西川重則氏(平和遺族会全国連絡会代表、止めよう戦争への道!百万人署名運動事務局長)傍聴記より
5月16日(木)、今国会8回目の衆議院憲法審査会が開催されました。今回のテーマは「第10章 最高法規」、
「第11章 補則」と「前文」で、衆議院法制局からの説明、各会派代表者の意見表明、自由討議の順に、
朝9時すぎから12時10分頃まで、予定の時間をやや超過して3時間強の審議が行われました(なお、憲法施行
時の経過規定等を定めた11章についての議論はありませんでした)。
衆院の審査会は木曜日の午前中に開かれていますが、今国会では初回の3月14日からほぼ休みなく開催され
(この間、審査会が開かれなかったのは、予算委員会の開かれた3月28日とゴールデンウィーク中の5月2日だけでした)、
常態に戻った審査会の様子 96条がテーマとなった前回はこれまでになく多くの委員(定数の9割に当たる45人前後)
が出席し、記者席は満杯、傍聴者は席が足りずに立ち見が出るという大盛況でしたが、この日は通常の様子に戻った感じでした。
まず、委員については、初めのうちはだいたい35人以上が出席していましたが自由討議が始まる頃からおおむね30人台前半となり、
12時が近づくと30人を割り込んで定足数ぎりぎりの25人となった時間帯もありました。
議場を出入りする者が多く、とりわけ自民党の委員にその傾向が目立つという点でもいつもの状態が復活し、とくに鳩山邦夫氏
(自民)はこの日も何度も入退室を繰り返していました(ずっと観察していたわけではありませんが5回以上は出入りし、少なく
とも2回は退出時に携帯端末を手にしていました)。
この日は何と保利耕輔会長(自民)が一時退室し、武正公一氏(民主)が代理で議長役を務めるということがありました。
いつもは出席率の高い公明党の委員が3人中1人、民主党が6人中3人になる時間帯があり、みんなの党はほとんどの時間が2人中1人の
出席でしたので、おそらく他の委員会等との兼ね合いで途中で退席せざるを得なかったり、出席できなかった委員がいたのだと思います。
もしそうであったとすれば、この日は憲法審査会の開催を見送るべきだったのではないでしょうか。
わずか2か月あまりの猛スピードで憲法の全条章の審議がひととおり終わった形になってしまいました。
記者も出入りすることが多いので人数が増減するのですが、少ないときでも12~13人はいたと思います。
ただ、前回は6台も入っていたテレビカメラは2台だけで、すぐに姿を消してしまいました。傍聴者は30人ほどで、今回は全員着席する
ことができ(途中から十数人で入ってきて間もなく出て行かれた国会見学と思われる高齢者のグループがあり、その方々は立ち見でした)
、百万人署名運動は4人で傍聴してきました。なお、この日、中山太郎氏は姿を見せませんでした。
「国民の憲法尊重義務」をめぐる論戦
第10章については、自民党が改憲草案で「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」という項目を付け加えた第99条
(自民党案では102条)をめぐって多くの発言があり、自民党以外の6会派は現行の条文を維持すべきだとの立場を明らかにしました。
自民党の主張は、「憲法制定権者である国民も憲法を尊重するのは当然のことだ」(保岡興治氏)とか、「国家としての目標の設定、
国民の行為規範を一定程度明記することも憲法の役割である」から「国民が憲法を尊重しようということを記載することは必要なことだ」
(船田元氏)というもので、憲法は国家権力を縛るためにあるという立憲主義の本質を知ってか知らずか、相変わらずの暴論が開陳されました
(あの維新の会でさえ「基本的には現行のままでよい」(伊東信久氏)と述べたのですから、ここで「暴論」という言葉を使っても言い過ぎで
はないと考えます)。
さらに船田元氏は、「これを書いたからといって、国民が新たな義務を負うということではない」とも述べましたが、これまでの審査会で
「新たな義務」を並べた改憲草案の内容をさんざん言い立ててきた同じ人物がこんな物言いをするとは、厚顔無恥もはなはだしいと思いました。
また、99条に関しては、安倍晋三首相が国会の場で憲法改正を訴えたり、多くの閣僚が改憲を目指す議連に所属して重要なポストに着いている
こと自体が公務員の憲法尊重擁護義務に違反していると指摘する笠井亮氏(共産)や辻元清美氏(民主)の発言もありました。
これに対して、土屋正忠氏(自民)などが99条は職務権限を行使する際に憲法を尊重せよという規定であり、改憲の要件を定めた96条がある以上、
政治家として意見を述べるのは何ら問題ないはずだと反論していましたが、どちらの意見に理があるのかは別として、そもそも憲法の何たるかを
十分に理解しているとは思えない首相以下の閣僚たちが本当の意味で憲法を尊重して職務に当たっているのかと問われれば、「否」と答えざるを
得ないのではないでしょうか。もしそうであるとすれば、土屋氏などの立論の前提自体が成立しないことになってしまうでしょう。
なぜ自民党は97条を削除しようとするのか
第10章についてはもう一つ、「基本的人権の本質」を規定した第97条をめぐる議論がありました。97条は「この憲法が日本国民に保障する基本的
人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことの
できない永久の権利として信託されたものである。」というもので、あまり注目されていませんが、自民党の改憲草案ではこれがまるごと削除さ
れているのです。
保岡興治氏(自民党)は、その理由を「第11条の後段(「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、
現在及び将来の国民に与へられる。」)と内容が重複している」からだと説明しましたが、一読して明らかなように日本国憲法が保障する基本的
人権が「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」で「過去幾多の試錬に堪えてきた」というくだりは重複などしていません。
したがって、自民党以外に97条の削除を主張した会派はなく、「最高法規」の章に97条が置かれていることの意義を積極的に評価する意見が
大勢を占めました。
よく考えれば、97条を堅持したままでは、自民党のもくろんでいる「第3章 国民の権利及び義務」の改憲草案の内容はことごとく憲法違反となって
改憲が不可能になるわけですから、どんなに根拠が薄弱であっても何とか屁理屈をひねり出して97条を削除しなければならないというのが、
自民党の本音なのではないでしょうか。
自民党の本質が集約された前文をめぐる議論
この日のもう一つのテーマ、前文については、民主党、共産党を除く会派が、それぞれニュアンスは異なるものの、見直しに積極的、
あるいは肯定的な見解を提示しました。
まず、保岡興治氏(自民)は、「とくに問題なのは『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようとした。』
という部分で、ユートピア的発想による自衛権の放棄にほかならない」と述べました。
これはまさしく想定内の発言でしたが、私が驚いたのは、氏が「憲法の三大原則のうち基本的人権の尊重について直接的な記述がないことは疑問
であると言わざるを得ない」と指摘したことです。「為にする」という言葉の意味をこれほど的確に示す発言には滅多にお目にかかれるものではありません。
また、伊東信久氏(維新)は「他国に自国の生存を委ねる趣旨を改め、国家の自立を目指す趣旨に基本骨格を改正すべきだ」、小池政就氏(みんな)
も「わが国が置かれた状況に対して理想主義的観点が強すぎるのではという印象が残る」と述べ、自民党と同様の認識を示しました。
一方、この3党とは別の立場から、大口善徳氏(公明)は「基本的人権の尊重を加えることは考えられる」、鈴木克昌氏(生活)は「国際平和のため
にわが国が積極的に貢献していくという観点を記すことを検討してもよい」と発言しました。
これらに対して、笠井亮氏(共産)は「前文から侵略戦争への反省と不戦の誓いを削除することは、戦後の出発点を自ら否定するだけでなく、アジア
や世界の中で日本の孤立を招き、国際社会の中で生きていく道を失うことになりかねない」と明確に見直し反対を表明。
三日月大造氏(民主)は「歴史、伝統、文化を盛り込むべきだという意見自体に反対するものではない」が、「それは国民全体が共有できるものなのか。
それらを盛り込んだ場合、特定の人々や集団の歴史観や価値観を押しつけることにならないか」と指摘し、「慎重な議論が必要ではないか」と述べていました。
さて、自民党の前文改憲論の論拠には、上記の国際関係の認識があまりにユートピア的で現実から乖離しているということのほかにも、わが国の国柄
(天皇を戴いてきた長い歴史、和を貴ぶ精神など)が表現されていないこと、翻訳調の悪文であることなどがあり、この日も多くの委員がそれらの点を
言い募っていました。
いつもながら驚くべき認識を連発したのがこの傍聴記ではおなじみの西川京子氏(自民)で、「戦勝国が敗戦国の憲法をつくるという行為は国際法上明らか
に違反している」、「日本人の精神性をだめにすることが占領国の最大目的であった」、「東京裁判以前に侵略戦争という概念はなく、侵略という定義も
学説ではしっかりしていない」などという珍説を開陳し、笠井亮氏(共産)から「ぜひその発言をアジア諸国に行って、あるいは国連の場でしていただきたい。どういう反響があるかをよく体験していただきたい」とたしなめられる始末でした。
※相変わらず勝手な主張をするトンデモナイ自民以下の論議です。
驚くべきことは平和を大切にすべき筈の女性議員がトンデモナイ戦争賛美の発言を繰り替えいている事です。
今回の西川京子や稲田朋美、片山さつき、議員ではないが櫻井よしこ等など・・戦時中の国防婦人会などは国の戦争遂行政策に従っていたが
(それも重大な犯罪行為)現代のこの優等生のエリート女性たちは戦争や差別の悲惨も知らず他人の悲しみも知らず差別・戦争を率先して煽っている。
戦争の悲惨さを繰り返さずべく9条条文に希望を持った当時の女性たちの思いをよそに現代の戦争万歳のこの女性議員たちは日本国憲法さえ蔑にし人殺し政策
を進める悪質極まりない行為ではないでしょうか。