ドーナツ畑の風に吹かれて

おかわり自由のコーヒーを飲みながら、廻る季節をながめて、おもったこと。

お散歩大臣。

2005-11-10 03:40:20 | 日記
 昨日のコース。市ヶ谷~四谷~赤坂見附~青山~表参道~原宿~代々木八幡。キーワード:おしゃれ街の底力。
 サークルが終わったあと、新宿駅の中心で「どっか散歩したいね」という話になり、「やっぱりテンションあげるには水だよね!」という共通認識を確認しあった後、一番手っ取り早く水が見られるお堀を目指して黄色い電車に飛び乗った。
 山手線の真ん中を通る中央線と並走する総武線はちんたら各駅停車する。大学四年生の女二人、ドアにべったり張り付いてお堀を眺める。水のある場所は緑があるし空も広くてとてもいい。このあたり、特に御茶ノ水ら辺の、線路が容赦なく何本も混線してる感じもとてもラブリー。たっぷりお堀を堪能した後、浅草橋でUターン。飯田橋にあるお気に入りのお堀端カフェにいくつもりだったけれども、Uターンしている隙にすっかり日が落ちてしまったので、行きの車中で気になっていた市ヶ谷駅前のタリーズでお茶することにする。オープンスペースからお堀の水が見えるもんだとおもい、ワクワクテカテカして行ってみたら、道路を挟んでいるために距離があってまったく見えない。残念。プロジェクトXのエンディングテーマを歌いながら流れていく自動車の列を眺めていた。
 道路とお堀をはさんで、向こう側には市ヶ谷駅が見える。そこに発着する電車は街路樹の陰でちらちらと明かりが見える程度。市ヶ谷は位置がちょびっと低くなっていて、そこに入ってくる線路は若干下り坂になっている。その傾斜具合と、日没後の暗闇のちょうど良い目隠し具合があいまって、街路樹の奥から市ヶ谷駅に滑り込んでくる電車が、まるで夜空から舞い降りてきたように見える。一度そうおもうと、次々発着する電車が全部銀河鉄道におもえてくる。だって、あの線路は絶対に空に向かって伸びてるよ……! なんかもう、超テンションあがった。電車が次々と舞い降り、次々と夜空めがけて走り出す。市ヶ谷は、銀河鉄道の発着駅だったんだ……!
 銀河鉄道とコーヒーを充分堪能した後、ぶらぶらと隣駅まで歩いてみることにする。お堀ぞいにぞろりぞろりと歩く。四谷駅にはあっという間に着いて、なんだか歩き足りないのでもっとまっすぐ行ってみることにした。とはいえ、東京の道はまっすぐ歩けるようにはできていない。うにゃらうにゃら歩いていたら、なんかえらそうな建物がたくさん建っている。赤坂見附だった。をを、これがかの有名な……。まだ歩けるのでまだ歩く。交番の前にある地図を確認したところ、「青山」というキャッチーな地名を発見。ふらふらとそちらに向かって歩いていく。途中見つけたファーストキッチンで「月見キーマパスタ」なるものを食べ、まだ歩く。表参道。え、ここからなら原宿まで行っちゃった方が帰りが楽じゃね? 道もおもしろいし? ということでさらに原宿を目指す。いい街は歩くのが本当に楽しい。高そうな服売ってる店がたくさんある。手がトドかなすぎて笑える。で、原宿に到着。すると、小田急線ユーザーのY女史が「ここまで来たら代々木八幡まで歩くよ」と言い出したので、わたしも着いていく。わたしは新宿にさえたどり着ければ定期で帰れるので、とにかく新宿にいける電車ならなんでもよいのであった。代々木八幡から無事帰宅。
 東京散歩はおもしろいだろうなーとはおもっていたけれど、まさかここまでおもしろいとはおもわなかった。目的をまったく持たずに闇雲に歩いてもたくさん地下鉄の駅があるから帰ろうとおもえばどこからでも帰れるし、分け入っても分け入っても知ってる地名が出てくるので飽きない。なにより街がおもしろい。散歩は昼間じゃなきゃおもしろくないとおもっていたけれど、東京は夜歩いても別のおもしろさがきっちり備わっている。東京ばんざい。

 今日のコース。竹橋~日比谷~芝公園~麻布十番~六本木ヒルズ。キーワード:東京タワーの脅威。
 前日すっかり味をしめたわたしたちは、今日もサークル終了後に散歩に繰り出した。部室でだらだらだべっていたらすっかり暗くなってしまったのだけども、まあおかまいなしに適当に東西線に乗り、適当に竹橋をチョイス。下車。地下鉄出口を登りきり、皇居だーとおもって、振り返った瞬間、真正面に東京タワー。東京タワーのパワーは、なんか、すごい。お土産やさんで売っているミニチュアと同じように、うさんくささを通り越して神々しいほどの輝きを放っている。ふらふらと引き寄せられるように東京タワー方面へ。皇居をぐるりとまわり、とりあえず日比谷公園に行こうということになる。それにしても、皇居あたりにはスカイがある。そして、広いスカイの中にたたずむ東京タワー。まったくファンタジーだ。子供のころに読んだ童話を思い出してしまったもの。
 日比谷公園を経由して、もっと東京タワーに近づこうという気持ちになってきたので、そっちめがけて進む。しかし、東京タワーはすぐに見えなくなってしまった。むむむ、とおもいながら、とりあえず芝公園を当面の目的地に設定。しばらく東京タワーのことを忘れたまま歩いていると、突然、道沿いのビルの窓に東京タワーが写りこんできた。絶句。しかし、虚像は見えども実物は見えない。なんだか大きな予感を胸に秘めて進むと、ある角に差し掛かった瞬間、さっき見えてきたものの5倍くらいの大きさの東京タワーがいきなり眼前に迫ってきた。うあー。遠くから見る東京タワーはかわいらしいけれど、近くで見る東京タワーは、なんか、えげつない。恐怖を覚えたわたしたちは、今度は東京タワーから遠ざかることにする。道路標識を見つつ、とにかく東京タワーから遠ざかれそうな方向に歩く。歩く。しかし、いつのまにか東京タワーは我々の真横に回りこんでいる。こわい。さらにすすむ、すすむ。麻布というキャッチーな地名が目に入ったので、とりあえずそっちを目標にして進む。しばらく東京タワーの姿が見えないので安心していたら、突如としてさっきよりさらに大きくなった東京タワーが現れた! どうやらうろうろしているうちに東京タワーを半周くらいしたようなことになったらしいのだけれども。東京タワーが追いかけてきたみたいでおそろしくこわかった。ずっと姿が見えているわけでなく、ある時突然目の前に現れるというのがなんともホラーだ。足が生えているとしかおもえない。麻布の真ん中を必死で突っ切って、東京タワーから逃げた。何度も振り返って東京タワーが追いかけてこないことを確認しつつずんずん進んだら、いつしか住宅街に迷い込み、ちょっと途方にくれた。ずっと前方に見えていた高いビルを目標にして、なんとか歩を進める。麻布十番駅にやっとのことでたどり着いた安堵感といったら! で、駅で地図を確認すると、さっきから我々が頼りにしていたビルが六本木ヒルズと判明。六本木ヒルズはわたしたちを東京タワーから守ってくれたんだ! というわけのわからない感動を覚え、今日の散歩の終着点は六ヒルにしようと決める。にょきにょき歩いて六ヒルらしき場所に到着。一部では有名な、スタバを併設したやたらおしゃれなツタヤらしからぬツタヤを発見。けやき坂のイルミネーションを眺めながら優雅にコーヒーを飲むことにする。をを、六本木がなんでえらいのかわかった気がするよ! で、イルミネーションと散歩中の犬と外人さんをすっかり堪能した後、大江戸線の六本木駅から無事帰路についた。
 今日は東京タワーの魔力のおそろしさを身をもって実感した日だった。東京タワーが発する電波は、人をふらふらとひきつけるおそろしい魔力を持っているのだ。東京タワーはのぼるもんじゃない。遠くからながめるものだ。近づきすぎてもいけない。距離感が大事なのだ。


 とまあ、二日にわたって行き当たりばったり散歩をしたわけだけど、東京散歩はほんとうにおもしろい。行き当たりばったりでも帰りに困らないし、きちんとおもしろい場所にたどり着ける。東京の懐の広さの勝利だ。
 あと、二日とも夜に散歩をして再確認したのは、夜景の威力。すごい。ロマンチックパワー全開だ。そりゃあデートだってしたくなっちゃうよ。こんなシチュエーションで口説かれたら落ちちゃうよ。一生に一度くらいしてみたい完璧なエスコートつきの夜景デートについて、Y女史と熱く語り合いながら歩いた。夜景デートというのは、どんな形であれとにかく夜景があればいいという広義なもの。今まで敬遠していたけれど、クリスマスイブに東京タワーの見えるホテルの部屋を予約、などというベタなことも、今ならきっと許せる。むしろされたい。うわー、考えただけでとろけてしまうな。東京タワーばんざい。


 ただの散歩がこんなに楽しいなんて。大人になってよかった。これはきっと子供とかの感性では楽しめない類のものだ。うんうん。

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