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世界の将来について、一緒に考えていくブログ
-2006年から大恐慌の到来を予想
-6年半ぶりに投稿

大恐慌!? その77  米経済:史上最大級の崩壊に向けた準備をほぼ完了

2007-03-30 01:44:31 | 世界経済

(今回からシリーズ名を「(大)不況!?」から「大恐慌!?」に変更)

最近の米経済を巡る一連の経済指標とサブプライム問題などの動きを見ていると、崩壊に向けた準備をほぼ完了した様に見える。ソフトランディングの美名のもとにバブルをぎりぎりまで温存したため、崩壊は史上最大級となる可能性がある。Cheeさんお奨めのNew York University教授Nouriel Roubini氏は、いつレセッションに入るかよりも、ハードランディングがどれほど厳しいものとなるかに議論の焦点が急速に移りつつあると指摘しているが、私も同感である。 (※1)

既に米住宅市場は深刻な不況に陥っているが、その崩壊が一般の経済に波及する悪循環のプロセスはいくつもある。これまでばらばらに指摘してきたものを以下に整理してみる。

☆悪循環1

 1.新築住宅販売数減 → 2.住宅着工件数減 (GDPの民間住宅投資減)→ 3.住宅完成件数減 → 4.住宅関連雇用者減 → 5.消費減 → 6.GDP減

☆悪循環2

1. → 7.住宅価格の下落 → 8.不動産含み益の減少 → 9.ホームエクイティローン等での引き出しの減少 → 5.

☆悪循環3

1.新築住宅販売数減 → 2.住宅着工件数減 (GDPの民間住宅投資減)→10.(遅行して)民間設備投資の減 

以下、それぞれの要素について見てみる。

1.2月の新築住宅販売数が、前月比3.9%減、前年比18.3%減の84万8,000戸(予測98万5,000戸)となった。 2000年6月(79万3000戸)以来の低水準。在庫水準は販売実績の8.1カ月分となり、1991年1月(9.4カ月分)以来の高い水準になった。合わせて、11月から1月にかけての実績も下方修正された。 ピークからは38%下落(※1)。

特筆すべきは、サブプライム問題が表面化し、一気に貸し出し基準等が厳しくなった3月以前で既にこの状況であると言うこと。サブプライム問題による貸付基準の厳格化は需要を減らし、抵当流れの物件増は供給増をもたらすので、市況は一層悪化する。また、2月は新築住宅販売が大きく伸びる月。春の商戦に最後の期待をかけていた業界にとっては、救いのない春商戦となる見込みは強くなっている。一部の当局者が言う「底入れ」と言うよりは「底割れ」と言う状況。

2.住宅着工件数は、1月だけで14.4%下落しており、ピークからは38%下落。

3.住宅完成件数は、2月で-9.4%下落し、ピークから約25%減。更に下落が加速し、住宅着工件数の落ち込みに追いつくのは時間の問題。

4.しかし、住宅関連雇用者はピークから4%しか減っていない。完成件数の落ちが最近始まったばかりである事、住宅会社が市況の回復を期待して余剰人員を吸収していることが想定されるが、12―2月期決算でKBホーム84%減益、レナー73%減益など、米住宅大手は大幅減益を強いられており、先行きの見通しも不透明感が強まっているため、余剰人員をプールしている余力はない(※2)。住宅関連雇用者の減少が1.~3.に追いつくのも時間の問題。ピークで約350万人が30%更に落ち込むと、100万人以上とマグニチュードは大変大きく、下手をすると近々毎月10万人以上の雇用者減効果をもたらす可能性がある。このプロセスが始まると、半年くらいは雇用者が減りこそすれ増えない時期に突入する。おそらく、この段階で、不況を否定している多数派も諦めと受け入れの心境に変化し、株価の下落を加速しよう。

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/03/why-residential-construction-hasnt.html 

5.そして消費。信頼感指数、ミシガン指数など消費に関連した指数は軒並み予想以上の下落。

http://www.daikiusa.com/index.html

また、サブプライムローンの問題は、住宅ローンだけでなく、オートローン、クレジットカードなどにも波及が懸念されている。

更に、ファンダメンタルズが急激に悪化しているこのタイミングで、イラン情勢緊迫から原油高となっていることは崩壊のプロセスを加速しよう。

7.8.9.のプロセスは着々と進行しつつあるが、資産効果を支えていた株高も調整局面入りしたことで、一層消費を弱くする効果を持つ。1月の個人貯蓄率はー1.2%であるが住宅バブル以前の2000年以前くらいの水準の+2%(歴史的にはずっと高い)に正常化するだけで、個人消費をー3%程度、GDPの7割を占めるとしてGDPをー2.1%程度落す効果がある。

10.

企業設備投資の先行指標となる2月の航空機を除いた非国防資本財受注は、前月比1.2%減(予想+2.3%)と、1月(-7.4%)に続き下落。

New York University教授Nouriel Roubini氏は、この受注の数値は、米経済が2007年2Qから不況入りすることを確認するものとしている(※1)。

  

 ※1

 ◎Durable goods data and investment data point to US hard landing in 2007

 http://www.rgemonitor.com/blog/roubini/186088/

 

 ※2

◎More on February New Home Sales

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/03/more-on-february-new-home-sales.html

◎February New Home Sales: 848 Thousand

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/03/february-new-home-sales-848-thousand.html

 

Click on graph for larger image.

 

 

 

 

 

 


The second graph shows Not Seasonally Adjusted (NSA) New Home Sales for February.

Sales have fallen back close to the levels of '96 and '97.

 

 

 


The third graph shows monthly NSA New Home sales. This provides a different prospective of the housing bust.

 

 

 



 

 

 

 

 

 





This represents a supply of 8.1 months at the current sales rate.

 

 cancellations are at record levels. Actual New Home inventories are much higher - some estimate about 20% higher.

2月新築住宅販売高:84万8,000戸

http://www.daikiusa.com/indicators/past/newhome_sales.html

新築住宅販売高グラフ

米商務省発表の2月新築住宅販売高は、前月比3.9%減の84万8,000戸となった。市場予測98万5,000戸を下回っている。

販売価格の中央値は、前年同月比0.3%低下の25万ドル。在庫は前月比8,000戸増の54万6,000戸。在庫率は前月の7.3ヶ月から8.1ヶ月まで増加。

マーケットでは、住宅市場が底抜けするリスクを指摘する統計と評価されている。先週の中古住宅販売高が良好だった事で、年末に向けての住宅市場に楽観的な見方が強くなっていたが、こうした見方を完全に否定する内容となっている。在庫率は16年ぶりの高水準に達しており、住宅購入予定者が価格低下を見込んで買い控えの姿勢を強めている。KBホームなどの建設業者の問題もあり、当面は住宅市場の回復が難しくなる可能性が高い。

◎米新築一戸建て住宅販売、2月3.9%減

http://www.nikkei.co.jp/kaigai/us/20070327D2M2601Z27.html

 【ワシントン支局】米商務省が26日に発表した2月の新築一戸建て住宅販売件数(季節調整済み)は年率換算で84万8000戸となり、前月から3.9%減った。2000年6月(79万3000戸)以来の低水準で、事前の市場予想(100万戸前後)も下回った。前月比マイナスは2カ月連続で、前年同月からは18.3%減った。

 2月の販売件数の減少を受け、在庫水準は販売実績の8.1カ月分となり、1991年1月(9.4カ月分)以来の高い水準になった。

◎Why New Home Sales is a Much More Significant Measure of the Housing Recession than Existing Home Sales. And the Worsening Housing Recession…

http://www.rgemonitor.com/blog/roubini/185580/

 

※3 

◎米KBホームの12―2月期は84%減益、市場の見通し不透明

http://today.reuters.co.jp/news/articlenews.aspx?type=businessNews&storyID=2007-03-23T064017Z_01_NOOTR_RTRJONC_0_JAPAN-252237-1.xml

[ニューヨーク 22日 ロイター] 米住宅建設大手のKBホーム(KBH.N: 株価企業情報 , レポート)が22日発表した第1・四半期(12―2月期)決算は、純利益が2750万ドル(1株当たり0.34ドル)となり、前年同期の1億7330万ドル(同2.01ドル)から84%減少した。住宅差し押さえの増加や、住宅ローン融資基準が厳格になっていることから、セクターの低迷が長引く可能性があるとの見方を示した。

 ロイター・エスティメーツのアナリスト12人による1株当たり利益予想は平均で0.23ドルだった。

 売上高は、主に住宅売上高が20%落ち込んだことが響き、19%減の17億7000万ドルとなった。住宅売上高の落ち込みは、平均販売価格が5%下落したことや販売契約の完了が16%減少したことを反映した。新築住宅の純受注も12%減少した。ただ解約率は前四半期の48%から大幅に改善し、31%となった。

 ジェフリー・メズガー最高経営責任者(CEO)は声明で「延滞や住宅差し押さえ率の上昇で、市場への住宅供給が増加し、住宅価格の新たな下向き圧力となる可能性がある」と指摘。「このような状況下では、住宅市場がいつ安定するか予測することは困難だ」と話した。

 ◎米住宅大手レナー、純利益73%減・06年12月―07年2月期

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070328AT2M2800K28032007.html

 【ニューヨーク=財満大介】米住宅大手レナー・コーポレーションが27日発表した2006年12月―07年2月期決算は、純利益が前年同期比73%減の6860万ドル(約80億円)になった。先週、84%の減益を発表したKBホームなど、米住宅販売会社の収益の落ち込みが深刻化している。

 レナーのミラー最高経営責任者(CEO)は、サブプライム(信用力の低い個人向け住宅ローン)問題で市況の悪化に拍車がかかっていると指摘。「市場の安定がいつになるか分からない」とコメントした。

 売上高は同14%減の28億ドル。前期の販売件数は前年同期比3.8%減った。新規注文は27%減少しており、ミラーCEOは前年並みを保つとしていた07年通年の収益予想を見直す可能性も示唆した。  (10:08)

 


データ:日米の家計資産等

2007-03-23 13:09:53 | 世界経済

データとして参考になるので、備忘的に掲載。

◎米家計、純資産が過去最高・住宅ローンなど負債も急増

http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2M1500W%2020032007&g=G1&d=20070321

 2006年末の米家計の純資産が前年比7.4%増の56兆ドル(約6500兆円)と4年連続で拡大し、過去最高を更新した。住宅資産の伸びは前年に比べ半減したが、株価上昇、金利収入の増加を反映して金融資産が大幅に増えた。負債は8.8%増の13兆ドルと借金依存も進んだ。その7割を占める住宅ローンの一部では延滞問題が表面化、足元で株式市場を揺さぶる要因になっており米連邦準備理事会(FRB)も警戒を強めている。

 FRBによれば、06年末の米家計の資産は68兆9000億ドルと前年比7.7%増えた。負債13兆3000億ドルを差し引いた純資産は55兆6000億ドルと7%台の増加ペースを保った。増加率は前年の8%よりやや鈍ったが、可処分所得の伸び(4.8%)を上回った。 (07:01)

 

◎家計の金融資産、最高の1540兆円・06年末

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070323AT2C2300I23032007.html

 日銀が23日に発表した2006年末の資金循環統計(速報)によると、家計が保有する金融資産の残高は1540兆8478億円と過去最高になった。前年末より1%増えた。金融資産に占める現預金の割合が下がった一方、国債や投資信託が過去最高になるなど資金流入が目立ち、貯蓄から投資への流れが着実に進んでいることを映している。

 資金循環統計は家計や企業、政府などの経済主体ごとにお金の流れを分析した。景気回復を受けて所得が緩やかに改善し、保有資産が値上がりしていたこともあって家計の金融資産残高は2003年から増加が続いている。

 金融資産のうち、現預金は778兆6183億円と前年末に比べ0.5%減った。全体に占める現預金の割合は50.5%で、2003年からは低下が続いている。現預金のうち郵便貯金は6.5%減った。  (11:05)

 


(大)不況!? その76 不況が投資銀行の視野に入ってきた

2007-03-21 00:00:35 | 世界経済

本来、強気派のバイアスのかかり易い投資銀行においても、不況の到来についてより明確な表現が増えてきた。もともと慎重なスタンスを取っていたモルガンスタンレーとメリルリンチから、かなり強いメッセージが発せられている。

・モルガンスタンレー(Stephen Roach) ※1

 サブプライムは今日のdot-comであり、dot-com市場は経済の一部に過ぎないため、その崩壊は経済全体に大きな影響を与えない、という主張が誤りであった様に、サブプライムは一部の問題とする見方は誤りとはならないか。米住宅不況が他分野に波及するかどうかが焦点で、資産効果がネガティブに働く面を考えると、厳しい状況を想定すべき。

・メリルリンチ ※2

 年後半にメリルが予想する1%の利下げが無ければ、米住宅価格が10%下落し、不況になる可能性はほぼ100%近い。不況となった場合、歴史的はS&Pは34%下落し、下落期間は37週続く。

 

また、小売売り上げが既にピークアウトしている可能性についての分析は※3参照。

 

※1 Roach: The Great Unraveling

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/03/roach-great-unraveling.html

http://www.morganstanley.com/views/gef/archive/2007/20070316-Fri.html

Stephen Roach writes: The Great Unraveling

Sub-prime is today’s dot-com – the pin that pricks a much larger bubble. Seven years ago, the optimists argued that equities as a broad asset class were in reasonably good shape – that any excesses were concentrated in about 350 of the so-called Internet pure-plays that collectively accounted for only about 6% of the total capitalization of the US equity market at year-end 1999. That view turned out to be dead wrong.
...
This time, it’s the US housing bubble that has burst, and the immediate repercussions have been concentrated in a relatively small segment of that market – sub-prime mortgage debt, which makes up around 10% of total securitized home debt outstanding. As was the case seven years ago, I suspect that a powerful dynamic has now been set in motion by a small mispriced portion of a major asset class that will have surprisingly broad macro consequences for the US economy as a whole.

Too much attention is being focused on the narrow story ... To me, the real debate is about “spillovers” – whether the housing downturn will spread to the rest of the economy.

Kennedy-Greenspan Mortgage Equity WithdrawalClick on graph for larger image.

This is a graph of the Greenspan-Kennedy MEW results through Q3 Q4 2006, both in billions of dollars quarterly (not annual rate), and as a percent of personal disposable income.

... the US economy is now flirting with ... sub-2% GDP trajectory – while consumer demand remains brisk, a pullback in personal consumption could well be the proverbial straw that breaks this camel’s back. The case for a consumer spillover is compelling, in my view. ... the asset-dependent mindset of the American consumer, debt and debt service obligations have surged to all-time highs ... Equity extraction from rapidly rising residential property values has squared this circle – more than tripling as a share of disposable personal income from 2.5% in 2002 to 8.5% at its peak in 2005. The bursting of the housing bubble has all but eliminated that important prop to US consumer demand. The equity-extraction effect is now going the other way ... that puts the income-short, saving-short, overly-indebted American consumer now very much at risk – bringing into play the biggest spillover of them all for an asset-dependent US economy. February’s surprisingly weak retail sales report – notwithstanding ever-present weather-related distortions – may well be a hint of what lies ahead.

※2 Mortgage malaise may bring recession: Merrill

http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/03/15/AR2007031500784.html

House prices could tumble 10 percent this year and raise the chances the United States may slip into recession unless the Federal Reserve cuts interest rates to cushion the fall in economic growth, Merrill Lynch said in research notes this week.

If correct, the prospects of this scenario will prove troubling for equities investors, who could face a stock market decline of 30 percent or more as measured by the S&P 500 index (.SPX ), the brokerage said.

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However, if the inflation-fighting Federal Reserve were to keep rates unchanged to contain price growth -- instead of cutting by 1 percentage point in the second half of 2007 as Merrill expects -- then this would put the probability of an outright recession in the second half at "very close to 100 percent."

In the past, moves by financial markets to price in some risk of a recession, without a recession actually occurring, have led to an average drop in the S&P 500 of 16 percent in sell-offs lasting 13 weeks.

"But if we do end up seeing a recession, then it's game over: the historical record shows that the average decline in the S&P 500 is 34 percent and the average duration is 37 weeks - more than double the magnitude and triple the duration of classic non-recessionary correction," Merrill added.

 

◎Retail Sales and Q1 GDP

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/03/retail-sales-and-q1-gdp.html

Retail Sales vs. Personal Good Consumption and RecessionsClick on graph for larger image.

 

 

 

 

 


Year over Year Real Change in Retail SalesThe second graph shows the YoY change in real retail sales (using CPI to adjust). This clearly shows the slowdown in retail spending (in real terms).

 

 

 

 

 


(大)不況!? その75 とうとう米住宅完成件数の急落が始まった

2007-03-20 23:44:12 | 世界経済

2月の米住宅着工許可件数、着工件数、完成件数が発表となった。

着工許可件数 153.2万(前月比-2.5%、前年比-28.6%、予想155万)

着工件数 152.5万(前月比+9.0%、前年比-28.5%、予想145万)

完成件数 1,66.4万(前月比-9.4%、前年比-18.4%)

着工件数が前月比+9.0%となったものの、前月-14.3%落ちた反動の面もあり、前年比では-28.5%と厳しい状況で、以下のグラプを見れば分かる様に下落トレンドは続いている。より注目するべきは、想定どおり、とうとう着工件数の急落に遅行した完成件数の急落が始まったこと。数十万人規模の住宅建設雇用者の減少がこれに続くものと推測される。

なお、NAHB(National Association of Home Builders)発表の3月のHMI(Housing Market Index)は、先月の39(当初発表40から下方修正)から36に下落。週間ローン申請数からも推測された通り、住宅需要の面でも底打ちとは言い難い状況が現れている。そして、サブプライムを始めとした貸し出し基準の引き締めが今後追い討ちをかける。

※1 Housing Starts and Completions

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/03/housing-starts-and-completions.html

 

とうとう完成件数の急落が始まった。

 

 

 

 

 




着工件数(6ヶ月先にずらしている)、完成件数、住宅建設雇用者のグラフ。完成件数と相関性の高い住宅建設雇用者数の急落が次のステップ。

 

 

 

 

※2 Builder Confidence Declines in March

http://calculatedrisk.blogspot.com/2007/03/builder-confidence-declines-in-march.html

http://www.nahb.org/news_details.aspx?sectionID=148&newsID=4258

Click on graph for larger image.


(大)不況!? その74 過去の金融恐慌に学ぶ「各自勝手に逃れよ」

2007-03-14 01:23:07 | 世界経済

2月の米小売売上高は前月比+0.1%(予想+0.3%)、自動車を除くベースで-0.1%(予想+0.3%)と予想を下回った。強気派の虎の子である雇用と個人消費は、両方とも足元が覚束無くなって来た。

一方、サブプライムローンを手がけるニューセンチュリーファイナンシャルは、12日S&Pから債務不履行に陥っているとみなす「D」に格下げされ、また債務の虚偽記載の疑いで米連邦地検が刑事捜査を進めているという。また、カントリーワイドも収益が不安定になるかもしれない見通しを示した。

http://finance.yahoo.com/q/bc?s=NEW&t=3m

New Century Financial Corp. (NEW)

http://finance.yahoo.com/q/bc?s=CFC&t=3m

Countrywide Financial Corp. (CFC)

 

NTタイムズに、米サブプライムローンについての詳しい記事が載っている。特に目立つのはローン詐欺の横行であり、金融引き締めが今後の住宅販売数を想定以上に下落させることが懸念されている。

http://www.nytimes.com/2007/03/11/business/11mortgage.html?pagewanted=1&_r=1

・米住宅ローン市場は6.5兆ドル。昨年発行されたローンの35%がサブプライムローン(2003年は13%)

・ローン詐欺に関して、

 収入額を自己申請すればよいローンでは90%が収入を5%以上、60%が収入を50%以上過大に報告(I.R.S.)

 ドイツバンクの昨年のサブプライムローンの40%がLiar loan(2001年は25%)

・住宅ローンの不動産の評価額を市場価格にあわせる必要があるのは格下げされた時だけのため、市場の悪化が住宅ローンに反映されるのが遅れる。

 

一連の米経済の動きを紐解く上で、私自身大変参考になると思う書籍を紹介する。

故C.P.キンドルバーガーMIT教授(2003年没)の「熱狂、恐慌、崩壊 ~金融恐慌の歴史~」(第四版2000年の邦訳。原題"Manias, Panics and Crashes: A History of Financial Crises")

http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_ss_b/503-7449385-1163914?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%94M%8B%B6%81A%8B%B0%8DQ%81A%95%F6%89%F3

経済・社会の変化によって色々な前提条件が変わっているので、そのまま繰り返すと考えるのは誤りであるが、過去の金融危機・恐慌の歴史を学ぶことは、今起こりつつあることを理解する上で、役に立つ点も多いと思われる。この本を読むと、今起こりつつあることと過去との類似性に驚くとともに、如何に我々が歴史から学んでいないかも思い知らされる。

典型的な危機は、次の様なプロセスを辿る。

1.投機熱 → 2.火に油(通貨膨張) → 3.詐欺の登場 → 4.決定的段階 → 5.伝染

以下、いくつか印象的な表現を抜粋して紹介したい(→は私が考える当てはまる事例)。

1.投機熱

p.21 企業あるいは家計は、他の人々が投機的な売買によってもうけているのを見て、自分たちもそうしようとするようになる。・・・「友人が金持ちになるのを見るほど、心の平和や判断力を乱すものはない。」

p.22 投機の終わりに近い段階では、真に価値のある対象から離れ、確実性の乏しい対象へと向かう。

2.火に油(通貨膨張)

p.79経済が投機の陶酔状態に陥るときには、予定以上に多くの通貨が創出される事になるであろう。

 →ARMなどの新しい手法によるローrンの拡大

p.93(世界大恐慌の前など)投機への熱中と株式市場の活況が頂点に近づくにつれて経済界は沈滞に向かった

 →住宅市場の崩壊?製造業の不況入り?

3.詐欺の登場

p.108崩壊と恐慌には、「各自勝手に逃れよ」 という格言があるように、自らを救うためにいっそうごまかしがつきものである。そして恐慌の兆候として、しばしば詐欺、窃盗、横領、いかさまなどが現れる。

 →まさにこのステップを踏んでいる。

p.116詐欺や横領が発覚すると、金融不安が高まり、暴落や恐慌を促進する。

p.127アメリカにおける1920年代の10年間は、「世界にかつて例のないゆがんだ巨額の金融が行われた時代」と呼ばれた。

  →今ととても似ていないか?

4.決定的段階

p.142陶酔状態の終期と、昔の著作家たちが急激な反動と信用の回収と呼んだ状態(今日の言葉では暴落もしくは恐慌)との中間の状態を表すために使用される他の言葉としては「不安」「危惧」「緊張」「切迫」「圧迫」「気迷い」「不穏な情勢」「脆さ」「市場における前途不吉な下落」「雷のきそうな雲行き」「嵐の前の重苦しさ」「しなった弓がいまにもピシッと折れそう」

 →まさに今か? 

p.142「信用の全面的な崩壊は、どれほど短期間のものであっても、大地震より恐ろしい」

p.149危機の勃発が企業社会にとって常に意外なこととして現れる

p.151危機の遠因は投機と信用の拡大であり、近因は、経済金融の制度についての信頼感を失わせ、人々に破産の危険を考えさせ、商品・株式・不動産・為替手形・約束手形・外国為替、その他何であれ現金に換えようとする動きをもたらすいくつかの出来事である。近因それ自体は、ありふれたことである。すなわち、破産、自殺、失踪、不正の発覚、ある借り手への信用供与の拒絶、大立物を引きおろす様な何らかの考え方の変化などである。物価は下落する。期待は裏切られる。市況は目まぐるしく変化する。投機家たちが、借金をもとに投機をする以上、物価の下落は投機家をしていっそう利ざやかせぎ、あるいは現金の手当を必要とさせるようになり、果てはよりいっそう換金を促進させるようになる。物価がさらに下落すると、銀行貸し出しは引き締めに転じ、商店、銀行、ビルブローカー、仲買店などの倒産がぼつぼつ現れる。信用制度自体が不安定になり、換金競争が進行する。

 →これまでは綺麗に過去の歴史を繰り返しているように見えるが、次のこのステップはどうだろう?