投資蚊さんにコメント頂いているが、米失業率が5.0%→5.5%に急騰、雇用者数も3月が▲7千人、4月が▲8千人と更に下方修正された上で、5月が▲4.9万人減(※1)。
失業率が異常値だ、ととらえたい方もいらっしゃるだろうが、
でも紹介している通り、今のBLSの速報は新しく出来た会社の雇用増分の反映の仕方が上手くできていないため、好況期は控えめに、不況期は多めに出やすい構造のため、実態は失業数よりも失業率に近い悪化である可能性が高い点に留意。
さて、失業率急騰を受け、当然のことながらドル安、米株大幅安となったが、あろうことか、FRBから過去3日間で大量供給された資金は、はけ口を求めて原油市場に殺到し、WTIは現在前日比+$6.4の$134.23となっている。
失業率急騰→原油急騰、という因果関係はあまりに異常であるが、これもFRBが、本来崩壊せざるを得なかったバブルを温存するために、半永久的に無制限な資金を市場に供給するというFRBの「奇策」がもたらしたモラル・ハザードそのものであろう。
原油高→インフレ懸念→金利上昇圧力、ということで、30年国債の利回りは現時点前日比-0.09%の下落にとどまり、4.65%。金利が下がらないことで、住宅市場の不況が長続きし、評価損増、個人消費減の効果をもたらしている。
投資蚊さんご指摘の以下の記事(※2)の通り、これまでよりも大きな銀行も含めた破たん懸念も出ている様だが、更なる悪化は必至だろう。
なお、これまでのところ、本日は米FRB、3日物レポで32.5億ドル供給 にとどまっている。
いつまでFRBがこの奇策を続けるかであるが、私見では続けられる限り続ける。つまり、いまさら引き返せない。ではいつまで続けられるかといえば、もっとも遅くても、減税策の効果が尽きて、すでに相当弱い米個人消費が急落するタイミングであろう。
ただ、このタイミングまで引き延ばすことのリスクは非常に高く、引き延ばしによって実力以上の原油や資源価格、金利、株価等が温存されるため、
・個人消費が急落し、
・金利高で住宅不況が続き、
・企業のデフォルト率も高まる中で、
温存してきたバブル(特にCDS)をクラッシュさせることになる。と言っても、完全にクラッシュさせることで、世界経済は限りない混乱をもたらすことから、おそらく損失をFRB、ないしは米政府を通じで米国民が背負うことになろう。
大恐慌!?その253 CDS危機の本質-歴史的低水準のデフォルト率を上げられないいびつさでも紹介している通り、CDS市場は過去3年間で10倍近くに拡大し、現在残高60兆ドル(約6,000兆円)ともいわれるバブルの本丸であろうが、これを適正サイズに戻すには何が必要か。 何が適正サイズがわからないが、仮に1/3の20兆ドルが適正とすると、40兆ドルの縮小が必要。そのうちの損失が1%で0.4兆ドル(40兆円)、10%で400兆円。400兆円を3億人弱の米国民で割ると、一人当たり100~150万円程度。
リアルタイム財政赤字カウンタ(http://www.kh-web.org/fin/)によると現在の日本の財政赤字は一人当たり850万円とのことであるが、日本よりもはるかに財政が健全な米政府であれば、全く支えきれない額ではないだろうが、政治的決断に至るプロセスや、それに伴う政府活動の制限など、いろいろな支障が生じよう。
いずれにしても、そこまでいかないと、本質的な解決の出口は見えてこないとの感を強めた次第である。
※頂いたコメントに返事できず、すいません。後で時間を見つけて返事するようにします。
※1UPDATE1: 5月米失業率は3年半ぶりの高水準、非農業部門雇用者数は予想を下回る減少幅
http://jp.reuters.com/article/marketEyeNews/idJPnJT818014020080606
米労働省が6日発表した5月の米雇用統計によると、
失業率が5.5%と2004年10月以来の高水準へ上昇し、米経済が依然として景気後退のリスクに直面していることを示す形となった。
4月の失業率は5%だった。0.5%ポイントの上昇は22年ぶりの大きさ。非農業部門雇用者数は5カ月連続で減少し、4万9000人減となった。
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5月 4月 4月速報 3月 3月前回 2月 1月
非農業部門雇用者増減 -49 -28 -20 -88 -81 -83 -76
失業率(%) 5.5 5.0 5.0 5.1 5.1 4.8 4.9
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http://calculatedrisk.blogspot.com/2008/06/jobs-unemployment-rate-jumps-to-55.html
Click on graph for larger image.
Unemployment jumped sharply and the rise in unemployment, from a cycle low of 4.4% to 5.5%, is a strong recession indicator.
雇用者も1年間で23.6万人増にとどまり、ほぼゼロ成長。
※2 http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-32134420080606
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総裁は「従来との比較で、今後はより規模の大きい金融機関が経営破たんに陥る可能性がある」とし、「今日の経済環境における不透明性により、銀行業界も個人も銀行規制当局も、相当に困難な局面に直面し続けるだろう」と述べた。
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