浦和河童便り

埼玉・浦和のオヤジ(浦和河童)が「吹奏楽メインで、時々、オーケストラのコンサートに行ってみた」という話

全日本吹奏楽コンクール三年連続出場記念演奏会 第3回“もうひとつの全国大会”

2012-10-10 20:37:20 | 吹奏楽

全日本吹奏楽コンクールには3年連続全国大会に出場するとその次の年は1回だけコンクールに出場できないという規定があります。
俗に言う「3出(さんしゅつ)」制度というものです。
そして、コンクールに出られない「3出」団体が一同に会して演奏会を開きました。
それが、今回、私の訪れた「全日本吹奏楽コンクール三年連続出場記念演奏会 第3回“もうひとつの全国大会”」です。(3出団体で演奏会をするのも、もう3回目なんですね。ちなみに私は第1回のCDを持ってます。)
場所は、お馴染みの文京シビックホール。
いいホールです。
時は、2012年10月8日、月曜日。
すがすがしい体育の日の13:00、演奏会の開演です。

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まず、3出団体が5団体続けて演奏します。
出演順にご紹介します。

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●川越奏和奏友会吹奏楽団  (指揮)佐藤正人
 「法華経からの3つの啓示」より Ⅲ.平和の悦び [A.リード]
  Epitaphe 2011.3.11 (墓碑銘) [天野正道]
 「La suite excentrique」より 第1・2・4楽章 [天野正道]

バランスのとれたサウンド。
金管の音が温かみがあって、やわらかいなあ。
そして、サックスの皆さん、絶品です。
特に「La suite excentrique」は、コンクールの埼玉県大会、招待演奏でも聴かせて頂きましたが、今回は指揮者が違うせいか、別の表情をみせた演奏で非常に驚きました。(県大会の招待演奏では、作曲者の天野先生が指揮されており、もっと激しかった印象があります。)
どちらも甲乙つけ難い名演でしたが、これを表現できるこの団体に脱帽…。
川越奏和奏友会に死角はないようです。
こんな素晴らしい演奏をコンクールという緊張感の中で聴けないなんて…。
「3出」って何なんでしょう?

●越谷市立北中学校吹奏楽部  (指揮)田中秀和
 丘の上の古城 [堀田庸元]
 マーチ「春風」 [南 俊明]
 アルメニアン・ダンス・パートⅠ [A.リード]
 テキーラ [C.リオ/ ]

う~ん、これぞ吹奏楽部の音。
色気はないけど、正確でピュアなカンジ、素晴らしい!
特にマーチ「春風」は数年前の課題曲ですが、この曲だけ、1、2年生だけで演奏して頂きました。
小学生のように子供子供している部員も見受けられる中での堂々たる演奏でした。
アルメニアンダンスに至っては、その辺の高校生をはるかに凌駕しています。
ただ、ラテンの曲を高校生だったら、はじけて演奏しているだろうに恥ずかしそうに演奏してしているのが初々しくて良かった。
ちなみに1曲目の「丘の上の古城」の作曲者、堀田庸元氏が来場されていました。

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●愛知工業大学名電高等学校吹奏楽部  (指揮)伊藤宏樹
 祝典序曲 [D.ショスタコーヴィッチ/D.ハンスバーガー]
 元禄 [櫛田?之扶]
 オリンピック・センテニアル・セレブレーションズ [ジョン・ウィリアムズ/ジョン・モス]
 COSMOS(合唱曲) [詞・曲 ミマス]
 ディープ・パープル・メドレー [佐橋俊彦]

ショスタコーヴィッチの祝典序曲は私が若かりし頃、大いに流行った曲です。
曲冒頭のトランペットのファンファーレは華やかで素敵です。
しかし、名電の演奏では不発に終わってしまった…。
何でも昨晩は、秋田で山王中学とジョイントコンサートをやり、東京に着いたのは、夜中の2時だとのこと。
芸能人みたいで、そりゃ疲れますわな。
今年はスイスに演奏旅行にも、行かれたそうで大活躍です。
祝典序曲こそ、元気がなかったですが、演奏が進むにつれて「名電ワールド」を十分に堪能させて頂きました。
特に十八番の「ディープ・パープル・メドレー」では会場を大いに盛り上げてくれました。
(なお、名電高の演奏はプログラム上と少し順番や曲目が違ったりしていました。司会の方から変更の内容の紹介がありましたが、聞き書きですので上記の曲名に間違いがあるかもしれません。その場合は、ご容赦下さい。)

●横浜ブラスオルケスター  (指揮)近藤久敦
 吹奏楽のための「クロス・バイ・マーチ」 [三善 晃]
 アーデンの森のロザリンド [A.リード]
 キャンディード組曲 [L.バーンスタイン]
  Ⅰ.考えられる限り最善の世界
  Ⅱ.ウエストフェリエのコラールと戦いの場面
  Ⅲ.死刑執行(何て日だ)
  Ⅳ.着飾って、きらびやかに
  Ⅴ.草花や菜を育てよう(フィナーレ)

定期演奏会にも行かせて頂いたことがあり、その時のインパクトが強く、好印象を抱いている団体です。
しかし、最初から2曲目まで、なんだか軽く流している感じがして、アレッ?と思いました。
ところが、メインの「キャンディード組曲」に入るとその様相は一変しました。
横浜ブラスオルケスターの真骨頂ですね。
見事な演奏でした。

●松戸市立第四中学校  (指揮)須藤卓眞
 トッカータとフーガ ニ短調 BMW.565 [J.S.バッハ/森田一浩]
 15分の名声 ~アンディ・ウォーホルのための音楽~(委嘱作品) [清水大輔]
 スウィングしなけりゃ意味がない [D.エリントン/真島俊夫]
 あなたに ~吹奏楽と合唱のための~ [MONGOL800/樽屋雅徳]

いきなりの「トッカータとフーガ」。
少し、アンサンブルに乱れがあったのが残念でした。
2曲目は人気の作曲家、清水大輔氏への委嘱作品です。
(清水氏も会場にお見えになっておられました。)
フォルテ中心の難曲を中学生とは思えないテックニックで見事に表現していました。
また、ジャズの名曲も十分、“スウィング”してたし、1年生のダンスも本格的で見事でした!

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ここから、本年度に全国大会に出場を決めている2団体の演奏です。
本番さながらに課題曲と自由曲、続けての演奏です。
(会場のアナウンスもコンクール風の紹介という“演出”がありました。)
コンクール本番、1ヶ月を切った状態でのパフォーマンスが楽しみです。

 
■東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部  (指揮)畠田貴生
 課題曲Ⅲ 吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」 [足立 正]
 自由曲  フェスティヴァル・ヴァリエーション [C.T.スミス]

今年は、スミスの「フェスティヴァル・ヴァリエーション」ですか。
高輪台の明るいサウンドに合ったナイス選曲だと思います。
しかし、課題曲は意気込みがすご過ぎてか、細かいミスがあったりして空回りしてたのかなあ?
自由曲は気合い入りまくりです。
いい意味で鬼気迫る演奏でした。
去年は、(私が個人的に)コンクール自由曲に合わないと思う曲を演奏して、銀賞に終わりましたが、今年は金賞を獲れるよう応援しています。
頑張って下さい。
(これでも私は高輪台高校の定演や演奏会に3回行っているのですよ!)

■川口市・アンサンブルリベルテ  (指揮)福本信太郎
 課題曲Ⅴ 香り立つ刹那 [長生 淳]
 自由曲  パッサカリアとトッカータ [福島弘和]

この団体のことを私のような素人のオヤジがナンダカンダ言うのもオコガマシイ。
完璧です。
それにしても、他のバンドだったら、アンサンブルを合わせるのが精一杯であろう課題曲Ⅴのメロディを美しく歌っているのはスゴイ!

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大トリは、今年、ウィーン国際青少年音楽祭でグランプリを受賞した埼玉栄高校です。
(もちろん、3出で今年はコンクールに出場しません。)

●埼玉栄高等学校吹奏楽部  (指揮)大滝 実
 …そして、どこにも山の姿はない [J.シュワントナー]
 いとしのエリー [桑田佳祐/宍倉 晃]
 パガニーニ・ヴァリエーション [P.ウィルピー] 
 (アンコール)
 花は咲く [詞 岩井俊二 曲 菅野よう子]
 Believe [詞・曲 杉山竜一]

司会の方から、この曲を自由曲に選んだ1991年のコンクールで高校の部最高得点だった旨の紹介があった「…そして、どこにも山の姿はない」。
その時を彷彿とさせる名演でした。(実は私自身、CDでも聴いた事ないんですが…。)
埼玉栄はオペラなどのオーケストラ曲の編曲モノの印象が強いのですが、それを払拭する演奏に興奮した次第。
ブラヴォーです。
他の曲もとても洗練された素晴らしいパフォーマンスでした。
気持ちのこもった演奏に感動致しました。
(10月6日にさいたま市文化センターで行われた「秋演」にもお伺いしたかったのですが、仕事のため、どうしても行くことが出来ず残念です。)
アンコールでも大滝先生の歌声が聴けてラッキーでした。

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そして、開演して4時間以上、大興奮の中、「全日本吹奏楽コンクール三年連続出場記念演奏会 第3回“もうひとつの全国大会”」は終了したのです。
いやあ、楽しいひと時でしたが、いささか疲れました。

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最後に本日のコンサートの実行委員会の代表として、埼玉栄高等学校の大滝実先生が挨拶されました。
学生にとってコンクールは目標であり、それに出られないというのは特にその年の3年生が不憫でならない。
全日本吹奏楽連盟には何度も3出制度の廃止をお願いしているが、聞き入れてもらえない。
これからも3出団体でコンサートを続けていきたい…。
大まかな内容はこのようなものでした。

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以前、私のブログに寄せられたコメントに「3出制度」の事を「悪しき平等主義」と表現されている方がいました。
まさにその通りです。
多くの団体に全国大会の機会を与えるというのは、素晴らしい考え方のようですが間違いだと思います。
およそコンクールの名を冠しているのならば、競争の世界です。
その競技会に何故、優れたところが出られないのでしょうか?
理由がわからないし、理解ができない。
甲子園に3回連続出場したから、次は出られませんよ、何て事になったら大変なバッシングにあうと思います。
全国大会に出たければ、常連校以上に指導者も学生も努力すればいい。
努力が足りないから、全国大会に進めないのだと思います。
“甘やかしすぎ”制度と言わざるを得ないでしょう。

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ですが、3出制度のあるお陰でこのような素晴らしい演奏会が聴けるのも事実なので複雑な気持ちです。
いずれにせよ、出場団体の今後の活躍を心より祈っております。


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