2015年6月12日、金曜日。
私の知っているだけで、三つの吹奏楽団のコンサートがありました。
東京芸術劇場で行なわれた「東京佼成ウインドオーケストラ」。
大田アプリコホールで行なわれた「タッド・ウインドシンフォニー」。
そして、みなとみらいホールで行なわれた「神奈川大学吹奏楽部」。
もちろん、全部の団体を聴きたかったのですが、物理的に不可能です。
やっぱり、日本のトッププロの吹奏楽団ですから、TKWOは捨てがたい。
また、タッドの素晴らしい演奏はもちろん、その選曲はダントツに良い。
でも、神奈川大学の“サマーコンサート”に行くことにしました…。
なぜか?
ひとつは、2012年のサマーコンサートから、年2回の演奏会に通い続けているからです。
ずっと行ってると行けなかった時に非常に後悔するような気がして…。
そして、私の仕事場(都内)からイチバン遠い会場である“横浜・みなとみらいホール”へと向かったのでした…。
しばらく振りの“みなとみらいホール”です。
きっと今年、初めてですね。
もしかすると、去年の神奈川大学のサマーコンサート以来かも知れません。
自分の指定席に座ってみます。
正面から見て舞台後方の席、いわゆる“P席”に同じ制服を着た高校生の皆さんがお行儀よく座っています。
多分、演奏会後半あたりに何かのパフォーマンスに参加するのでしょう。(合唱とか。)
それにしても、このホールの落ち着いた雰囲気は好きです、個人的に。
入口で頂いたプログラムを開いてみます…。
サマコンでは、その年の吹奏楽コンクール課題曲を演奏するのが恒例になっていますので、
それは良いと思うのですが…。(私はコンクールに出ませんので、課題曲にそこまで強い関心はないのです…。)
うーん、個人的に言えば、もう少し攻めてほしかったかなぁ。
オーケストラのアレンジ曲は、大昔、聴いたことのあるような曲ばかりだし、「アルメニアンダンス」は、ここのところ頻繁に聴いているような。
メインの「三つのジャポニズム」は大好きな曲なのだけれど…、チョット新鮮味に欠けるような気がして…。
「こりゃ、“タッド”に行った方が面白かったかな。」と言う思いが一瞬、頭をよぎったかも…。
いろんな事を考えているうちに、会場に銅鑼(どら)の音が…。
みなとみらいホール独特の開演を知らせる合図です。
さあ、演奏に集中しましょう!
[演奏]神奈川大学吹奏楽部
[指揮]小澤 俊朗(音楽監督)
マーチ「春の道を歩こう」(課題曲Ⅱ)/佐藤 邦宏
Walk down the Spring Path March / Kunihiro Sato
「詩人と農夫」序曲/フランツ・フォン・スッペ
“Poet and Peasant” Overture / Franz von Suppe
交響詩「フィンランディア」/ジャン・シベリウス
Tone poem “Finlandia” / Jean Sibelius
アルメニアン ダンス パートⅠ/アルフレッド・リード
Armenian Dances Part1 / Alfred Reed
【休憩】
ウインドジャマー/真島 俊夫
Windjammer / Toshio Mashima
秘儀Ⅲ -旋回舞踊のためのヘテロフォニー(課題曲Ⅲ)/西村 朗
Heterophony for Whirl Dance / Akira Nishimura
マーチ「プロヴァンスの風」(課題曲Ⅳ)/田坂 直樹
March “Wind of Provence” / Naoki Tasaka
暁闇の宴(課題曲Ⅴ)/朴 守賢
The Scintillating Dawn / Soo-Hyun Park
三つのジャポニズム/真島 俊夫
Les trios notes du Japon / Toshio Mashima
Ⅰ鶴が舞う La danse des grues
Ⅱ雪の川 La rivière enneigée
Ⅲ祭り La fête du feu
[司会]鴫原 美香
最初の曲は、今年の課題曲Ⅱです。(プログラムには、“演奏曲目”として掲載されていませんでした。そのかわり、ホワイエに上記、看板がありました(笑))
ある意味、素晴らしい演奏でした。
サウンドに曲にあった“統一性”があって軽やか。
“音楽”に流れがあって、実にライトな感覚で観客に訴えかけてくる…。
実に見事です。
確実に“コンクールで勝てる”演奏ですね。
“見本”のような演奏に会場の中高生の皆さんは大いに参考になったことでしょう。
続いては、「詩人と農夫」。(私、昔にこの曲を演奏したことがあるような…、「軽騎兵」の方だったろうか?記憶が曖昧…。)
19世紀の“オペレッタ”の世界ですね。
メロディラインを実に美しく奏でていると同時に、サウンドが厚いので格調高くも聴こえる。
それでいて、オペレッタらしい軽快さや諧謔味を持ち合わせている。
とても、聴きやすい演奏だったと思います。
演奏は別にして、個人的に私の中では、何故今日の演奏会でこの曲なんだ、という思いも少なからず、ありましたが…。
次は「フィランディア」ですね。
この曲も私としては“違和感”のある選曲だったような。
7月にヨーロッパ遠征で「ウィーン国際青少年音楽祭」に参加されるようですから、それも見据えたことなのかと推察いたします。
冒頭の金管低音部、もっと迫力があっても良いのでは…。
でも、個人的に不満があったのは、そこだけ。
そのあとは、“精密”といっても良いくらいのアンサンブルが続きます。
特に音の処理の仕方に感嘆致します。
長いロングトーンの終りやリズムの刻みに柔らかく音をまとめるので、途轍もなくキレイに聴こえる。
とても良かったです。
ただ、しいて言うならば、あの有名なメロディ、少しだけクサく演奏してほしかった。(独立運動に関係する民族主義的なある意味ドロドロした“音楽”なのだから、と個人的に思います。)
神奈川大学は、“美しすぎる”のです。
さあ、前半最後の曲は「アルメニアン ダンス パートⅠ」。
この曲、今年に入って、何回聴いたことでしょう。
「パートⅡ」も含めれば、相当数の演奏を聴いているはずです。
いかに“リード没後10年”というメモリアルイヤーと言えども、個人的には、少し時間を置いて聴きたいなという思いが強かった。
でも、やっぱり、神奈川大学吹奏楽部は侮れませんね。
きちんとタテヨコ揃っていて、ソロパートも申し分ない。
もともと神大は聴く側からすれば、欠点を探しづらい演奏をするバンドという印象が強いですが、それと同時にアルメニアの雰囲気、民族性を表現しているという“付加価値”さえ与えてくれる。(アルメニアに行ったことがないので、“この付加価値”は、私の“推測”や“イメージ”にすぎませんが。)
ふだん、鼻歌で歌っているメロディが豪華なフル・オーケストラの編曲になったような、そんな気分にさせてくれる演奏でした。
さて、15分の休憩のあと、後半が始まりました。
最初は、神奈川大学吹奏楽部OBでもある真島俊夫先生の作品、「ウインドジャマー」。
「ウインドジャマー -Windjammer-」とは“帆船”のことで、具体的には横浜港に展示されている「日本丸」をイメージしているそうです。
この曲は、横浜市立桜丘高等学校吹奏楽部の創部50周年記念作品として作られました。
解説を見ますと『理想に燃えて飛び立とうとする若人の気持ち』を出港しようとする『Windjammer(ウインドジャマー)になぞらえて』書かれたそうです。
実は、この曲、聴かせて頂くのは2度目なんですね。
今年の3月8日に文京シビックホールで行なわれた「21世紀の吹奏楽 第18回“響宴”」で同じ神奈川大学吹奏楽部の演奏で堪能させて頂きました。
そして、この日の演奏も素晴らしいものでした!
真島先生の作品らしく、明るくさわやかな曲調は、まるで“みなとみらいホール”を飛び出して横浜港にでも佇んでいるような心持ちにさせてくれました…。
特に金管楽器のやわらかなサウンドが心地よかった。
続いて、今年の課題曲を3曲。
しかも、簡単ながら、小澤先生の解説付きです。(長年、吹奏楽の“現場”にいらっしゃる小澤先生だけあって、その話は、視点の鋭さに感心する事しきり。)
まずは、課題曲Ⅲから。
結論から言いますと、すごい演奏でしたし、個人的に感動すら覚えました…。
ブラヴォーでした!
この曲の持つ、“神秘性”“土俗性”“宗教性”をうまく利用した神大の演奏は、“独特の空間”を醸し出していたように思います。
勝手に解釈するにそれこそが、作曲者の西村朗先生の意図するところではないのでしょうか?
私の偏見にまみれた感想ですが、この日、ナンバーワンの演奏でした!
このところ申し上げているのですが、私は、課題曲Ⅲのファンなんです。
だから、言う訳ではないのですが、神大の課題曲Ⅲを聴いてみたいなぁ、コンクールで。(おそらく、課題曲Ⅴをやるのでしょうけど。)
次は、課題曲Ⅳ。
曲名に入っている「プロヴァンス」とはフランス南部地方の名前ですね。
地図で見てみると北側にはアルプスを背負って、イタリアに隣接しているように見えます。
でもね、この曲を聴くと私がイメージする闘牛場の音楽みたいなメロディに溢れていて、“スペイン臭”がプンプンするんです…。
「スペインも近いから、こんな感じのイメージなのか。」とずっと思っておりました。
でも、小澤先生の「フランスよりスペイン的な感じ」「曲名を“スペインの風”に変えた方がいいかも」という“解説”に多少、溜飲が下がった次第。
他にも小澤先生がこの曲は「非常に面白い作りをしている」と言っておられましたが、悲しいかな“素人のオヤジ”には理解の範疇を越えていました…。
そうそう、神大の演奏の方ですね。
この前に課題曲Ⅲを聴いたせいか、最初は少し、軽快さに欠ける気がしましたが、時間を追うごとにその思いは、私の心の中から消えて行きました…。
華やかな明るい演奏でした。
特にトランペットのファンファーレ的なところ、シビレました。
課題曲の最後は、Ⅴです。
神大って、毎年、Ⅴの課題曲をやらせたら、敵なしです。
本当にウマい!
ただ単純な“音の羅列”という訳ではなく、絵画のようなイメージを具現化した世界を作ってしまうように思います。
また、小澤先生の「“雅楽”のように聴こえる部分がある」との“解説”には非常に納得し、共感いたしました。
さて、大トリは、「三つのジャポニズム」。
神大の皆さんが大先輩の名曲をどう“料理”してくれるのでしょう。
“やりなれた感じ”のする演奏でした。
ただ、それは非常に良い意味で、です。
やっぱり、OBの作曲した曲だけあって、“十八番(おはこ)”と言っても過言ではないくらい「堂に入った」演奏でした。
特に「雪の川」は、しっとりとして風情があって、日本人の心を描いているように思えました。
“もう何も言う事はない”と感じました…、本当に。
これは、蛇足ながら、「鶴が舞う」のところで打楽器パートが“鶴の羽音”を表現するのに団扇だか扇子だかをパタパタやるのは知っていたのですが、今回の演奏会で木管楽器の皆さんもタンポを打楽器パートに合わせてパタパタ動かしていたのに気付きました。(もちろん、息を吹き込まない状態で。)
これって、楽譜に書いてあるのでしょうか?
打楽器の扇子どうしをはたく音と合わさって、とても効果的に羽音を表現出来ていると思いました。(何度も聴いている曲なのに気付くのが遅すぎましたかね。演奏したこともないし、楽譜を見たこともないので…、スミマセン。なお、書いてる内容が間違っていたら、ご容赦下さい。)
アンコールは3曲、上記のとおりです。
最初の「花は咲く」は、東北演奏旅行でも演奏されたと聞きました。
神大の素晴らしい演奏に被災地の皆さんも、どんなに心癒されたことでしょう。(この日の演奏では、予想通り、“P席”の生徒さんたちがキレイな歌声を披露して下さいました。)
それと、神奈川大学吹奏楽部の演奏会でアンコール曲の定番となっていた真島先生編曲の“ひばりメドレー”が演奏されなかったのが、少し残念でしたが。
どちらかと言うと、見た目は“大人しい”印象のある神奈川大学吹奏楽部が演奏に入ると見事に“豹変”します。
そのギャップがたまらなく好きです、私。
そして、今回のサマーコンサートも、とても素晴らしいものでした。
中でもトランペットパートの素晴らしさは特筆すべきものがあると思いました。
これからも、年2回のメインの演奏会、“皆勤賞”で頑張らせて頂きます!!
それにしても今年の神大のコンクール自由曲って何なのでしょう…?
今年の神奈川大学吹奏楽部の 自由曲は まだ 決まってないみたいですよ~
何に決まるのか 楽しみですね (^^)
コメントありがとうございます。
そうですか、神大の自由曲は、決まってないんですか。
とにかく、“意欲的な作品”にチャレンジして頂けると非常にうれしいのですが…。