僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

驚くべき藻類

2011-06-27 16:38:09 | 驚いたこと
山大の研究生だったOさんが千葉県の東大に転勤になった。

彼は藻類のエキスパートである。

藻類というと「昆布」や「若布」しか浮かんでこない無学な私は

「昆布と若布は親戚ですか? アオサはどうですか?」
とありえない質問をしたが、丁寧に答えてくれた。

「おっしゃるとおり、昆布と若布はかなり近いです。でもアオサは遠いですね。」


見た目のまんまであった。


彼は藻類といっても、電子顕微鏡とか使わないと見ることが出来ない、クロララクニオン藻類というそれはそれは小さな植物を研究しているのだ。


クロロラクニオンというのは簡単に言えば糸状仮足を持つ、アメーバ様の体制ながらクロロフィルを含む葉緑体を持ち、光合成を行う生物だそうだ。
なんだか鞭毛もあって動き回り、葉緑素を持つ「ミドリムシ」に似ているよね。

電子顕微鏡は一台何億もするらしく、そのぐらい高価だと採取した藻類の系統解析も簡単に出来ちゃうらしい。

新種の藻類もパラオなどで7種発見したそうだ。
論文をバンバン書いて発表すれば準教授、教授の道も遠くではなさそうだ。あと結婚も。


同じ微生物の藻類で、「ボトリオコッカス」というのを耳にしたことがあると思う。

これはすんばらしい生物で、光合成によって重油を作っちゃうのだ。
ただ培養に時間がかかり、油の回収や処理を含む生産コストが1ℓあたり800円程度かかり、1ℓあたり50円の重油よりかなり高コストだ。
「ボトリオコックス」は畑谷の大沼あたりの淡水に生息するらしい。

これと同じような生物に「オーランチオキトリウム」がいる。

主に、熱帯や亜熱帯地方のマングローブや汽水域を好む生物らしい。

これが重油に相当する炭化水素(スクアレン)を産生し、培養した後ペレットにして火力発電に使用できるそうである。

このオーランチオキトリウムを深さ1mの水槽で培養すると面積1ha(ヘクタール)あたり1万トンの炭化水素を作り出せる。2万haで日本の年間石油使用量を賄えるそうだ。夢のような生物だが、まだまだ研究段階らしい。


話を戻すが、Oさんの仕事はとても不安定である。収入が安定しないので、両親も反対したそうだ。
けれどOさんは初志貫徹し、フランスやノルウェーでも研究を重ね実績を重ねてきた。
大学を卒業してからは、親に頼らず奨学金と専門的なアルバイトをこなし5年で博士号を取得したそうだ。
今は大分収入も安定してきたそうだ。真面目で礼儀正しい彼のことだから準教授になるのも近いだろう。
パソコンで検索するとO教授と一発で出てくる日が待ち遠しい。

星守る犬

2011-06-27 11:44:48 | 映画


昨日、『星守る犬』を観た。
時々、涙が流れた。

西田敏行扮する「おとうさんは」、普通に魅力がある恰幅のいい男性である。

ただ、小泉純一郎の大改革において、リストラの嵐が吹き荒れていた。

このおとうさんも町工場の仕事を解雇されてしまう。

その頃からおとうさんは無気力になっていく。

義父の介護のことも、娘の非行にも関心を示さなくなった。

挙句の果て奥さんに離婚を宣言されてしまう。

このあと、東京から東北を経て、北海道に渡るのだが、彼と愛犬(ハッピー)の死出の旅だったように思う。
そこにあるのは、諦観と無力感。ただ従容とした厳かな態度を貫いた。

そして、おとうさんの根底には、温かみのある優しさがあった。

それがゆえに、観るものに悲惨さを与えない。

最後までほんわりとした雰囲気を与えつつ死んでいく。