直すための実験台になっていた、と言うのが真相なのですが・・。彼が生きるためには、記憶を無くすしかないわけです。今も友情も恋も、辛い思いをした時点ですべてリセットしなければならない。さもなくば死。この選択に悩む気持ちが、もう少し分かりやすく伝わるとよかったなあ。身近に末期癌患者を持つ身としては、余りにも健康な「患者」たちに、違和感を覚えざるを得ませんでした。 

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