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-6年半ぶりに投稿

大恐慌!?その447 米個人消費低迷の”ニューノーマル”の現実性と構造性

2009-08-16 23:42:11 | 世界経済

一昔前を思わせる、”思考停止”を求めるような楽観論の嵐が通り過ぎているが、徐々に米個人消費の回復期待への疑問符が、再び強まりつつあるようだ。※1などでこのブログで再三取り上げているテーマである、米GDPの7割を占める個人消費の構造的な長期低迷の可能性を示すデータがどんどんと出てきている。

まずは、7月の米小売売上(※2、3)。アナリスト予想+0.7%増(自動車除き+0.1%)に対し、-0.1%(自動車除き-0.6%)と、アナリスト想定を大幅に下回るもの。※3二つ目のグラフが示す実質米小売売上高推移が示すのは、まさにL字そのもの。

また、8月米ミシガン大消費者信頼感速報値は予想外に低下し、期待指数も3月以来の低水準という(※4)。

2つとも、アナリストの過度な期待と厳しい現実とのギャップが明らかな統計であった。堅調な企業業績と、政府の圧倒的な支援にもかかわらず一向に上向かない個人消費。これからは私見となるが、企業価値に関して時価評価を続けることに伴う、囚人のジレンマ的な状況が生じているという仮説を私は持っている。

つまり、不動産価値などの金融資産については、時価会計を緩和することで、時価の下落の処理を、よくも悪しくも先延ばしすることができたが、企業業績の評価である株価について、評価の先延ばしは難しい。結果、短期的な業績がそのまま株価に反映される、一時期の金融資産と同じ状況にいまだに置かれている。一方、個人消費は、雇用、住宅を中心とする資産効果など、厳しい局面が続く中で、企業の収入サイドの短期的な伸びは期待できない。収入サイドの短期的な伸びが期待できない中、短期的な業績成果を求められるとすると、短期的に効果を上げるのはコスト削減しかない。コスト削減も設備投資抑制は、減価償却という形でゆっくりとしか利益サイドに効かないため、最も即効性が高い人件費削減に走る。囚人のジレンマと言ったのは、さらに個々の企業から見ると、他の企業だけ人件費削減をして、自企業のみ雇用を守る時の、自企業へのマイナス影響が大きいために、経済全体へのインパクトより前に自企業の利益防衛に走る。その結果、個々の企業の最適解としての人件費削減が、経済としての縮小均衡傾向をますます高める。

ここで難しいのは、企業業績が上向くので、株式市場は堅調となることである。政府への最大の圧力組織であるところの投資家(金融機関を含む)は、株式市場がとりあえず堅調であることで満足しがちである。ここでも全体最適よりも部分最適が優先される。

とみていると、現在の企業業績・株価堅調、個人雇用・消費低迷、という状況は構造的な要因によって、なかなか変化しにくい状況になってしまっている、というのが私の私見。この状況が続くとどうなるか。普通に考えると、コスト削減だけによる利益維持には限界がある。となると。。。。

 

※1 大恐慌!?その414 高貯蓄率の時代=個人消費縮小のニューノーマル(新しい常態)

http://blog.goo.ne.jp/world_2050/e/75f25d78a70851a2cf0337dfbf8298e6

※2 UPDATE1: 7月の米小売売上高は予想外の‐0.1%、自動車以外の支出さえず

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJT844409420090813

 米商務省が発表した7月の小売売上高は前月比0.1%減と予想外に減少した。エコノミスト予想は0.7%増。前月は0.6%増から0.8%増に上方修正された。

 アナリストは政府の自動車買い替え支援策が数字を押し上げると期待していた。

 ミラー・タバク(ニューヨーク)の株式ストラテジスト、ピーター・ブックバー氏は「小売売上高は想定外に弱かった。自動車買い替え支援策に関連した支出はみられたものの、それ以外の消費はさえなかった」と指摘した。

 自動車を除いた売上高は0.6%減。前月は0.5%増加していた。アナリスト予想は0.1%増だった。

 項目別では、ガソリン価格の下落を反映しガソリンスタンドが2.1%減。前月は6.3%増だった。建設資材・庭用設備は前月の0.6%減に続き2.1%減少した。 ガソリンを除いた小売売上高は0.1%増だった。・・・・・・・・・・

※3 Retail Sales Decline Slightly in July

http://www.calculatedriskblog.com/2009/08/retail-sales-decline-slightly-in-july.html


The following graph shows the year-over-year change in nominal and real retail sales since 1993.

Year-over-year change in Retail Sales Click on graph for larger image in new window.

 

 

 

 

 


Real Retail SalesThe second graph shows real retail sales (adjusted with PCE) since 1992. This is monthly retail sales, seasonally adjusted.

 

 

 

※4 UPDATE1: 8月米ミシガン大消費者信頼感速報値は予想外に低下、期待指数も3月以来の低水準

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJT844592020090814

ロイター/ミシガン大学が調査した8月米消費

者信頼感指数(速報値)は63.2と前月の66.0から予想外に低下した。ロイターが集計したエコノミスト予想中央値は68.5だった。

 消費者期待指数も前月の63.2から62.1に悪化し、3月以来の低水準となった。同調査は声明で「米経済の状況については、消費者が改善を期待する公算が一段と大きくなったものの、家計の状況をめぐる評価は格段に悪化した」と指摘した。

 家計は改善との回答は調査開始以来最も低い水準となった。労働時間短縮や失業、賃金増加幅の縮小を理由に挙げる回答者が多かった。・・・・・

 


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