米住宅不況についても色々な情報を紹介頂いたCheeさんが紹介されていた地球温暖化に関するドキュメンタリー映画「不都合な真実」を、封切り初日の土曜日(1月20日)に、六本木ヒルズで見てきた。
この映画は、色々な意味で私には衝撃的であった。
豊富な映像、データを使い、地球温暖化の現状を浮き彫りにしているドキュメンタリーで、やや理屈的な内容も多く、そのまま万人受けするわけではないが、一方でアル・ゴア氏の個人的な生い立ち、問題意識なども交えつつ、全体としてのストーリーが練られた構成であった。地球温暖化を取り扱った作品としては、メッセージ性が強く、分かりやすい内容となっていると感じた。作られた映画の派手なエンディングは無いが、見ている人一人一人の地球温暖化への取り組みを促すシンプルなエンディングがむしろ印象的であり、多くの観客がエンディングの音楽の間も席を立たなかった。
私自身は、地球温暖化の問題の深刻さについては、5年以上前から深い懸念を持ち、日米の穏健な環境関連のNGOの手伝いなどをしてきたが、常に一部の善意ある人たちの活動から抜け出ず、多くの人の心に訴えかける強いメッセージ性が足りないことにもどかしさを感じていた。地球温暖化を示すデータは日々増え、それを示す様な現象は年々顕著となり、残された時間は刻々と短くなっているのに、それに対抗する動きは依然として緩慢なままであった。
緩慢な対策をもたらしてきた最大の要因は、最大の汚染国であるアメリカの非協力的な態度であった。京都議定書を否定し、石油業界との強いパイプで反環境的な方針を貫くブッシュの2004年の再選は、正に暗澹たる気持ちで見ていた。
環境問題の難しさは、その抜本的な対策のためには、一部の善意ある人たちのボランティア精神では足りず、社会全体の一丸となった取り組みが不可欠なことである。これまで、環境問題への取り組みには、一部の熱狂的な人々の取り組みは感じられても、多くの人にそのメッセージが届くことは無かった。クリティカルマスに達しない取り組みは、いつまで経っても、一部の人の自己満足の様にすら感じられた。
そうした思いを抱き続けてきただけに、この様な映画が作られ、広く配信されていること自体が、私には大きな驚きであった。アメリカでは、一部のマイナーな映画館での上映が中心であったようで、日本でも上映している映画館こそ少ないものの、東京でも六本木ヒルズや有楽町などのメジャーな場所でも上映されている。
もちろん、「科学的証明ができないことや企業が商売にしようとして いるんじゃないか、とかいう指摘」などの批判は、あるだろうし、民主党による選挙キャンペーンの一環との見方も当然あるだろう。ただ、この映画を通じて訴えている「不都合な真実」が本当に真実である限り、それぞれの立場に立脚した断片的な批判を気にする必要は余り無いと思う。
カタリーナの悲劇、絶えることの無い異常気象のニュースなど、待ったなしの状況の中で、遅まきながら、色々な風向きの変化が目に見えてきている。米国においては、これまで州レベルでは色々な試みがなされていたが、連邦レベルでも、昨年の中間選挙で民主党が勝利したことによって風向きが変わることが期待される。
また、環境への取り組みが、企業にとっての競争力の源泉となる状況が顕在化してきている(映画にもとりあげられていたが、直近の自動車業界における日本メーカの躍進と米国メーカの不振は最も良い例)。
地球温暖化の問題の解決に当っては、一人一人の市民は、自分に出来る環境に良いことを取り組む、というのが第一歩だということは間違いないが、目標の高さを考えると、恐らくそれだけでは足りないと思う。おそらく、環境への取り組みが、一人一人の良心によるだけではなく、今の人類の多くのモチベーションの源泉となっているマーケットの原理に取り込まれ、環境問題の解決に向けた色々なイノベーションが多くの人々に受け入れられ、環境に強いことが富と競争力の源泉になり、トレンドの最先端になっていくことが必要不可欠な様に感じられる。
そういう意味で、我々一人一人が、個人のレベルで意識を改めること、そしてそれを一人でも多くの他人に伝え、大きな消費者の波を起こしていくことが重要だろう。消費者は、現代消費社会におけるキングであるが、消費者とはとりもなおさず、我々一人一人の集合体であろう。また、私はネット社会の発展が、この大きな変化を助ける重要なインフラとなることも期待している。
前置きが長くなったが、是非「不都合な真実」を見ることをお勧めします。そして、出来ることから始めることを。
http://www.futsugou.jp/
Cheeさんのページは以下の通り。
http://blogs.yahoo.co.jp/giantchee2/26718871.html