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大恐慌!?その446 米雇用統計の不思議の数々

2009-08-09 23:47:11 | 世界経済

簡単にしようと思いましたが、色々気になる点を確認していたら長くなっちゃいました。

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注目の米非農業部門雇用者数は‐24.7万人と予想を下回る数字となり、失業率も低下した(※1)。当然のことながら市場は好感し、株式市場だけでなく、ドル急騰、長期金利下落など多くの影響をもたらした。ホワイトハウスは、米失業率、年内に10%へ達すると依然予想と慎重な姿勢も示している(※2)。簡単にいくつかコメントすると、

・米雇用統計は、失業率を測るCurrent Population Survey (CPS: commonly called the household survey)という統計と、雇用者数を測るCurrent Employment Statistics (CES: payroll survey), という全く別の統計の両方を同時に発表しているため、時々方向性の違う結論を示す(詳しくは※3)。発表内容の原文は※4。英語の読める人は一度じっくり見ていると色々発見があると思う。

・今回CPSにより失業率が0.1%下がったが、CPS上では雇用者が15.5万人減、失業者が26.7万減となっているため。雇用者が減っているのに失業者が多く減っているのは不思議であるが、失業者は"Unemployed persons include those who did not have a job during the reference week, had actively looked for work in the prior 4 weeks, and were available for work”と定義されるため、4週間仕事探しをしないと失業者とカウントされなくなるようだ。

・一方27週以上職がない人が前月比で58.4万人も増え、累計500万人に達したという(The number of long-term unemployed (those jobless for 27 weeks or more) rose by 584,000 over the month to 5.0 million.)。27週も仕事がなければ、就職活動を諦める人も増えるはずであり、先ほどの失業者減に繋がっているのだろう。27週職がないけど失業者とカウントされている人が58.4万人も増えて、さらにその上失業者にすらカウントされない人が数十万に増えているとしたら、それって雇用状況の改善なのか?失業者の累計は1446万人とのことで、その3分の1近くが半年も仕事がないことになる。今後、この5百万人からどんどん諦めた人が失業者の枠から抜けていくので、もしかすると雇用悪化が一定以上続くと、米雇用統計は失業率が上昇しない便利なシステム?

・また、原文である※4は、自動車関連雇用者が季節調整後で2.8万人増えたとした上で、通常7月におこる自動車産業の一時レイオフ(一時的な影響なので、調整する)が今年は少なかった影響で、要はプラスに調整しすぎた影響としている。これは週間失業保険申請数の時にも紹介したが、たとえば、7月の第一週と第二週を比べると、季節調整で第一週は1.2万失業者を減らしただけだが第二週は15万も減らしており、このときも米労働省は季節調整のしすぎを認めている(※5)。今回、その影響が何万人なのか不明だが、少なくとも数万人規模で影響はあろう。

(季節調整前)→(季節調整後) 

7/4 58.1万→56.9万 (季節調整影響:▲1.2万)

7/11 67.1万→52.4万 (季節調整影響:▲14.7万)

・とまあ、色々と不思議だらけの米雇用統計であるが、よくも悪しくも最も世界経済に影響を与える指標であることは歴然とした事実で、人々が注目する雇用者数と失業率で改善が見られ、景気回復への期待がより高まったのはまぎれもない事実であろう。それは株式市場の上昇だけでなく、長期金利の上昇や原油を始めとした商品価格の上昇に直結するだけに、もし(意図的かどうかにかかわらず)統計の不備による過度の期待が生み出されたとしたら、このコストは大変重くなることも良く認識するべきだろう。

なお、世界中が想定以上の米雇用統計に酔いしれている間も、「6月米消費者信用残高は前月比‐103億ドル、5カ月連続の減少」と金融機関の貸し渋りは継続中(※6,7)。

また、米住宅ローンは、2011年に約半分が住宅価値上回る見通し(※8)という。つまり、米住宅ローン保持者の約半分は、コツコツ住宅ローンを払い続けるより、家を放棄した方が経済的にメリットがでる、ということになってしまうということだ。

楽観的に見る人にとって、今回の米雇用統計で決め手、と考えアクセル全開、という向きも多くなると思うが、さてどうなることやら?

 

※1 UPDATE1: 7月の米非農業部門雇用者数は‐24.7万人、減少幅は08年8月以来の低水準

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJT852629720090807

※2 米失業率、年内に10%へ達すると依然予想=ホワイトハウス

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJT852627920090807

※3 Jobs and the Unemployment Rate 

http://www.calculatedriskblog.com/2009/08/jobs-and-unemployment-rate.html

※4 Employment Situation Summary

http://www.bls.gov/news.release/empsit.nr0.htm

・・・In motor vehicles and parts,fewer workers than usual were laid off in July for seasonal retool-ing. As a result, the estimate of employment for the industry rose by 28,000 after seasonal adjustment. In large part, July's seasonally-adjusted increase reflects the fact that previous job cuts had been so extensive that there were fewer workers to lay off during the seasonal shutdown. Elsewhere in manufacturing, several industries con
tinued to lose jobs in July, including machinery (-15,000) and fabricated metal products (-14,000)・・・・

※5 UNEMPLOYMENT INSURANCE WEEKLY CLAIMS REPORT

http://www.workforcesecurity.doleta.gov/press/2009/080609.asp

http://www.ows.doleta.gov/unemploy/wkclaims/report.asp 

 

※6 6月米消費者信用残高は前月比‐103億ドル、5カ月連続の減少=FRB

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJT852644320090807

※7 Consumer Credit Declines in June

http://www.calculatedriskblog.com/2009/08/consumer-credit-declines-in-june.html

Consumer Credit Click on graph for larger image in new window.

This graph shows the year-over-year (YoY) change in consumer credit. Consumer credit is off 2.8% over the last 12 months. The record YoY decline was 1.9% in 1991 - and that record has been shattered.

※8 米住宅ローン、2011年に約半分が住宅価値上回る見通し

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-10415620090806

 


5 コメント

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6種類の失業指標 (投資蚊)
2009-08-11 19:54:53
U1:(失業期間が15週間以上の失業者)/(労働力人口)
U2:(非自発的離職失業者)/(労働力人口)
U3:(失業者)/(労働力人口)[公表失業率]
U4:(失業者+discouraged workers)/(労働力人口+discouraged workers)
U5:(失業者+all marginally attached workers)/(労働力人口+all marginally attached workers)
U6:(失業者+all marginally attached workers+total employed part time for economic reasons)/(労働力人口+all marginally attached workers)
(U6:U3+求職活動を完全に諦めた人+時々不定期でちょっとした仕事をしている人+フルタイムを望んでいるが、パートしかない人)
http://www.bls.gov/news.release/empsit.t12.htm

U6基準で見ると、5月→16.4% 6月→16.5% 7月→16.3%

本当の失業率を知るには、やはりU6で見るのが一番ですね。
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1000億ドルのターム物入札、札割れ (投資蚊)
2009-08-11 23:58:57
米FRBの1000億ドルのターム物入札は落札金利0.25%、応札倍率0.43倍
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJT844028020090811?feedType=RSS&feedName=marketsNews&rpc=155

今週は気になる、米国長期債入札が続づきます。

        3年債     10年債    30年債

発行額    370億ドル  230億ドル  150億ドル

入札日    8月11日   8月12日   8月13日

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米国、自己破産申請者34%増、過去4年間で最高 (投資蚊)
2009-08-12 21:15:40
【大紀元日本8月12日】
 米国破産協会(ABI)によると、今年7月、米国での自己破産申請者数は12万6434人に達し、昨年同期比の34%増。6月だけでも昨年比の8.7%増で、2005年10月以来の高水準を記録した。米国経済の不況に加え、失業率の急増と不動産価格の暴落が起因とされる。

 ABI専務取締役サム・ジェルダノ氏は、今年度の自己破産申請者の数は140万人に昇ると予測。

 破産申請者の中では、借金の大半または全額免除が適用される破産法第7条に基づく申請者数が最も多い。政府が借入人を支援して詳細な返済計画を立てる、第13条に基づく申請者数は、28.3%。

http://jp.epochtimes.com/jp/2009/08/html/d75971.html

自己破産急増→銀行破綻急増 ですか。
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7月の米住宅差し押さえ件数、過去最高を更新 (投資蚊)
2009-08-14 00:57:36
[ニューヨーク 13日 ロイター] 米不動産仲介会社のリアルティトラックによると、7月の住宅差し押さえ登録件数(デフォルト通知、競売、銀行による担保権行使を含む)は36万件を上回り、2005年1月の調査開始以降の最高水準となった。

 これは、住宅ローンを抱える355世帯中1世帯の物件が差し押さえになったことになる。前年比では32%、6月からは7%の増加となった。

 デフォルト通知、競売、銀行による担保権行使の件数は年初からの7カ月間で230万件近くに達し、このうち50万件以上が銀行による担保権行使となっている。

 リアルティトラックの最高経営責任者(CEO)、ジェームス・サカシオ氏は「7月の差し押さえの数字は、過去5カ月で3度目の過去最高更新となる」と指摘し「支払いが困難になっている住宅保有者に対するセーフティーネットを整備する政府や州の継続的な取り組みにも関わらず、デフォルト通知と銀行による担保権行使はともに大幅に増加している」との見方を示した。

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJT844402620090813


米週間失業保険申請:55.8万件、継続受給者は4月来最少
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003007&sid=a8IY.FYX7cDQ

米国の失業保険の受給期間は約半年で、半年たったら、失業保険を打ち切られる。
受給者総数の減少=失業保険を打ち切られた人が多数発生

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Re: 6種類の失業指標 (world_2050)
2009-08-16 23:07:12
求職活動を完全に諦めた人を含めたU6(16.3%)というのが労働省によって公表されていたとは知りませんでした(Roubiniさんはよくこの水準に言及していましたが)。公表しているベースだと2008年7月から1年間の上昇が3.5%にとどまるのに対しU6ベースだと上昇幅が5.5%に達し、公表ベースが氷山の一角であることは、明確なようですね。どうもありがとうございました。
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