毎回欠かさず傍聴されている方の傍聴記を引き続き転載します
西川重則氏(平和遺族会全国連絡会代表、止めよう戦争への道!百万人署名運動事務局長)傍聴記より
衆議院をなぞるかのような審議日程
5月26日(月)13時から16時まで、参議院憲法審査会が開かれ参考人質疑が行われました。
趣旨説明〔14日(水)〕、発議者に対する質疑〔21日(水)〕に続いて、定例日(
参院の憲法審査会は水曜日に開催されるのが通例です)以外の日に参考人質疑が行われるというのは、
衆議院憲法審査会と全く同じパターンです。
参院の審査会はこの後も28日(水)、6月2日(月)、4日(水)に開かれる予定になっており、
2週続けて週2回開催という異例の日程が組まれるのも、衆院と同様です。
この日の審議は、まず4人の参考人が15分ずつ意見を述べ、その後8会派各1人の委員が15分ずつ質疑を
行うという形で行われましたが、この進め方も衆議院と寸分たがわないものでした。
この日は委員(定数45名)の出席率がかなり高く、最初と最後は40人以上、他の時間帯も35人以上が着席していました。
傍聴者は15人ほど、記者は5人以下で、ともにいつもより少なめ、百万人署名運動は3人で傍聴してきました。
参考人の意見
まず、各参考人の意見の概要を、『NHK NEWSWEB』と『東京新聞』、『しんぶん赤旗』のウェブサイトから引用しておきます。
自民党と公明党が推薦した山口県の徳山工業高等専門学校准教授の小川仁志氏は、改正案が国民投票の投票年齢を改正法の
施行から4年後に18歳以上に引き下げるとしていることに関連して「憲法改正の是非を判断する力を養うために教育の
改革が必要であり、高校3年生になる前に公民教育などを十分に行うべきだ」と述べました。(『NHK』)
徳山工業高専(山口県)の小川仁志准教授は、国民投票の投票年齢が改正法の施行4年後に「18歳以上」へ引き下げら
れることに関し「公職選挙法の選挙権年齢も速やかに同じにしなければ違憲訴訟もあり得る」と、早期の引き下げを訴えた。
(『東京新聞』)
民主党が推薦した慶応大学名誉教授の小林節氏は、国民投票の対象を拡大することについて「政策課題は政治家が責任を
持って判断すべきであり、国民投票を多用すると議会制民主主義の放棄につながっていくので賛成できない」と述べました。
(『NHK』)
小林節慶応大名誉教授は「憲法9条が海外で戦うことを予定していないのは明らかだ。明確な憲法違反だ」と強調、
解釈変更の余地はないとの考えを示した。(『東京新聞』)
共産党が推薦した東京慈恵会医科大学教授の小澤隆一氏は「国民投票の投票年齢と選挙権が得られる年齢は一致させる
べきだが、改正案は選挙権が得られる年齢の引き下げを担保しておらず、薦められない」と述べました。(『NHK』)
小沢隆一東京慈恵医大教授も「60年間培ってきた政府の憲法解釈変更は一政権のできることではない」と、
慎重な議論を求めた。(『東京新聞』)
東京慈恵医科大学の小澤隆一教授は、「憲法改正国民投票の判断能力があると立法府が判断した人たちが、普通選挙
についての判断能力がないとする根拠はない。投票権年齢を18歳にするならば、選挙権年齢も一緒に18歳にしなければ
ならない」と強調。「現行法の憲法改正手続き法にはさまざまな問題点が含まれている」と述べつつ、投票権年齢と
選挙権年齢の不一致を許す改定案は「違憲訴訟を誘発しかねない立法だ」と指摘しました。(『しんぶん赤旗』)
社民党が推薦した愛媛大学教授の井口秀作氏は、公務員の運動について「改正案では、『純粋な運動は許される』
としているが、何が許されないかを明確にしなければ公務員が萎縮してしまう」と述べました。(『NHK』)
井口秀作愛媛大教授は「憲法改正手続きの議論が進んでいるのに、解釈改憲が進むのは理解しがたい」と非難し、
行使を認めるなら改憲を目指すべきだと指摘した。(『東京新聞』)
愛媛大学の井口秀作教授は「改定案では(公務員の政治的行為を広範に規制する)公務員法等の適用を完全排除
していないので、本来、公務員であっても許される(国民投票にかかわる)意見表明が、罰則付きで(規制)適用
される危険性がある」と答えました。(『しんぶん赤旗』)
改憲派小林節氏の安倍批判
この日、質疑に立ったのは、発言順に北村経夫氏(自民)、有田芳生氏(民主)、佐々木さやか氏(公明)川田龍平氏(
維新・結い)、和田政宗氏(みんな)、吉良よし子氏(共産)、福島みずほ氏(社民)、浜田和幸氏(改革)の8氏でした。
このうち有田氏は、「小林参考人に絞って何点かお聞きしたい」として、下記のように、9条改憲論者として著名な憲法学者、
小林節氏から手厳しい安倍批判を引き出しました。この日の審議のハイライトだったと思います。
▽ 有田:小林参考人は一貫した改憲論者だと思います。その立場から、国民投票法の改正が国民主権の実効化と
評価されていることは今日のレジュメにも明らかだと思います。こうした環境が整いつつあるときに、安倍政権は
憲法96条の先行的な改定を目指しました。そのとき、小林参考人は「裏口入学」と否定的な判断をなされました。
その理由は何でしょうか。
▽ 小林: 私は安倍総理が9条の改正に堂々と打って出るのかと期待していたのですけれども、去年突然96条は
たかが手続じゃないかという乗りでキャンペーンが始まった。私にしてみれば手続じゃなくて本質、憲法が硬性憲法
でなくなったら憲法じゃなくなっちゃうというびっくりするような話でした。それで、どこぞの新聞社のインタビュー
でこれって「裏口入学」ですねと言ったら、それが全国的に流れてしまって非常に恥ずかしい思いをいたしました。
▽ 有田:憲法第99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護
する義務を負ふ」とあります。憲法9条という現行憲法の精神的核心部分を閣議決定による解釈改憲で進めるというのは、
憲法99条に違反しないものなんでしょうか。
▽ 小林:私の認識では明確な憲法違反だと思います。つまり、9条というのは、その文言とその作られた歴史的背景
からいって、専守防衛、つまり日本の自衛隊は外へ打って出ないという枠組みははっきりしておると思うんです。
賛否がどうであれ、「敗戦ごめんなさい憲法」であることは間違いない。
それから、9条の1項でまず戦争を放棄し、2項で軍隊と交戦権を否定しているということは、外へ出て戦う道具立てが
ないということですよね。外で戦うことは予定されていないんです。だからこそ、法制局がずっと専守防衛、海外派兵
の禁止を言ってきたじゃないですか。これを踏み越えるなんていうことはできないはずなんですけど、本当にびっくり
しています。
▽ 有田:防衛大学名誉教授の佐瀬昌盛先生、今から13年前に「集団的自衛権」という新書を出されまして、安保法制懇
のメンバーの一人でいらっしゃいます。この佐瀬さんがある週刊誌で、集団的自衛権とは何ぞやという基本的な認識の
共有を目指した議論はありませんでした、我々は言わば安倍さんの隠れ蓑に使われることになります、国民にとって
集団的自衛権はえたいの知れない怪物のようなもので、国民には全くと言っていいほど理解されていないことを政府は
前提にしなければなりませんと語っているんですよね。
国民的合意がない現状で解釈変更を閣議決定し、憲法を実質的に変えようとする安倍政権について、小林参考人はある
雑誌で「憲法泥棒」という表現をされておりますが、一体どういうことなんでしょうか。
▽ 小林:憲法というのは、本来、主権者国民が一時的に権力をお預けする人々を、権力の濫用をさせないために管理
する道具なはずなのですが、この間の安保法制懇の報告書は、何度読んでも、安全保障について憲法は何も書いていな
いから政府が必要と思うことを書き込んで、これを国民にこれぞ憲法であるといって下げ渡してよろしいというふうに
読めちゃうんですね。
つまり、国民の持ち物の憲法を国民の持ち物によって管理されるべき権力者がひょいと取り上げて、これが憲法だ、
おまえたちに下げ渡す、これって持ち主が逆転しちゃっているじゃないですか。だからそれを「泥棒」だと言ったんで、
別の表現としては「ハイジャック」と言ったんですけれども、その思いは変わりありません。
一般国民にしてみれば、集団的自衛権という概念は分かりづらい話題ですよね。国民、大衆が理解していないときに、
尖閣諸島って危ないじゃないですか、何とかしないとアメリカと手切られたら困るじゃないですか、これ一種の強迫ですよね、
「オオカミ少年」ですよ。
▽ 有田:5月28日、2人の元内閣法制局長官を含めて憲法学、国際法、それから安保外交の専門家の方々が「国民安保法制懇」
これはまだ仮称だそうですけれども、設立されると聞いております。先生もそのメンバーに入っていらっしゃいますけれども、
この懇談会の目的はどこにあり、これから何をなされるんでしょうか。
▽小林:安倍総理の私的懇談会が、我々、学識経験者としては聞くに堪えないような内容のものを世の中に公表してくだ
さったので、ずっとその過程で反論してきて無視された人間としては、きちんと責任ある学識経験者が語るとこうなるん
だよということを、どういう形になるかまだ決まっていません、一番いいのは逐条反論みたいにすると、何か、お利口
とおばかみたいで分かっていいじゃないですか。
そういう文章を作って国民を啓蒙することによって、あの最大政党の自民党の中にそれを良心的に理解してくれる人を
つくりたいというのが、私がそれに参加した思いです。
もちろん、他の2人の憲法学者、小澤隆一氏と井口秀作氏も、最初の意見陳述や福島みずほ氏(社民)との質疑等の中で、
安倍政権の解釈改憲路線を徹底的に非難されていました。
みんなの党・和田氏のトンデモ発言
さて、この日の審議の中で私がいちばん驚いたのは、みんなの党の和田政宗氏の下記のような発言でした。
みんなの党の改憲論に復古的な色彩のあることは承知していましたが、その主眼は一院制、首相公選制、道州制等の
新自由主義的な制度の実現にあると理解していましたので、ほんとうにびっくりしました。
少し長くなりますが、紹介します。
▽ 和田:私は、憲法改正の実質的な第一歩となるこの法案が審議入りしたことを大変喜ばしく感じております。
現行憲法はGHQ草案を基に作られ、占領国の圧力の下、被占領国が制定せざるを得なかった憲法で、本来であれば無効で
あり、サンフランシスコ講和条約発効により主権回復がなされた時点で日本人の手により作り替えられるべきであったと
考えています。
日本人の手で自主憲法を制定することは、日本国と日本人の悲願であると考えております。みんなの党と日本維新の会
の有志で、今週、自主憲法制定に向けて考える「自主憲法研究会」が発足することは、極めて真っ当な議論が政党の枠を
超えて始まる大変喜ばしいことであると思っております。そして、今回の法案の審議や成立により、憲法への国民的関心
がさらに高まることはとても良いことであると考えます。
現行憲法に比べ、大日本帝国憲法は日本人の手によって考え抜かれて作られたという部分ですばらしい憲法でありました。
日本国の歴史、伝統、文化にのっとり、諸外国の憲法や法律を研究しつくし、我が国のありようを示したまさに宝と言っ
も過言ではないものでありました。当時の国際社会や学者からも大いに称賛された憲法でした。
大日本帝国憲法を現在の社会にそのまま用いることは現在の社会情勢等を考慮して修正が必要であると考えますが、
今こそ日本人の手で、大日本帝国憲法の精神に基づきながら自主憲法を制定することが急務であると考えます。
現行憲法の前文はすばらしいという議論がありますが、恥ずかしい内容であるということを認識しなくてはなりません。
その文章は、アメリカの政治文書の継ぎはぎと言える内容です。アメリカ憲法や独立宣言、大西洋憲章やテヘラン宣言など
から引用したと思われ、およそ日本国の憲法の前文としては立派でない恥ずかしい内容となっております。
さらに、日本国の平和を将来にわたって守っていくためにも、憲法改正、自主憲法の制定は急務であると考えます。
私は、戦争は起こしてはならないものであると考えます。これは、何も罪のない人々の命が失われるということはあっ
てはならないと思うからです。しかしながら、憲法9条があったから平和が守れているという虚偽の主張に惑わされては
ならないと考えます。
はたして9条があったから日本の平和は守れたのか。事実は違うと思います。北朝鮮による拉致被害者は、憲法の制約でい
かなる状況であっても奪還することができず、軍事上はアメリカの保護下にあるとも言える状況で、ベトナム戦争などに
おいては、日本の米軍基地から飛び立った軍用機によって攻撃が行われ、日本国はこれらの戦争の実質的な参戦国になったわけです。
また、憲法9条に対する誤った説明も繰り返されています。憲法9条は、戦争放棄をうたった世界にただ一つの平和憲法で、
ノーベル賞に値するという間違った主張をする人もいます。世界にも戦争放棄をうたった憲法は幾つもあり、イタリア、
エクアドルなどにおいては徴兵制を憲法に定め、軍隊の保持を明記しています。
わが国におきましても、憲法に明確に国防軍の保持を明記するとともに、不当に拉致をされた国民を奪還できるようにし
なくてはなりません。そして、この憲法9条があることが先日の中国軍戦闘機による自衛隊機への挑発行為にもつながって
いると言えます。日本側が撃ってこない、撃てないと高をくくってあのような攻撃をしたとも言えるわけです。
実は、憲法9条に対しては、現行憲法の制定に関する昭和21年の衆議院本会議において、共産党の野坂参三議員が共産党を
代表して反対をしております。野坂議員は、我が国の自衛権を放棄して民族の独立を危うくする危険がある、それゆえに
我が党は民族独立のためにこの憲法に反対しなければならないと述べているわけです。
和田氏は、持ち時間のほぼ半分を上記のような珍説の開陳に費やしました。私たち傍聴者も大いに閉口しましたが、
参考人の方々、とりわけ3人の憲法学者がいかに辟易されたか、お気の毒だったとしか言いようがありません。
今国会の参議院憲法審査会では、2月26日にも赤池正章氏(自民)のとんでも発言
(http://million.at.webry.info/201403/article_1.html)を聞かされましたが、国会にはこういう議員もいるのだとい
うことを承知したうえで、傍聴と報告を続けたいと思います。(G)
※それにしても改憲派の無茶苦茶な論理にもならない議論。恥ずかしいのは改憲派の脳内。
一体彼らはこの国をどらのようにしたいのでしょうか。
彼らこそ真っ先に戦場に行って血を流してくれるのでしょうか。血を流すのは一般国民で彼らはふんぞり返っているだけ。
西川重則氏(平和遺族会全国連絡会代表、止めよう戦争への道!百万人署名運動事務局長)傍聴記より
衆議院をなぞるかのような審議日程
5月26日(月)13時から16時まで、参議院憲法審査会が開かれ参考人質疑が行われました。
趣旨説明〔14日(水)〕、発議者に対する質疑〔21日(水)〕に続いて、定例日(
参院の憲法審査会は水曜日に開催されるのが通例です)以外の日に参考人質疑が行われるというのは、
衆議院憲法審査会と全く同じパターンです。
参院の審査会はこの後も28日(水)、6月2日(月)、4日(水)に開かれる予定になっており、
2週続けて週2回開催という異例の日程が組まれるのも、衆院と同様です。
この日の審議は、まず4人の参考人が15分ずつ意見を述べ、その後8会派各1人の委員が15分ずつ質疑を
行うという形で行われましたが、この進め方も衆議院と寸分たがわないものでした。
この日は委員(定数45名)の出席率がかなり高く、最初と最後は40人以上、他の時間帯も35人以上が着席していました。
傍聴者は15人ほど、記者は5人以下で、ともにいつもより少なめ、百万人署名運動は3人で傍聴してきました。
参考人の意見
まず、各参考人の意見の概要を、『NHK NEWSWEB』と『東京新聞』、『しんぶん赤旗』のウェブサイトから引用しておきます。
自民党と公明党が推薦した山口県の徳山工業高等専門学校准教授の小川仁志氏は、改正案が国民投票の投票年齢を改正法の
施行から4年後に18歳以上に引き下げるとしていることに関連して「憲法改正の是非を判断する力を養うために教育の
改革が必要であり、高校3年生になる前に公民教育などを十分に行うべきだ」と述べました。(『NHK』)
徳山工業高専(山口県)の小川仁志准教授は、国民投票の投票年齢が改正法の施行4年後に「18歳以上」へ引き下げら
れることに関し「公職選挙法の選挙権年齢も速やかに同じにしなければ違憲訴訟もあり得る」と、早期の引き下げを訴えた。
(『東京新聞』)
民主党が推薦した慶応大学名誉教授の小林節氏は、国民投票の対象を拡大することについて「政策課題は政治家が責任を
持って判断すべきであり、国民投票を多用すると議会制民主主義の放棄につながっていくので賛成できない」と述べました。
(『NHK』)
小林節慶応大名誉教授は「憲法9条が海外で戦うことを予定していないのは明らかだ。明確な憲法違反だ」と強調、
解釈変更の余地はないとの考えを示した。(『東京新聞』)
共産党が推薦した東京慈恵会医科大学教授の小澤隆一氏は「国民投票の投票年齢と選挙権が得られる年齢は一致させる
べきだが、改正案は選挙権が得られる年齢の引き下げを担保しておらず、薦められない」と述べました。(『NHK』)
小沢隆一東京慈恵医大教授も「60年間培ってきた政府の憲法解釈変更は一政権のできることではない」と、
慎重な議論を求めた。(『東京新聞』)
東京慈恵医科大学の小澤隆一教授は、「憲法改正国民投票の判断能力があると立法府が判断した人たちが、普通選挙
についての判断能力がないとする根拠はない。投票権年齢を18歳にするならば、選挙権年齢も一緒に18歳にしなければ
ならない」と強調。「現行法の憲法改正手続き法にはさまざまな問題点が含まれている」と述べつつ、投票権年齢と
選挙権年齢の不一致を許す改定案は「違憲訴訟を誘発しかねない立法だ」と指摘しました。(『しんぶん赤旗』)
社民党が推薦した愛媛大学教授の井口秀作氏は、公務員の運動について「改正案では、『純粋な運動は許される』
としているが、何が許されないかを明確にしなければ公務員が萎縮してしまう」と述べました。(『NHK』)
井口秀作愛媛大教授は「憲法改正手続きの議論が進んでいるのに、解釈改憲が進むのは理解しがたい」と非難し、
行使を認めるなら改憲を目指すべきだと指摘した。(『東京新聞』)
愛媛大学の井口秀作教授は「改定案では(公務員の政治的行為を広範に規制する)公務員法等の適用を完全排除
していないので、本来、公務員であっても許される(国民投票にかかわる)意見表明が、罰則付きで(規制)適用
される危険性がある」と答えました。(『しんぶん赤旗』)
改憲派小林節氏の安倍批判
この日、質疑に立ったのは、発言順に北村経夫氏(自民)、有田芳生氏(民主)、佐々木さやか氏(公明)川田龍平氏(
維新・結い)、和田政宗氏(みんな)、吉良よし子氏(共産)、福島みずほ氏(社民)、浜田和幸氏(改革)の8氏でした。
このうち有田氏は、「小林参考人に絞って何点かお聞きしたい」として、下記のように、9条改憲論者として著名な憲法学者、
小林節氏から手厳しい安倍批判を引き出しました。この日の審議のハイライトだったと思います。
▽ 有田:小林参考人は一貫した改憲論者だと思います。その立場から、国民投票法の改正が国民主権の実効化と
評価されていることは今日のレジュメにも明らかだと思います。こうした環境が整いつつあるときに、安倍政権は
憲法96条の先行的な改定を目指しました。そのとき、小林参考人は「裏口入学」と否定的な判断をなされました。
その理由は何でしょうか。
▽ 小林: 私は安倍総理が9条の改正に堂々と打って出るのかと期待していたのですけれども、去年突然96条は
たかが手続じゃないかという乗りでキャンペーンが始まった。私にしてみれば手続じゃなくて本質、憲法が硬性憲法
でなくなったら憲法じゃなくなっちゃうというびっくりするような話でした。それで、どこぞの新聞社のインタビュー
でこれって「裏口入学」ですねと言ったら、それが全国的に流れてしまって非常に恥ずかしい思いをいたしました。
▽ 有田:憲法第99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護
する義務を負ふ」とあります。憲法9条という現行憲法の精神的核心部分を閣議決定による解釈改憲で進めるというのは、
憲法99条に違反しないものなんでしょうか。
▽ 小林:私の認識では明確な憲法違反だと思います。つまり、9条というのは、その文言とその作られた歴史的背景
からいって、専守防衛、つまり日本の自衛隊は外へ打って出ないという枠組みははっきりしておると思うんです。
賛否がどうであれ、「敗戦ごめんなさい憲法」であることは間違いない。
それから、9条の1項でまず戦争を放棄し、2項で軍隊と交戦権を否定しているということは、外へ出て戦う道具立てが
ないということですよね。外で戦うことは予定されていないんです。だからこそ、法制局がずっと専守防衛、海外派兵
の禁止を言ってきたじゃないですか。これを踏み越えるなんていうことはできないはずなんですけど、本当にびっくり
しています。
▽ 有田:防衛大学名誉教授の佐瀬昌盛先生、今から13年前に「集団的自衛権」という新書を出されまして、安保法制懇
のメンバーの一人でいらっしゃいます。この佐瀬さんがある週刊誌で、集団的自衛権とは何ぞやという基本的な認識の
共有を目指した議論はありませんでした、我々は言わば安倍さんの隠れ蓑に使われることになります、国民にとって
集団的自衛権はえたいの知れない怪物のようなもので、国民には全くと言っていいほど理解されていないことを政府は
前提にしなければなりませんと語っているんですよね。
国民的合意がない現状で解釈変更を閣議決定し、憲法を実質的に変えようとする安倍政権について、小林参考人はある
雑誌で「憲法泥棒」という表現をされておりますが、一体どういうことなんでしょうか。
▽ 小林:憲法というのは、本来、主権者国民が一時的に権力をお預けする人々を、権力の濫用をさせないために管理
する道具なはずなのですが、この間の安保法制懇の報告書は、何度読んでも、安全保障について憲法は何も書いていな
いから政府が必要と思うことを書き込んで、これを国民にこれぞ憲法であるといって下げ渡してよろしいというふうに
読めちゃうんですね。
つまり、国民の持ち物の憲法を国民の持ち物によって管理されるべき権力者がひょいと取り上げて、これが憲法だ、
おまえたちに下げ渡す、これって持ち主が逆転しちゃっているじゃないですか。だからそれを「泥棒」だと言ったんで、
別の表現としては「ハイジャック」と言ったんですけれども、その思いは変わりありません。
一般国民にしてみれば、集団的自衛権という概念は分かりづらい話題ですよね。国民、大衆が理解していないときに、
尖閣諸島って危ないじゃないですか、何とかしないとアメリカと手切られたら困るじゃないですか、これ一種の強迫ですよね、
「オオカミ少年」ですよ。
▽ 有田:5月28日、2人の元内閣法制局長官を含めて憲法学、国際法、それから安保外交の専門家の方々が「国民安保法制懇」
これはまだ仮称だそうですけれども、設立されると聞いております。先生もそのメンバーに入っていらっしゃいますけれども、
この懇談会の目的はどこにあり、これから何をなされるんでしょうか。
▽小林:安倍総理の私的懇談会が、我々、学識経験者としては聞くに堪えないような内容のものを世の中に公表してくだ
さったので、ずっとその過程で反論してきて無視された人間としては、きちんと責任ある学識経験者が語るとこうなるん
だよということを、どういう形になるかまだ決まっていません、一番いいのは逐条反論みたいにすると、何か、お利口
とおばかみたいで分かっていいじゃないですか。
そういう文章を作って国民を啓蒙することによって、あの最大政党の自民党の中にそれを良心的に理解してくれる人を
つくりたいというのが、私がそれに参加した思いです。
もちろん、他の2人の憲法学者、小澤隆一氏と井口秀作氏も、最初の意見陳述や福島みずほ氏(社民)との質疑等の中で、
安倍政権の解釈改憲路線を徹底的に非難されていました。
みんなの党・和田氏のトンデモ発言
さて、この日の審議の中で私がいちばん驚いたのは、みんなの党の和田政宗氏の下記のような発言でした。
みんなの党の改憲論に復古的な色彩のあることは承知していましたが、その主眼は一院制、首相公選制、道州制等の
新自由主義的な制度の実現にあると理解していましたので、ほんとうにびっくりしました。
少し長くなりますが、紹介します。
▽ 和田:私は、憲法改正の実質的な第一歩となるこの法案が審議入りしたことを大変喜ばしく感じております。
現行憲法はGHQ草案を基に作られ、占領国の圧力の下、被占領国が制定せざるを得なかった憲法で、本来であれば無効で
あり、サンフランシスコ講和条約発効により主権回復がなされた時点で日本人の手により作り替えられるべきであったと
考えています。
日本人の手で自主憲法を制定することは、日本国と日本人の悲願であると考えております。みんなの党と日本維新の会
の有志で、今週、自主憲法制定に向けて考える「自主憲法研究会」が発足することは、極めて真っ当な議論が政党の枠を
超えて始まる大変喜ばしいことであると思っております。そして、今回の法案の審議や成立により、憲法への国民的関心
がさらに高まることはとても良いことであると考えます。
現行憲法に比べ、大日本帝国憲法は日本人の手によって考え抜かれて作られたという部分ですばらしい憲法でありました。
日本国の歴史、伝統、文化にのっとり、諸外国の憲法や法律を研究しつくし、我が国のありようを示したまさに宝と言っ
も過言ではないものでありました。当時の国際社会や学者からも大いに称賛された憲法でした。
大日本帝国憲法を現在の社会にそのまま用いることは現在の社会情勢等を考慮して修正が必要であると考えますが、
今こそ日本人の手で、大日本帝国憲法の精神に基づきながら自主憲法を制定することが急務であると考えます。
現行憲法の前文はすばらしいという議論がありますが、恥ずかしい内容であるということを認識しなくてはなりません。
その文章は、アメリカの政治文書の継ぎはぎと言える内容です。アメリカ憲法や独立宣言、大西洋憲章やテヘラン宣言など
から引用したと思われ、およそ日本国の憲法の前文としては立派でない恥ずかしい内容となっております。
さらに、日本国の平和を将来にわたって守っていくためにも、憲法改正、自主憲法の制定は急務であると考えます。
私は、戦争は起こしてはならないものであると考えます。これは、何も罪のない人々の命が失われるということはあっ
てはならないと思うからです。しかしながら、憲法9条があったから平和が守れているという虚偽の主張に惑わされては
ならないと考えます。
はたして9条があったから日本の平和は守れたのか。事実は違うと思います。北朝鮮による拉致被害者は、憲法の制約でい
かなる状況であっても奪還することができず、軍事上はアメリカの保護下にあるとも言える状況で、ベトナム戦争などに
おいては、日本の米軍基地から飛び立った軍用機によって攻撃が行われ、日本国はこれらの戦争の実質的な参戦国になったわけです。
また、憲法9条に対する誤った説明も繰り返されています。憲法9条は、戦争放棄をうたった世界にただ一つの平和憲法で、
ノーベル賞に値するという間違った主張をする人もいます。世界にも戦争放棄をうたった憲法は幾つもあり、イタリア、
エクアドルなどにおいては徴兵制を憲法に定め、軍隊の保持を明記しています。
わが国におきましても、憲法に明確に国防軍の保持を明記するとともに、不当に拉致をされた国民を奪還できるようにし
なくてはなりません。そして、この憲法9条があることが先日の中国軍戦闘機による自衛隊機への挑発行為にもつながって
いると言えます。日本側が撃ってこない、撃てないと高をくくってあのような攻撃をしたとも言えるわけです。
実は、憲法9条に対しては、現行憲法の制定に関する昭和21年の衆議院本会議において、共産党の野坂参三議員が共産党を
代表して反対をしております。野坂議員は、我が国の自衛権を放棄して民族の独立を危うくする危険がある、それゆえに
我が党は民族独立のためにこの憲法に反対しなければならないと述べているわけです。
和田氏は、持ち時間のほぼ半分を上記のような珍説の開陳に費やしました。私たち傍聴者も大いに閉口しましたが、
参考人の方々、とりわけ3人の憲法学者がいかに辟易されたか、お気の毒だったとしか言いようがありません。
今国会の参議院憲法審査会では、2月26日にも赤池正章氏(自民)のとんでも発言
(http://million.at.webry.info/201403/article_1.html)を聞かされましたが、国会にはこういう議員もいるのだとい
うことを承知したうえで、傍聴と報告を続けたいと思います。(G)
※それにしても改憲派の無茶苦茶な論理にもならない議論。恥ずかしいのは改憲派の脳内。
一体彼らはこの国をどらのようにしたいのでしょうか。
彼らこそ真っ先に戦場に行って血を流してくれるのでしょうか。血を流すのは一般国民で彼らはふんぞり返っているだけ。