2017年4月29日、土曜日です。
ゴールデンウィークの初日とあって、大宮の街にも人が溢れています。
私は雑踏の中を大宮ソニックシティへと向かいました。
春日部共栄の定期演奏会が目的です。
思うに春日部共栄中学高等学校吹奏楽部の定期演奏会に初めて行かせて頂いたのは、第26回ですね。
それから、27回、28回、29回と通い、昨年は残念ながら都合で行けませんでしたが、今回の31回を迎え感慨深いものがあります。(昨年は、定期演奏会に行けなかった代わりにオータムコンサートを聴かせて頂きました…。)
特に今回は2つの意味で興味がありました。
まずは、東海大学付属札幌高校吹奏楽部を指導されている井田重芳先生がゲストであること。(井田先生って北海道吹奏楽連盟の理事長なんですね。)
そして、人気の作曲家、酒井格先生の新作委嘱作品が発表されるのも魅力です。
この演奏会の開催を実に楽しみにしていた“浦和のオヤジ”でした。
会場のソニックシティに到着。
開演の30分前でしたが、既に長蛇の列です。
あれ、東海大学付属高輪台高校の畠田貴生先生がホールの入口付近で走り回っていますね。
それに高輪台の生徒の皆さんも大勢来ているみたいです。
系列の高校だから、井田先生の“勇姿”を見にきたのでしょうか?
そんな光景を横目で見ながら、“浦和のオヤジ”は、ホールの中へと入るべく入口へと向かったのですが、入場を待つ人の列がゆっくりとした動きなので、なかなか前へと進まない…?
そのせいか、開演が15分程、遅れました…。
さあ、開演の時間です。
織戸先生、期待しています!!
[演奏]春日部共栄中学高等学校吹奏楽部
[客演指揮]井田 重芳(全日本吹奏楽連盟常任理事、北海道吹奏楽連盟理事長、東海大学付属札幌高等学校吹奏楽部顧問)
[指揮]織戸 祥子
甲斐 早矢花
前奏曲「アプローズ」/真島 俊夫
A Prelude to Applause/Toshio Mashima
148の瞳(世界初演)/酒井 格
One hundred forty eight Eyes/Itaru Sakai
2017年度全日本吹奏楽コンクール課題曲より
メタモルフォーゼ~吹奏楽のために~/川合 清裕
Metamorphosis for Wind Orchestra/Kiyohiro Kawai
アリランと赤とんぼ/朝鮮民謡・山田耕筰:高 昌帥 編曲
Ariran and Akatonbo/Korean Folk Song, Kosaku Yamada : Arr. Chang Su Koh
バレエ音楽「三角帽子」/M.ファリャ:保科 洋 編曲
El Sombrero de Tres Picos/Arr. Hiroshi Hoshina
終幕の踊り
Danza Final(Jota)
― 休憩 ―
KA-GU-RA/福田 洋介
KA-GU-RA for band/Yosuke Fukuda
飛行の幻想/R.シェルドン
Visions of Flight/Robert Sheldon
《井田重芳先生を迎えて》
復興への序曲「夢の明日へ」/岩井 直溥
Dreams of Tomorrow Overture for Rebuilding/Naohiro Iwai
トランペット吹きの子守歌/L.アンダーソン:岩井 直溥 編曲
A Trumpeter’s Lullaby/Leroy Anderson : Arr. Naohiro Iwai
フォー・ブラザース/J.ジュフリー:岩井 直溥 編曲
Four Brothers/Jimmy Giuffre : Arr. Naohiro Iwai
青春の輝き/R.カーペンター:星出 尚志 編曲
I Need to be in Love/Richard Carpenter : Arr. Takashi Hoshide
歌謡曲メドレー
J-POP Medley
五つの沖縄民謡による組曲/真島 俊夫
Five Okinawan Songs for Band/Toshio Mashima
第2楽章 芭蕉布
Ⅱ Bashow-Fu(Bashow Cloth)
第3楽章 安里屋ゆんた~谷茶前
Ⅲ Asadoya-Yunta ~Tanchame
[司会]弦本 縁加
最初の曲は、真島俊夫先生の作品。(それにしても、真島先生が昨年亡くなられたことは、私にとっていまだにショックです。)
この曲(前奏曲「アプローズ」)は、真島先生の母校である神奈川大学吹奏楽部が1984年から1988年に達成した全日本吹奏楽コンクール5年連続金賞受賞の“お祝い”に作曲されたものなのだそうです。
共栄の演奏も曲に花を添えていましたね。
まずは、各ソロの皆さんが素晴らしい。
曲のはじめの方こそ、いくらか“不明瞭感”がありましたが、徐々に修正されてきました。
真島先生特有の“華やかさ”と“重量感”を巧みに表現したステキな演奏でした。
“口開け”にふさわしい曲でしたね。
続いては、私も楽しみにしている酒井格先生の委嘱作品です。(当然、この日が“世界初演”ですよね!)
この曲(「148の瞳」)は、顧問の織戸祥子先生の依頼で作曲されたそうで、小説の『「二十四の瞳」をヒントに、共栄高校の生徒たちと日々奮闘する織戸先生の姿を』、「二十四の瞳」の主人公である『大石先生の姿と重ね合わせて書』いたそうです。
「148」には意味があるのだそうですが、プログラムの「曲目解説」には、明かされていませんでした…。(演奏後に酒井先生のインタビューの中でも“説明”されていなかったような…。もしかしたら、私が聞き漏らしている可能性もありますが…。)
曲は、サックスのアンサンブルから始まり、他の木管にも受け継がれていく…。
どことなく、メルヘンチックなところもあり、繊細な酒井先生らしい楽曲です。
素晴らしい曲でしたし、素晴らしい演奏でした!
この曲が共栄のコンクール自由曲になるのでしょうか?
そうだとすれば、共栄の繊細さを知らしめる絶好の機会となりますね!
ちなみに酒井先生は会場に来ておられました。
続いては、今年の課題曲Ⅴの演奏です。
私は演奏者ではありませんので、よくわからないのですが、何でも“難曲”なのだそうです。
それにしても、今年だけの話ではないのですが、「課題曲Ⅴ」って共栄に合ってますよね。
毎年の「課題曲Ⅴ」は、作曲者は違えども現代曲なところは共通しており、より正確なアンサンブルが要求されると思います。
そこに共栄の技術力はピッタリ合っているし、何よりもサウンドが実にマッチしている。
神奈川大学に似た若干、硬質なサウンドは、吹奏楽オリジナル曲を演奏するのに最適です!
とても、好感の持てる演奏で“仕上がって”いました!(そう言えば、プログラムに書いてありましたが、神大も指導されている中村俊哉先生が音楽監督なんですね。以前のブログにも書いたと思うのですが、神奈川大学とサウンドが近く感じる理由が“ここ”にあるのですね…、きっと。)
また、作曲者の川合清裕先生が来場されていました。
次は、私も大好きな作曲家、高昌帥先生の「アリランと赤とんぼ」です。
共栄と高先生と言えば、まず思い出されるのが、「アッフェローチェ」ですかね。
いい曲です。(個人的に一番好きな曲は、「陽が昇るとき」ですが。)
この曲は、在日コリアンである高先生が大阪府内の朝鮮学校の吹奏楽部が大阪府吹奏楽連盟に加盟して20年を記念して書かれた作品なのだそうです。
『親善の意味も兼ねて、朝鮮半島の代表的な民謡「アリラン」と山田耕筰作曲の童謡「赤とんぼ」を使って吹奏楽曲に編曲できないかとの提案を受けて書かれた』とのこと。
吹奏楽で「アリラン」と言えば、チャンスの「朝鮮民謡の主題による変奏曲」がありますが、高先生の作品は、これとは少し趣きを異にし、「アリラン」と「赤とんぼ」が上手く組み合わされたしっとりとした情緒あふれる曲でした。
共栄の演奏は、2年生中心のパフォーマンスでした。
途中、多少、アンサンブルにズレが生じるような瞬間もありましたが、高先生の描き出す“イメージ”をうまく捉えた“好演”だと思いました。
高先生も会場にお見えになっておられました。
さあ、前半、最後の曲は趣きを変えて、ファリャの「三角帽子」ですね。
余談になりますが、「三角帽子」って最近、流行っているのでしょうか?
だって、去年の全国大会、高校の部では、市立習志野と伊奈学園がやってましたよね。
偶然でしょうか?
余計な事は置いといて、演奏の方に話題を移しましょう。
今回は、保科洋先生の編曲のようです。
共栄くらいの実力校になるとなかなか味のある演奏をしますね。
“華麗”な雰囲気がよく出ていて、曲の本質をついていると感じました。
吹奏楽オリジナル曲の印象が強い共栄ですが、オーケストラ曲になると“違う顔”も見せてくれたのは、実に興味深く思いました。
ただ、大好きな共栄だから敢えて言わせてもらいますが、少し、いろんな意味でメリハリが欲しかったかも。
派手で華やかな曲だからこそ、力任せに演奏すると、単調な感じが強くなるような。
そんなふうに少しだけ思いました…。
休憩です。
前半だけでお腹いっぱいなくらい楽しめました。
後半にも期待できますね。
何せ、井田先生の登場もありますから!
プログラムに載ってなかったのですが、後半、最初の曲は今年3月に尼崎市で行われた第40回アンサンブルコンテスト全国大会に出場したサックスパートの皆さんです。
曲は、アラン・ベルノーの「サクソフォン四重奏曲」より第四楽章。
かなりの難曲で高校生では初の全国大会での演奏だったとのことです。
素晴らしい演奏でした!ブラヴォー!
“浦和のオヤジ”は多少、ウルッってきちゃいましたね…。
続いては、春日部共栄中学の皆さんの演奏です。(指揮は甲斐早矢花先生にかわります。)
「さくらのうた」「風之舞」などで有名な福田洋介の作品(KA-GU-RA)。(福田先生と言えば、昨年12月にウェスタ川越で開催された東邦音大の演奏会で指揮、指導されていらっしゃいましたね。私も行かせて頂きました。とても、良い演奏会でした。)
『この曲は、日本の民族音楽「神楽舞」の持つ神秘的かつ土俗的な世界観に触発され、作曲され』たそうです。
演奏の人数は18名?でしょうか。
まだ、“若い”演奏ではありましたが、芯のしっかり通ったパフォーマンスを堪能させて頂きました。
また、前半の方で和太鼓を演奏していた女生徒のバチが折れて後ろに飛んで行きましたが、そこで慌てず何事もなかったかのように演奏していたのには感服。
そして、今年も演奏しますね、「飛行の幻想」。
毎年、定期演奏会で高校の新入生だけで演奏され、いわば“デビュー曲”となっている楽曲です。(私もこの曲を聴くのは5回目なんですね…。)
確かに細かいミスはありました。
でも、1年生にして、このサウンド。
共栄は、しばらく安泰です!
そして、ここから、井田重芳先生の登場となるのですが、舞台の準備に時間がかかるとのことで来場されている作曲家の先生方のインタビューです。
まずは、酒井先生から。
いろんなお話をして下さったのですが、委嘱作品について、顧問の織戸先生もサックスが専門だし、共栄のサックスは良いプレーヤーが多いので、その点にこだわって作曲されたとのことでした。
続いて、高先生と課題曲Ⅴの作曲者である川合先生が揃って登場。
何とお二人は師弟関係にあるそうです。(もちろん、高先生が“師”です。)
その“弟子入り”の時のエピソードが面白かった。
何でも弟子にして欲しくて、川合先生が演奏会の楽屋に直接、押しかけたのだとか。
まるで、「落語家の弟子入りみたいだ」と高先生。
そんな楽しいお話に会場も大いに和みました…。
また、河合先生は、“恐ろしい”変拍子の多い課題曲Ⅴについて、課題を持って演奏して欲しいから、“難曲”にした、と。
さあ、ステージの準備ができたようです。
いよいよ、井田先生の登場です。
井田先生がステージに上がると気のせいか空気がグッと締まる感じがしました。
曲は、上記のとおりです。(なお、「歌謡曲メドレー」は、“港町十三番地”“涙そうそう”“笑点”“全力少年”“花は咲く”でした。聴き書きですので間違っていたら、スミマセン。)
それにしても井田先生の弁の立つこと!
初めてお話をお伺いしましたが、ある意味、驚きでした。
写真とかで拝見するイメージから少し怖い感じの方(失礼!)なのかなと思っていましたら、さにあらず。
楽しいお話の連続に会場は爆笑の連続でした!
特に全体的にクソ真面目(これまた失礼!)な印象のある共栄の生徒とのある意味、チグハグ?な掛け合いが可笑しかった!
井田先生の登場でいつもの定期演奏会とは少しだけ違った雰囲気になった部分もありましたが、たまには、“これ”もありかなと思った次第。
実に楽しいステージでした!
名残惜しいのですが、いよいよ最後の曲です。
「五つの沖縄民謡による組曲」。
真島先生の作品です。
何よりも真島先生の作品でコンサートが始まり、真島先生の曲でコンサートが終わるなんて何てニクイ演出でしょう!
演奏もトリの曲にふさわしく素晴らしかった!
沖縄の独特の雰囲気を見事に表現して聴きやすかった。
そして、聴いているうちにこの曲をトリにもってきた意味がわかったような気がしました…。
花束贈呈のあとは、アンコールです。
曲は上記の通りです。(定番の“フーテナニー”を聴くと時の流れを感じます…。)
思った以上に楽しい演奏会でした。
そして、共栄らしさを存分に発揮した演奏会でした。
以前に何度も申し上げているとおり、私は春日部共栄の音楽に対峙する“意識”が好きです。
その“ひたむきさ”“真面目さ”“新しい楽曲に挑戦していく姿勢”が大好きです。
そして、これからも「ラッキードラゴン」のような名曲を世に送り出して下さい。
また、春日部共栄吹奏楽部の“伝統”を守り抜いて頂きたい。一ファンとして、切に願うばかりです。
今年もコンクール頑張って下さい!
織戸先生に変わられてから、銅、銀と成績が上がっていますから、今年の全国大会は“あれ”しかないですね!
期待しています。
最後にこのような機会を与えて下さった2年生の宮﨑麻帆さんに感謝致します。
次はオータムコンサートに行かせて頂きますね!
[追記]
ここ数ヶ月、心身共に疲れ果てていたため、ブログの更新が出来ませんでした。
これからは、“復活”したいと思いますので、良かったら、これからも「浦和河童便り」をお読み頂ければ幸いです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます