本日の日経新聞朝刊7ページにヘッジファンドの運用額のグラフが載っているが、数字を読み取ってみると、
1995年 約2千億ドル
2000年 約5千億ドル
2002年 約6千億ドル
2005年 約1兆2千億ドル(約140兆円)
と爆発的なスピードで拡大しており、特に2002年から拡大のペースを速めている。
低金利による過剰流動性を背景に生じた巨大な余剰資金は、不動産、原油・金属などの対象に向かい、過剰な投資行動を繰り返している。過剰な投機は当然ながらバブル現象を引き起こすが、リターンが低下したら、高いハードルレートを持つこれらの余剰資金は、焼き畑農業の様に、すぐに次なる畑に移っていく。その資金が、今株式市場をターゲットにして、激しい攻勢をかけている様に見える(機関投資家の信用取引、東証の裁定買い残)。
ところで、ポールソン米財務長官が住宅市場の調整に対して懸念を示した様だ(最後のリンク参照)。住宅市場の調整の深刻さは今更言うまでも無いが、興味深いのは、記事の中で、住宅の落ち込みを相殺するものとして、「株価の上昇」を上げている点である。今回の株高が投機資金の先物買いによって主導されたものだとすると、それが米景気を支える柱の一つだと言うのは憂慮すべき事態で、いずれもろくも崩れる可能性は十分にあると言わざるを得ないだろう。
これまで、住宅の落ち込みを相殺するものとして上げられていた原油安や金利低下も、ヘッジファンドの極端なポジションによるものとする(草野代表の見解)と、原油安・金利低下・株高による「ソフトランディング」ストーリーは、ヘッジファンドによるヘッジファンドのためのストーリーの様にも聞こえてくる。
不動産バブルに始まり、「インフレ懸念」ストーリーで原油と商品をたらふく食べて、商品市場を焼け野原にしたヘッジファンドが、「ソフトランディング」ストーリーで債券と株を焼け野原にしようとしているのだろうか。不動産の様に、最早割れるしかない巨大なバブルを株式市場に作ったとしたら、今度はどこに向かうのだろうか。
実は、東証では潮目の変わり目の兆候かも知れない状況が起こっている。本日発表の10/16-20の東証裁定買い残が、対前週の増加額が激減する一方、過去5週間で初めて裁定売り残が増加したのだ。
東証裁定 買い残の変遷
9/25-29 4兆3,635億円(+3,032億円)
10/2-6 4兆5,957億円(+2,321億円)
10/10-13 4兆8,384億円(+2,427億円)
10/16-20 4兆8,464億円 (+79億円)
本日のFOMCの決定や住宅関連の指標など、今週も米国の動向に目が離せない状況が続きそうだ。
◎米住宅市場で「重大な調整」・ポールソン財務長官が懸念
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20061025AT2M2500F25102006.html
・住宅市場の減速に触れ「重大な調整が起きている」との懸念を表明
・底堅い設備投資や株価の上昇などが住宅の落ち込みをある程度相殺するだろう
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