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世界の将来について、一緒に考えていくブログ
-2006年から大恐慌の到来を予想
-6年半ぶりに投稿

大恐慌!?その412 禁断の果実の魔力と長期金利の上昇

2009-05-29 08:48:20 | 世界経済

禁断の果実である「臭いものに蓋」の効果は大きく、消費者信頼指数も上昇し、景気回復期待感が高まっている。ただ、高まる期待感と米政府の財政悪化の懸念から米長期金利や原油価格は上昇中。※1に示すように、まだ住宅ローン金利は上昇していないようだが、長期金利とのスプレットは歴史的水準まで下がっており、これ以上縮小しないとすると、今後長期金利がさらに上昇に伴い、住宅ローン金利は上昇を始めよう。もし、今の期待が実力以上だとすると、実力以上に高められた期待が実態の回復を遅らせる最悪のケースとなる可能性もあろう。

※2の様に直近の住宅価格はまだ予想以上のペースで下落。前月比ではマイナス2.2%、年換算25%以上の壮絶なもの。これまでとの違いは時価会計の緩和により、金融機関の損失として現れないこと。まさにこれが禁断の果実の魔力。ただ、その分、金融機関のバランスシートの含み損がどんどんたまるかつての日本の様な状況。

※3は、これまでの住宅価格の下落ペースは、ストレステストのベースケースでなく、悲観ケースに近いことを示唆。失業率、住宅価格下落という二つのキーファクターでストレステストが甘すぎることは明白だろう。

※4は賃料、収入と比した住宅価格の推移。今回の住宅バブルが始まる前の水準からはまだ1~2割高く、その水準を下回って、オーバーシュートする可能性も含め、まだ米住宅価格の水準は高すぎることを示唆。

※5は、いよいよサブプライムでなく、信用度が高いはずのプライムローンの延滞に主役が移ってきたことを示唆。この辺は、ストレステストにちゃんと織り込まれているのだろうか?

※6は商業用不動産でさらに格下げの可能性。

※7は、現在統計上出ていない潜在的な在庫はたくさんあり、住宅市場は回復には程遠い、という見方。

高まる期待と厳しい実態。この組み合わせが示唆する将来はどんなものだろうか?

 

 

※1 Mortgage Rates: Moving Higher

http://www.calculatedriskblog.com/2009/05/mortgage-rates-moving-higher.html

※2 3月の米ケース・シラー住宅価格指数、予想以上の落ち込み

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-38219320090526

スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)/ケース・シラーが26日発表したデータによると、3月の主要20都市圏の住宅価格動向を示す指数は 前年比18.7%低下した。また、第1・四半期の住宅価格は前年同期比で過去最大の落ち込みとなった。

 3月の主要20都市圏の価格指数は、前月比ではマイナス2.2%だった。

 ロイターが集計したエコノミスト予想は前月比がマイナス2.0%、前年比がマイナス18.4%だった。

※3 Case-Shiller: House Prices Tracking More Adverse Scenario

http://www.calculatedriskblog.com/2009/05/case-shiller-house-prices-tracking-more.html

赤が3か月の実績。下の曲線である悲観ケースに近い推移。

Case-Shiller Stress Test Comparison Click on graph for larger image in new window.

 

 

 

 

 

 

 

※4 House Prices: Real Prices, Price-to-Rent, and Price-to-Income

http://www.calculatedriskblog.com/2009/05/house-prices-real-prices-price-to-rent.html

Price-to-Rent


Price-to-Rent Ratio Click on image for larger graph in new window.

 

 

 

 

 


Price-to-Income:

The second graph shows the price-to-income ratio:


Price-to-Income Ratio 

 

 

 

 

 

 

 

※5 NY Times: We're All Subprime Now!

http://www.calculatedriskblog.com/2009/05/ny-times-were-all-subprime-now.html

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Over all, more than four million loans worth $717 billion were in the three distressed categories in February, a jump of more than 60 percent in dollar terms compared with a year earlier

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※6 Potential S&P CMBS Downgrades

http://www.calculatedriskblog.com/2009/05/potential-s-cmbs-downgrades.html

 

※7 Berkshire Hathaway's Sokol: "No Green Shoots"

http://www.calculatedriskblog.com/2009/05/berkshire-hathaways-sokol-no-green.html

"As we look at the economy, I have to be honest: we're not seeing the green shoots," Sokol said ... "We think the official statistics of 10 to 12 months' backlog is actually nearly twice that amount," ...

"There is an enormous shadow backlog of about-to-be foreclosed homes and of individuals who need to sell but have time, and there are already six (for sale) signs on their block," he said.


大恐慌!?その411 縁故資本主義

2009-05-24 22:12:28 | 世界経済

大分前に紹介しようと思って、ずっとできなかった記事。大手ニュースソースでここまで赤裸々に書いてあるのは珍しい。日本の記事だからだろうが。。。

最後のデリバティブについての議論は割愛したが、これまた興味深い。

  

○焦点:米国の縁故資本主義、オバマ政権の舵取りに注目

http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPJAPAN-38009420090514

 [東京 14日 ロイター] 金融危機は米国にとってあらゆる「不都合な真実」を浮き彫りにしたが、なかでも市場関係者を含む多く人を失望させたのは、金融産業が政府・金融当局と癒着し利益を貪ってきたことが白日の下にさらされたことだろう。

 欧米諸国や国際通貨基金(IMF)は、90年代のアジア危機の原因が「クローニー・キャピタリズム」(縁故資本主義)と呼ばれるアジアの資本主義の後進性に求めたが、一部のエリートが国家権力と結びついて権益を独占し富を増やすやり方は、米国金融界と米政府・行政機構の関係にも当てはまるようだ。

 IMFの元チーフエコノミストのサイモン・ジョンソン氏は米国がこれまで採用してきた政策について、「緩い金融規制、安価な資金、持ち家促進政策など、あるものは民主党的であり、ある政策は共和党との関連が深いものだが、全ての政策には一つの共通点がある。それは金融セクターの利益に資することだ」と指摘する。

 政府と一部産業の利権が結びついて独裁的利権集団を形成し、一丸となって利益の最大化に走り、それが行き過ぎて最終的に危機に陥る道筋は、韓国、マレーシア、ロシア、アルゼンチンなどの新興国が既に通ってきたものだ。

 危機発生国を観察し、処方箋を提案してきたジョンソン氏は「米国で危惧すべきことは、腰折れ状態の景気を立て直すために迅速に実施されるべき改革を、金融界が拒む方向で影響力を行使していること。米政府は無力で影響力を排除する気も無いようだ」と言う。

 <ストレステストとIMF>

 オバマ大統領はある面では、金融機関を核とするクローニー・キャピタリズムと対峙する姿勢を見せ、金融規制強化に乗り出しているが、米大手19金融機関に対する健全性審査(ストレステスト)では、米当局が金融界の要望に柔軟に応じる格好となった。

米連邦準備理事会(FRB)は、7日のストレステスト結果公表の前に金融機関からの強い働きかけを受け、一部の対象行の資本不足額を大幅に下方修正した、と米ウォールストリート・ジャーナル紙は報じた。

 FRBは4月にストレステストの暫定結果を各行に通達したが、バンク・オブ・アメリカ(BAC.N: 株価, 企業情報, レポート)、シティグループ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)、ウェルズ・ファーゴ(WFC.N: 株価, 企業情報, レポート)は、資本不足額をFRBが過大に見積もっていると猛烈に抗議。FRBと2週間にも及ぶ個別交渉になだれ込んだという。

 IMFは4月21日、半期に一度の世界金融安定報告の中で、米銀の追加資本所要額は、普通株式でみた自己資本比率を金融危機前の水準の4%にするのに2750億ドル(約26.7兆円)、米銀の経営が安定していた1990年代半ばの6%まで引き上げるのに5000億ドル(約48.5兆円)と算定した。

 一方、米国のストレステストでは大手金融機関の追加資本所要額を746億ドル(約7.2兆円)と大幅に小さく見積もっている。

 市場では、FRBがアナリストや投資家らが予想していたものとは異なる算定基準を使用したため、全対象行の資本不足額が圧縮されたとの指摘が多く聞かれる。

 「ストレステストは、TARPがもはや1096億ドルしか残っていないという苦しい台所事情との妥協の産物だ」と東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏は言う。

 TARPとは銀行の不良資産救済プログラムで、当初は7000億ドル規模だった。

 ストレステストの検査内容は「銀行ごとに貸出資産査定が十分になされたか疑念があるほか、貸出資産の評価だけで、CDOなど証券資産の評価がなされていないとの疑念もある」と斎藤氏は言う。

規模は異なるものの、金融セクターの不良債権問題でIMFがこれまで出してきた処方箋は、国有化と大き過ぎて潰せない金融機関の分割・小規模化だった。 

 「大き過ぎて潰せないというあらゆるものは、そもそも存在するには大き過ぎるものだ」とジョンソン氏は言う。

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大恐慌!?その410 「臭いものに蓋」プロセスのその次は?

2009-05-24 22:04:34 | 世界経済

久しく投稿が滞り失礼いたしました。週末、昼夜もないような生活が続いていましたが、やっと落ち着きを取り戻しつつあります。

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少し前のニュースフローも含めて、最近の動きを振り返ってみたい。時価会計の緩和に始まった一連の「臭いものに蓋」のプロセスはとりあえず、ひと段落を見せた。

・時価会計の緩和

・マイルドなストレステストの結果発表

・当局者、金融機関トップの強気発言

・そして、金融機関の増資ラッシュ

結果として、金融機関の株価水準は、大幅な回復を見せ、金融機関は高い株価での増資を実現。景気の先行きへの楽観論もすっかり広がった。

http://stockcharts.com/h-sc/ui?s=BKX&p=D&b=5&g=0&id=0(日次)

肝心のストレステストの中身について、色々な詳細の分析を見る時間がとれなかったが、失業率前提について話をすると、4月の実際の失業率は8.9%。ストレステストの前提は2Q(4~6月)でベースケースで8.3%、悲観ケースで8.8%(※1)。4月単月で既に悲観ケースよりも悪いが、※4で示すようにその後も着々と失業保険受給総数は増加。2Qとしては悲観ケースより大きく悪い数字となろう。ちなみに、ベースケースで一番失業率が悪化する水準が8.9%であり、既にその水準に到達している。

ストレステストの必要額算定において、ベースケース、悲観ケースどちらを前提にしたのかという詳細を追いきれていない(普通はベースケースでやるものと思われる)が、 当初財務省が想定した必要資本額から、各金融機関との折衝で相当減額した、という報道があったので、いずれにしても悲観ケース以下のストレスとなろう。

ちなみに 20日になってFRBが出した見通しでは、失業率は9.2―9.6%まで悪化すると予測しており、ベースケースは不十分ということを当局自ら認めた形となる(※2)。

高い株価で増資ラッシュを済ますことで、政府が追加出資する額も抑えられるし、当局や金融機関にとっては、良いことずくめなわけだが、さて今後の展開はどうなのか?

肝心の個人消費については、米小売りは一進一退。 ※3のグラフが示唆するのは、V字回復というよりL字不況の持続、が懸念される状況。ホームエクイティなし、クレジットカードの延滞率急上昇中の局面で、一時的な株高だけが支えられる消費には限界があるとも思えるがどうか。 

過去の景気後退局面が終了する場面で必ず減少し、景気後退の終了時期をみるうえで、有効性があると考えられる米週間失業保険申請数(4週平均)は、ピークから約5%減となり、景気後退が終了に近い可能性を示しているとの見方もできるが、一方で高止まりの傾向も見られる。特に政府の景気対策による政府雇用者増の影響が大きいものと想定され、今後は、微妙な局面。いずれにせよ、給付総数は過去最高(※4)。

 

※1 Employment Report: 539K Jobs Lost, 8.9% Unemployment Rate

   http://www.calculatedriskblog.com/2009/05/employment-report-539k-jobs-lost-89.html


Stress Test Unemployment RateThe second graph shows the unemployment rate compared to the stress test economic scenarios on a quarterly basis as provided by the regulators to the banks (no link).

 

※2 米、マイナス2%成長も FRB、09年見通し下方修正

http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2M2100J%2021052009&g=G1&d=20090521

 【ワシントン=米山雄介】米連邦準備理事会(FRB)は20日、最新の米経済見通しを発表した。2009年の実質経済成長率(09年10―12月期の前年同期比)をマイナス2.0―同1.3%とし、1月の前回見通し(マイナス1.3―同0.5%)から下方修正した。失業率は9.2―9.6%まで悪化すると予測。米経済が安定的な成長軌道に戻るには5―6年かかるとの見方がFRB内で優勢になっているという。

 同時に公表した4月28、29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録によると、複数の委員が長期国債などの購入増額による資金供給の拡大に前向きな姿勢を示していたことが判明。FRBは米景気の年内の底入れを確実にするため、追加緩和も視野に金融政策を運営するとみられる。

 FRBは四半期ごとに米経済見通しを発表する。今回は4月のFOMCで正副議長や理事、地区連銀総裁の予測を集計。中央値を公表した。  

 

※3 Retail Sales Decline in April

http://www.calculatedriskblog.com/2009/05/retail-sales-decline-in-april.html


Year-over-year change in Retail Sales Click on graph for larger image in new window.

To calculate the real change, the monthly PCE price index from the BEA was used (April PCE prices were estimated as the average increase over the previous 3 months).

Although the Census Bureau reported that nominal retail sales decreased 11.4% year-over-year (retail and food services decreased 10.1%), real retail sales declined by 11.9% (on a YoY basis).

 

 

※4 Unemployment Claims: Continued Claims at Record 6.66 Million

http://www.calculatedriskblog.com/2009/05/unemployment-claims-continued-claims-at.html

Weekly Unemployment Claims Click on graph for larger image in new window.

The first graph shows weekly claims and continued claims since 1971.

The four-week moving average is at 628,500, off 30,250 from the peak 6 weeks ago.

Continued claims are now at 6.66 million - an all time record.

 


大恐慌!?その409 バフェット氏 米小売の回復には時間がかかるとの見方

2009-05-04 00:18:35 | 世界経済

大変投稿が滞ってしまいましたが、久々の米経済関連の投稿。。。

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バフェット氏は米住宅市場について、価格の低下に伴い安定感が出てきたとする一方、貯蓄率の上昇により、個人消費の急回復は望みにくいという。

実際、過去数年間の米個人消費を支えていたホームエクイティローンの引き出しは完全に底をつくだけでなく、住宅価格の下落が続き、マイナスのエクイティに苦しむ世帯が増える中で、急速な回復はなかなか見込みにくいのが現実ではないか。急落が止まったことは、大きな安心材料とはなっているが、L字型でとどまるリスクは依然多分にあろう。

5/7に延期されたストレステストの結果発表では、シティの要増資額は1兆円程度と報道されているが、一部に見られているより厳しい数字よりもかなり甘い感があるレベルであり、玉虫色の解決策が、日本の二の舞に繋がるリスクは、より高まっているかもしれない。

Buffett on Housing and Consumer Spending

http://www.calculatedriskblog.com/2009/05/buffett-on-housing-and-consumer.html

"We see something close to stability at these much-reduced prices in the medium to lower part of the market," Buffett said.

"I think our retail businesses will not do well for some time" as U.S. consumers save more, Buffett told investors at the company's annual shareholders meeting. "I would not look for any quick rebound in retail, manufacturing and services businesses."