習志野湾岸9条の会

STOP戦争への道 9条を変えるな

参院憲法審国民投票改正案、11日採決(6/4傍聴記)

2014年06月10日 | 憲法審査会
参院憲法審査会は9日の幹事懇談会で、国民投票法が定める投票年齢を「20歳以上
」から4年後に「18歳以上」に引き下げる同法改正案を11日に採決することを決めました。
与党と民主党などの賛成多数で可決され、13日(金)の参院本会議で可決、成立する見通し
とのことです。


今回は「市民連絡会、高田健氏」と「止めよう戦争への道!百万人署名運動」の6/4の審査会の傍聴記を転記します。

「市民連絡会」ブログより転記。
来週月曜日、憲法審査会幹事懇が開催されます。
内容は、11日の憲法審査会開催についてです。
いよいよ、11日に採決となるか、その場合の附帯決議はどうするのか、ということが議論される予定です。
(以下はNHKニュースウェーブを引用)
参議院憲法審査会で、憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案に関する参考人質疑が行われ、
公務員の運動の在り方や、国民投票の投票年齢と選挙権が得られる年齢の関係などについて意見が出されました。
この中で、自民党と公明党が推薦した九州産業大学准教授の大西斎氏は、公務員の運動の在り方について
「個人であれ組織であれ、公務員が必要以上に投票に影響を与えることは看過できず、政治的中立性の点から
一定の制約が必要だ」と述べ、さらに制限すべきだという考えを示しました。
民主党、共産党、社民党が推薦した弁護士の伊藤真氏は、改正案が国民投票の投票年齢を改正法の施行から
4年後に18歳以上に引き下げるとしていることに関連して、「今の14歳が国民投票に参加する可能性があり、
中学校や高校で国民主権や民主主義を理解させる憲法教育が必要だ」と述べました。
みんなの党が推薦した慶応大学教授の小林良彰氏は、「国民投票の投票年齢と選挙権が得られる年齢は一致させ
るべきだが、民法の成人年齢などは、おのおのの法律の立法趣旨に則して決められるべきだ」と述べ、成人年齢
などの引き下げは慎重に検討すべきだという考えを示しました。
民主党、共産党、社民党が推薦した名古屋大学大学院教授の愛敬浩二氏は、裁判官や警察官などは賛否を知人に
働きかける勧誘運動が禁止されていることについて、「裁判官などが見識と経験を踏まえて運動することは熟議の
ために必要不可欠だ」と述べ、見直しを求めました。

(止めよう戦争への道!百万人署名運動)ブログより転記
※このブログよりの転記は、今まで事務局長の「西川重則氏傍聴記」としていましたが、西川氏は
毎回欠かさず出席しているようですが、実際の傍聴記は一緒に傍聴している他の方が書かれているとの
ご指摘がありましたので、今回より「百万人署名運動」ブログより転記とさせいいただきます。
また過去掲載分もそのような認識といたします。

6月4日(水)13時から16時まで参議院憲法審査会が開かれ、改憲手続法(国民投票法)改定案について
2回目の参考人質疑が行われました。
これで2週連続して月曜日、水曜日の週2回開催となり、今国会会期中の成立に向けて着々とスケジュール
が消化されています。このブログでは憲法審査会の審議内容を「速報」としてお届けすべく心掛けている
のですが、開催頻度が高いため掲載が遅れがちになってしまい、申し訳ありません。
この日の委員の出欠は、参考人4人の意見聴取(1人15分ずつ)が行われた最初の1時間は35人以上が出席しており、
委員の質疑が始まると30人前後に減少しましたが、最後の1時間は再び35人以上に回復しました(定数は45名)。
記者は2~3人で少なく、傍聴者は15人程度、私たち百万人署名運動は4人で傍聴してきました。
参考人の意見表明

まず、『NHK NEWSWEB』において、参考人の意見がどのように報じられているのかを見ておきたいと思います。
※この内容は上記の「市民連絡会」でも取り上げていますので省略します。

公明党よ、どこへ行く
審査会の場では参考人がどの会派から推薦されたのかが紹介されるわけではありませんので、後で上掲のNHKの
記事を読んで驚きました。それは、公明党が自民党と一緒になって大西氏を推薦していたことが記されていたからです。
上記のように、大西氏は公務員の運動を「さらに制限すべきだ」と主張していましたし、参政権年齢についても
「20歳で成年とするというわが国の伝統文化が守られてしかるべきだ」「わが国が培ってきた20歳の参政権を簡単に
変更していいものだろうか」などと述べていました。
党の立場と参考人の意見が100パーセント一致する必要はないと思いますが、大きく食い違っているとすればやはり
問題ではないでしょうか。

さて、この日質疑に立ったのは、発言順に山下雄平氏(自民)、藤末健三氏(民主)、石川博崇氏(公明)、川田龍平氏
(維新・結い)、松沢成文氏(みんな)、福島みずほ氏(社民)、吉良よし子氏(共産)、浜田和幸氏(改革)の8氏で、
持ち時間は15分ずつでした。
各氏の質疑の中でいちばんびっくりしたのは、これも公明党がらみになりますが、石川氏の発言でした。氏は、
「国民の憲法に対する理解をどのように向上させていくのかという観点で、たとえば憲法の趣旨をよりわかりやすくする
ような改正ということもあり得るのではないか」と述べたうえで、その例として「憲法9条では戦争の放棄は強調されてい
るけれども、自衛権というものが明記されていない」ことを挙げたのです。
私の理解しているところでは、公明党の改憲に対する立場は環境権などの「加憲」論で、9条については「戦争放棄、
戦力不保持を定めた1、2項を堅持した上で自衛隊の存在や国際貢献などの役割を憲法上に位置付けるべきか否かも、
加憲の議論の対象としてもいい」(公明党のウェブサイトに掲載されている『公明新聞』5月4日付の記事「環境権など
新たな理念も 公明、各地で憲法記念日街頭演説会」から山口那津男代表の発言を引用)というものだったと思うのですが、
あの党はついに「自衛権」の明記まで容認しようとしているのでしょうか。

公務員の政治的行為をめぐって
さて、この日は公務員の政治的行為の規制のあり方をめぐっていろいろな発言がありましたので、それらの中から、
私が興味深く感じたものをご紹介したいと思います。
まずは伊藤真氏の意見表明の中での発言です。
公務員は仕事の場面では権力を行使する側にあるが、同時に国民という主権者であるという面があるわけで、そちらの方
がむしろ重要だ。だがら、主権者たる国民である公務員に、運動に参加し自由な意見を述べる機会を与えることはきわめ
て重要であり、当然のことだと考えている。
また、公務員は99条で憲法尊重擁護義務を課せられており、いちばんの利害関係人と言ってもいいかもしれない。
自分が憲法によってどういうことを命じられるのかについて自由に意見が述べられないことになれば、それは民主的では
ないと思う。たとえば自衛官に集団的自衛権を行使できるように憲法を改正するから海外に行って武力行使をしてきなさい
となれば、言葉はきついかもしれないが国民の名によって殺人を強要される仕事になるわけだから、当事者である自衛官が
それについての意見を述べる機会が封じられてしまうことはあってはならないだろう。
憲法尊重擁護義務を課されている側の公務員の意見を聞かずして、憲法の改正の議論は前に進まないと思っている。
多くの方が誤解しているが、政治的中立性というのは職務において公正中立であるということであり、公務員一人一人の
思想、信条が中立的であるなどということはあり得ない。
個人として投票運動をしたことが、その職務の中立性を観念的にではなく現実的に、実質的にどれだけ損ねるおそれがある
のかを考えると、あらかじめ様々な法的な規制をしておく必要は全くないと考えている。
今回、特定公務員については罰則付きで運動を禁止するということになっているが、裁判官であろうが警察官であろうが
公正中立な立場で職務を行うということさえきちっと守られるのであれば、その職務を離れて個人として投票運動に参加
することは何ら問題ないと思っている。
ドイツの裁判官などは自分の部屋に原発反対のポスターを掲げたり、ミサイル配備反対のデモ行進に参加したりしているが、
むしろ目の前の裁判官がどういう政治的な信条を持っているかを明らかにすることが裁判の公正さにつながるという考え方もある。
個人としてどういう信条を持っているのかが一般の国民に明らかにされることによって、その職務が公正中立に行われているか
どうかがより厳しい目で監視されることになるからだ。
     
そして同じく意見表明の中での愛敬浩二氏の発言。
そもそも公務員法上の政治的行為の禁止それ自体の合憲性が非常に疑わしいと考えている。
日本のように包括的、画一的な禁止は比較法的に珍しいと指摘されているし、日本の学説においても違憲説が有力だと思う。
そもそも違憲性が高いと考えられている事柄をベースにして国民投票運動のあり方を議論することは疑問だと思っている。
5月21日の本審査会における船田議員の発言を見ると、純粋な国民投票運動とそうでないものの切り分けについて、
現行法で禁止されているほかの政治的行為を伴っていれば今回の改正案でも許されない行為であるとの基準を示した上で、
たとえば特定の政党、特定の候補、あるいは内閣の支持、不支持といったものがそのような行為に該当すると述べられている。

しかし、この切り分け論は疑問である。4月22日の衆議院憲法審査会で田中隆参考人が指摘されているが、憲法改正の
賛否の勧誘や意見表明は前提となっている政治認識の表明を含まざるを得ないと考えるからだ。
特定公務員の国民投票運動の禁止をめぐって、裁判官についてイギリスの例を述べさせていただく。
イギリスでは、1998年人権法が制定された際に、上級裁判所の裁判官でありながら権利章典の制定やヨーロッパ人権憲章の
国内法化、あるいは国会主権原理の法的制約という憲法の根本原理に関わる事柄に関して積極的に論文や講演で訴えた方々
がいた。
高い見識と実務経験に裏打ちされた彼らの見解に賛否はいろいろあったものの、いずれも学者の間でシリアスに受け止められ、
人権法の制定に向けて一定の理論的効果があったものと私は評価している。裁判官や検察官がその見識と経験を踏まえて
国民投票運動に参加することは、憲法改正国民投票におけるより良い熟議のために必要不可欠ではないかと考えている。      

いずれも説得力のあるしごく真っ当な見解だと思うのですが、残念ながら今回の国民投票法改定案の内容は下記のとおり
となっています(正確を期すために、衆議院憲法審査会のホームページ所載の資料をコピペします)。
(1) 純粋な勧誘行為及び意見表明についての国家公務員法等の特例並びに組織的勧誘運動の企画等に係る検討条項
① 公務員が行う国民投票運動については、賛成・反対の投票等の勧誘行為及び憲法改正に関する意見表明としてされる
ものに限り、行うことができる。ただし、当該勧誘行為が公務員に係る他の法令により禁止されている他の政治的行為
を伴う場合は、この限りでない。
② 組織により行われる勧誘運動、署名運動及び示威運動の公務員による企画、主宰及び指導並びにこれらに類する行為
に対する規制の在り方については、「改正法施行後速やかに、公務員の政治的中立性及び公務の公正性を確保する等の観点
から、必要な法制上の措置を講ずるものとする」旨の検討条項を、改正法附則に設ける。
(2) 特定公務員の国民投票運動の禁止
裁判官、検察官、公安委員会の委員及び警察官は、在職中、国民投票運動をすることができないものとする。
その違反に対し、罰則(6 月以下の禁錮又は 30 万円以下の罰金)を設ける。
さらに念の入ったことに、改定案の提出に当たって自民、公明、民主、維新、みんな、結い、生活の提出会派7党に新党改革
を加えた 8 党の間で交わされた『確認書』では、「合意に至った」項目の中に下記の3点が掲げられています。
(同じく衆院審査会のウェブサイトからコピペ)。
2 公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動の禁止規定の違反に対し罰則を設けることの是非については、
今後の検討課題とする。
3 地方公務員の政治的行為について国家公務員と同様の規制とすることについては、各党の担当部局に引き継ぐこととする。
4 改正法施行に当たり、国民投票運動を行う公務員に萎縮的効果を与えることとならないよう、政府に対して、配慮を行う
ことを求める。
現行法の附則第11条で「国は、この法律が施行されるまでの間に、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の
勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、公務員の政治的行為の制限について定める国家公務員法、地方公務
員法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされていることと比較して、
ベクトルが逆方向になっていることは明らかではないでしょうか。
『確認書』4項目目の「政府に対して、配慮を行うことを求める」という文言など、開いた口がふさがりません。
政府に配慮を求める前に、国会議員なんだから自分たちが必要なことを決めろよ!と言いたいです。国権の最高機関である
国会の会派がうち揃って(厳密に言えば共産、社民は蚊帳の外に置かれていますが)こんなことを書くなんて、情けないと
思わないのでしょうか。
参議院の傍聴規則では、傍聴人は「議場における言論に対して賛否を表明し、又は拍手をしないこと」「静粛を旨とし、
議事の妨害になるような行為を、しないこと」とされていますが、しばしばヤジを飛ばしたい気持ちになります。
今回は少し感情的な表現で終わることになってしまいましたが、ご容赦ください。(G)
(以上引用)
※改憲側のトンでも意見ばかりで、ろくな議論もないまま、11日(水)には採決可決、13日(金)本会議可決とのことです。
議論の中で公明党の譲歩を見ていると「集団的自衛権」の中での公明党の危うさが透けて見える感じです。
筆者の(G)氏でなくともこのような議論に野次を飛ばしたくなるのは当然です。


(6月9日官邸前で「集団的自衛権容認閣議決定」へ突っ走る安倍政権に対して抗議する人々・・レイバーネットより)